第二条 旗
ドクッ 「ア“ガァ、痛ってェ ああァ」
「お、やっと戻ってきたっすか。よかったっす。」
やはり予想通り生きかえったようだ。ヘルの前には今まで通りの地獄が広がっている。一度死んだ程度では許してくれないようだ。
<大分落ち着いたな。俺は…また死んだのか。でも、前回死んだ時はすげーダサかったからな。見られてなくてよかったかもな……>
「まあ前回の死に方はかなりダサかったすけど、次は頑張てくださいっす。」
「!?」
<見られてた〜恥ずかし!>
どうやって見ていたのか、死に方まで把握しているようだった。
<確か前回死んだ時、鬼が行き来する(と仮定する)通路みたいなのを見つけたんだったな。でも通路に行くための階段や道は見つかんなかったから他の道から行けないか探ってみるか。>
「とりあえず前回の崖で見つけた左の道から行ってみようと思うよ。」
「そうすか、頑張ってくださいっす!」ヘルはそう言いスタート地点の方へスタスタと歩いて行った。……ダジャレじゃないんだからね!
<前回は変な奴に絡まれたせいで見れなかったけど、人間じゃない奴もいるんだな。>
そこには人間の他にも、耳の長いエルフや肌が青色に染まった魚人、猫の様な耳と尻尾のついた獣人など、前世でよくRPGで見た亜人達がいた。
<ここって俺が元居た世界だけじゃなくいろんな世界から繋がっているってことか?獣人と人間だと獣人の方が強そうだけど試練の内容は一緒なのか。何が違うんだ?>
そんなことを考えながら進んでいると、あっという間にスタート地点まで着いたようだ。
<ここからだな!絶対ぇクリアしてやるぞ!>
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〜数分後〜
さっきまでの威勢はどこへ行ったのやら、ヘルは鬼達に怯えながら岩に隠れ、こっそりと進んでいた。
<バレずに進めれば、1番いいんだけどな> コツッ
しかし、どんなに慎重に進もうとも地面が平らかではない地獄では音が鳴ってしまう。ドゴォ ー
案の定見つかってしまったようだ。前回同様3〜4体の鬼が血眼になって追いかけてくる。
「うわっ!バレた!!!」
ヘルは弾かれたように駆け出した。一時はピンチになっものの体の大きい鬼では入り組んだ地形を突破するのはやはり困難なようで案外簡単に逃げ切れる。
「ふぅ、まいたか。」
5〜6分走り続けて前回死んだ崖の上に着いた。
<やっぱり、高いな〜>
少し見渡したもののやはり通路や階段は無いようだ。あまり長居していると危険なので、ヘルはゆっくりと左側にある道へと向かった。向かっている途中、ヘルは道がかなり大きい洞窟へ繋がっていることに気づいた。しかし他の道も周りに無いので真っ直ぐ洞窟の方へ歩いて行った。
コツッ コツッ
あれから数分間洞窟を進み続けていった。ひんやりとした空気が気持ちよく、爽快な気分で歩く。しかし、こんな感情もすぐに打ち砕かれた。
「うわっ、まじかよ!」
何と3つに道が分かれていたのだ。
<正解は一つなのか?間違えたら……どうなるんだ!?>
汗が止まらなくなり体がわずかに震える、死の苦しみを2度経験しているからこその感情だろう。
<落ち着け!!こんなんで怖がってるんじゃ、生き返るなんて夢のまた夢だ!生きてる内にやっておきたかったこと、まだ沢山あるんだ。絶対に生き返ってやるぞ!!> ブオー
その瞬間ほのかに暖かい風がヘルの頬をよぎった。
<今の風!右の道からか。でも、なんで風?風があるってことは奥に大きい空間があるのか、だとしたら、少し暖かかったのは…外!?もしくは炎のトラップが奥にあるってことか、でもそうなると風の説明がつきづらい。炎のトラップってだけなら、わざわざ大きい空間を用意する必要がないもんな。とりあえず…これ以上悩んでも仕方ないし可能性の高い右の道に進むとするか。
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コツッ コツッ あれから、さらに歩き続ける。すると、奥から光が差し込んだ。
「お、光だ!」
<あってたんだな、よかった。この先に何があるかだな、出てすぐ鬼!!みたいなのじゃ無いといいけど。>
パキッ
<ん、なんか踏んだか?>
どうやら、ずいぶん前にここで火を起こしていたらしく、白くなった枯れ木や小枝が落ちていることがわかる。
<前にここに誰か来たんだろうな。あれっ、なんか落ちてるぞ!>
暗くてよく見えないものの確かに何かが落ちていることがわかる。どうやら紙のようだ。これも先人が置いていった物なのだろう。
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弐、参、肆と増さる時 壱、弐、参となる場所
見えるに旗の対角線 旗と旗の間、鍵はある
ご武運を、ノアより
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と書かれている
<この紙随分と前に書かれたんだな。紙も萎れてるし、字体も古いし、紙が少し黄色くなってーーー> ブォー
<おっと!そろそろ行かないとな。>
ヘルは脆くすぐに壊れてしまいそうなほどに繊細な紙を慎重にポケットに入れて外へ歩き出した。コツッ コツッ
洞窟から出ると少し広い足場がありその中心には旗が置いてあった。
「うわっ 眩っぶし!」
思わず口に出てしまう。
<これで第一の試練クリアなのか!? >
少し疑問に思ったものの考えているうちに鬼が来てしまうかもしれないと考えヘルは旗の方へ向かう。
<この旗を取れば…クリア!?>
何だかあっけなかったなと思いながらヘルは旗の方へ手を伸ばした。
「これで勝ちだァーーー」ピロンッ
(((ハズレ)))
「ファッ 何じゃこりゃァ」ブォーン
「警報!警報!
侵入者を殺せェ!」
地獄に鳴り響く轟音、それと同時に鬼達の迫る足音が聞こえる。
「ヤバい!逃げないと!」
急いで逃げようとしたヘルだったが元いた道には鋭い槍を持った強そうな鬼が三体並んでいた。たった一瞬、怯んだ合間に10体ほどの鬼が現れ、ヘルはなす術もなくは包囲されてしまう。
「殺せぇ!」
と1人の鬼が言ったのを合図に10体ほどの鬼達がヘル目掛けて飛びかかってきた。
「や、ヤメロォー!!!」グサッ