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出会った番(つがい)は同性でした  作者:
第2章 恋人編
12/35

12.無邪気な君

昨日リアを送り届けたばかりだけれど、今日もまた来てしまった。自宅に行ったらリアは仕事から帰ってきていなくて、場所を教えて貰えばカフェだったから夜ご飯はここにしようかな、と入ってみる。

突然来ちゃったけれど、リアが嫌がらないといいな。


「いらっしゃ……え?! きれー……はっ、すみません! えっと、こちらのお席にどうぞ!」


なんかクロエみたいな子だな。向けられる視線がそっくり。


案内された席に座ってメニューを見ればお酒の提供もあるみたい。見たところ女性客が多いけれど、リアが絡まれたりしないか心配。

少しするとリアが厨房から出てきて、目が合うと嬉しそうに笑ってくれてホッとする。嫌がってなくて良かった。

後ろからはさっき案内してくれたクロエみたいな子が目をキラキラ輝かせてこっちを見ている。


それにしても、リアが可愛い。スカートが短いって少し恥ずかしそうでそれもまた可愛い。今すぐ連れて帰りたい……



ご飯を運んで来てくれたリアの手に贈った指輪が輝いていて、隠さずにいてくれてほっとした。

恋人になってくれた初日に指輪を贈るなんて余裕が無いなと自分でも思うけれど、少しでも早く、リアには相手がいるって主張したかった。


リアは早すぎじゃないかって戸惑っていたし、番登録についてもきょとん、としていたもんね。人族で言うと付き合ったその日に親に結婚の許可を貰いに行くってことだし、それは戸惑うか。


ご飯を食べ終わってリアの仕事が終わるまでもう少しあるけれど、待っている人もいるし出ようかな、と会計に向かえば今度は落ち着いた雰囲気の子が担当してくれた。


「ご馳走様でした」

「ありがとうございました。あの……アメリアの事、よろしくお願いします。素直でいい子なので……!」

「うん。大切にするって約束するよ」

「是非またお越しください」


私の言葉に、安心したように笑って見送ってくれた。良い友達がいるみたいで良かった。



「カミラさん、お待たせしました!」


店の外で待っていると仕事が終わったリアがパタパタ走ってきた。小動物みたいで可愛い。後ろにはさっき見た2人の姿もある。


「リア、お疲れ様」


リアの頬を撫でれば擽ったそうに笑って、拒否されないことに嬉しくなる。可愛いなぁ……


「後ろの2人はお友達? 紹介してくれる?」

「あ、そうでした!」


後ろを振り返ってリアが手招きすると、1人は遠慮がちに、もう1人は興奮気味に近づいてくる。


「さっき会ってると思いますが、エミリーとアンジーです。2人もさっきぶりだと思うけど、カミラさん」


リアに紹介してもらって簡単に自己紹介をする。さっき会ってるから初めまして、って訳でもないしね。


「リア、このあと少し時間ある? ご飯まだでしょ?」

「はい! お腹すきましたー」


せっかくならリアが友達といる時はどんな感じなのか見てみたいな。


「良ければ2人もどう? リアの事色々教えてくれたら嬉しい」

「是非!! なんでも答えます!」

「アンジー……少しは遠慮しなさいよ。お邪魔じゃないですか?」


2人きりだと色々したくなっちゃうし、居てくれた方が助かるかも。もちろんこんなこと言わないけど。


「全然。リアもいい?」

「もちろんです! エミリー、アンジー、何食べたい?」


3人で食べたいものを相談し始めて、リアが楽しそうにしていて微笑ましい。



お肉料理のお店について、4人がけのテーブル席に案内されて、リアの隣に座る。


「ご馳走するから、なんでも好きな物頼んでね」

「いいんですか?」

「もちろん。あ。リア、お酒はやめておこうね」

「えー」


お酒好きだし飲みたかったのかな? でもまた酔いつぶれても困る。主に私の理性が。


「明日も仕事でしょ? また酔いつぶれるよ」

「むー。酔いつぶれたのなんてあの1回だけですよ。ちょこっとだけもダメですか?」


あれ、普段は酔わないのかな? 上目遣いでお願いされるとなんでも聞いてあげたくなる。


「1杯でふわふわしてたでしょ」

「あれはきっとお酒が強かっただけですよ。ねえ、私酔いつぶれたことないよね?」


リアが同意を求めるように2人に問いかけている。本当かな?


「ないわね」

「ないね」


本当みたいだね。それなら1杯くらいならいいかな。


「ほら! 飲んでもいいですか?」


聞きました? ってドヤ顔で見てきて可愛すぎる。


「とりあえず1杯だけね」

「やった! エミリーとアンジーも飲むよね?」


嬉しそうにしちゃって。食べるのも飲むのも好きなんだなってよく分かる。


「カミラさんはお酒にします?」

「ううん。私は大丈夫」

「前も飲みませんでしたよね? 苦手なんですか?」


お酒は好きだけれど、思考が鈍くなるし本能が強くなるからね。今はお預け状態なわけだし。


「好きだし弱いわけじゃないけど、飲んだらリアを襲っちゃうかもよ?」

「ふぁっ?! カミラさんは飲まなくていいですーっ!!」


リアにしか聞こえないように耳元で囁けば真っ赤な顔を手で覆っている。


「ふふ、可愛いね。2人は決まった?」

「もう尊すぎる……あ、まだ決まってないです」

「私もまだです」


少し落ち着いたリアがメニューを見ながらあれもこれも、と楽しそうに選んでいるのを眺めていると、前から視線を感じる。視線を送れば、笑み崩れるリアの友達の姿。うん、そっとしておくのが良さそう。



「あ、カミラさん退屈ですよね?」


注文を終えて待つ間、わいわい盛り上がる3人を微笑ましく見ていると、気づいたリアが気遣ってくれるけれど、全然退屈じゃない。


「全然。楽しそうなリアを見てるだけで楽しいよ」

「え、それ楽しいですか?」

「うん。どんなリアも可愛いなって」

「だからすぐそう言うのやめてくださいって……」


そう言われても、自分でも抑えられないから仕方ない。恋人にはなってくれたけれど、気持ちを伝えずにいたらまた余計なことを考えそうだし、逃げられても困るしね。もちろん逃がすつもりなんてないけど。


「無理かな。リアが慣れるしかないね」

「絶対無理……」


すぐに赤くなって、本当に初々しくて可愛らしい。今まで誰とも付き合ったことがないと言っていたから、リアにとっては慣れないことの連続だもんね。


そんなやり取りをしていたら先にお酒が運ばれてきて、それぞれの前に置かれる。本当にリアは大丈夫なのかな……


3人が飲み始めて少しして料理も運ばれてきて、リアは好きなお肉料理を幸せそうに食べている。これだけ喜んでくれると色んな美味しいお店に連れて行ってあげたくなるよね。


「美味しいー! あ、カミラさんも一口食べますか?」

「……え?」


可愛いなって眺めていたら私が欲しがっていると思ったのか、お肉をフォークに刺して差し出してくる。リアからあーん?


「あ、さっき食べたし要らないですか?」

「いや、貰う」

「はい、どーぞ! 美味しいですか?」

「うん」


ニコニコ笑いながら聞いてくるけれど、動揺して味が分からなかった。可愛すぎでしょ……

私が食べさせたがるからリアも抵抗はないのかもしれないけれど、あーんなんて初めてしてもらったし、不意打ちは照れる……


「エミリー、アンジー、減ってないけど食べてる?」

「うん。尊いやり取りを見ながらのご飯、最高……!」

「ちょっと甘すぎてお腹いっぱい」


私の動揺には気付かずに楽しそうに話しているから良かった。リアといると今まで知らなかった自分がどんどん出てくることに驚く。リアといる時の私は周りから見てもまるで別人らしいしね。


これからもずっと無邪気なリアに振り回されるんだろうな。どうやっても勝てる気がしないし。


リアを見れば飲み慣れているお酒だからか、特に酔った様子もなく1杯目を飲み終えていて安心。


「リア、飲み物の追加は?」

「あ、欲しいです! 2人は次もお酒にする?」

「アメリアが飲まないなら、私たちもいいかな」


うーん、酔った様子もないし、リアに任せても大丈夫そうかな。


「リア。大丈夫そうだし、飲みすぎなければ飲んでもいいよ」

「本当ですか?! やった!」


わーい、とお酒のメニューを覗き込むリアが可愛らしい。3人ともお酒を注文して、わいわい盛り上がる様子を微笑ましく眺めていた。


「今日はご馳走様でした」

「ご馳走様でした! 幸せな時間でした!!」

「いいえ。リアの事教えてくれてありがとう」


友達の前でのリアも見られたし、色々と話も聞けて楽しかった。自分の話をされる度に恥ずかしそうにするリアが可愛かったし。


「また明日ねー!」

「さ、帰ろうか」


お店の外に出て、2人が帰るのを見送って、リアの手をとって歩き出す。

リアはちょっとふわふわしているけれど、この間ほどではないかな。あっという間に家の前についてしまって残念。もう少し一緒に居たかったけど遅い時間だし帰さないとね。


「リア、今度のお休みいつ?」

「えっと、あと4日行けば2日間休みです」

「番登録をするのにリアにも来てもらわなきゃならなくて。泊まりに来ない?」


まだリアの気持ちは追いついていないかもしれないけれど、早く番登録を済ませたいし、リアにも触れたい。


「お泊まり……カミラさんのお家ですか?」

「うん。嫌?」

「嫌じゃないです。……お邪魔します」


小さい声だったけれど、ちゃんと聞こえた。お酒のせいもあって赤らんでいた頬がもっと赤くなっている気がする。可愛い。今すぐ連れて帰りたい。


「良かった。リア」

「はい? ーっ!」


名前を呼んで見上げてくれたところで触れるだけのキスをすれば目を見開いて固まっている。動かないけど大丈夫かな??


「リア、大丈夫?」

「……えっ?! あ、はい! 大丈夫です」


大丈夫、と言う割に視線は泳いでいるし、私の方を見てくれない。


「5日後の朝に迎えに来るね。楽しみにしてる」

「……はい。待ってます。送ってくれてありがとうございました。帰り気をつけてくださいね」

「うん。またね」


リアが家に入るのを見届けて、大きく息を吐く。

キスだけで真っ赤になって、恥ずかしそうにするなんて反応が可愛すぎて辛い。5日後、私は耐えられるのかな?

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