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疑わしい令嬢 1

前作と180度違っております。前作の雰囲気が好きな方には、おススメしません。

勢いで書いております。



*「息をつく」の漢字は「吐く」と分っておりますが、敢えて平仮名で表記しております。

ここは貴族が通う学園。

午前の授業が終わり、バラバラと生徒達が食堂に向かう。


「今日のメニューは何かしら?」

侯爵令嬢セリシーア・カテラウカは、友人のマユラ・ドワカンア侯爵令嬢と食堂に向かっていた。

「フフ、昨日はロブスターのパスタでしたから、今日はお肉系なのではないでしょうか?」

この学園は貴族が通うだけあって、学食にも力を入れていて、とても美味しい。


今日こそは落ち着いてゆっくりと食事をしたい。

セリーシアは顔に出さないように、ふぅっと短く息をつく。


「あら、マユラ大正解ね」

今日のメニューは鴨のローストサンドイッチだ。これなら、持ち出して中庭でも食べられる。


「マユラ」

「ええ、中庭ね」


(さすがは親友)


マユラの返事を聞いてセリーシアはフッと笑う。

セリーシアの言わんとしている事をマユラは汲み取ってくれた。

二人は昼食を手に入れると、隠れる様にそそくさと中庭に移動した。


人目に付きにくい植木で隠れる場所に腰を下ろすと、二人は揃って溜息をついた。

セリーシアはローストサンドを一口かじる。

「・・・・・美味しいわ」

ボソッとセリーシアが呟く。いつもなら楽しいランチの時間。これが平時ならもっと味わって「今日のローストサンドは、お肉に絡んでいるソースが絶品ね」などと、マユラとの会話も弾むというのに。

このところの二人は、うんざりしながらの食事が続いている。いや、食事だけではない。学園生活自体がだ。


「今日は大丈夫ですわ」

マユラが気を使って明るく言った、その時だった。


「セリーシア。こんな所にいたのか」

心底ホッとしました、という声と共に王太子でセリーシアの婚約者のアキーリス・クーフェンと、その従弟の公爵子息レスダール・ウトアが現れた。

セリーシアもマユラも顔は笑顔を張り付けたまま、内心で毒づいた。毎回、毎回こっちへ来るな、と。




「セリーシア。マユラ嬢も。私を置いて逃げないでくれ」

一国の王太子ともあろう者がそんな情けない声を出さずに毅然としていてくれ、とアキーリス以外の

三人が思った。思ったが、もう誰もそれを口にしない。最近ずっと注意していたが、直るどころか悪化の一途を辿っている。

「殿下、静かにして下さい。せっかく隠れているのに」

そう四人は隠れていた。四人がというより、アキーリスが。残りの三人はとばっちりである。


授業の課題や移動、ランチなど、いつもセリーシア、マユラ、アキーリス、レスダールの幼馴染四人組で行動する事が多かった。


ところが二週間前から、闖入者によって崩れだした。その闖入者は事あるごとにアキーリスに纏わりついた。「私と貴方は結ばれる運命なの」と言って。


「あー、みぃ~つけた~」

甘ったるい声が響いた。温かい気候だというのに四人はブルッと身体を震わせた。

噂をすればである。ガサガサと植木を掻き分け、一人の少女が現れアキーリスに抱き着いた。


二週間前に転入してきた、男爵令嬢モンドリリー・ジラーン。可愛い顔をしているのに怪しい挙動の少女。



学園に途中転入事態が異例の出来事だったが、彼女の行動はもっと突拍子もなかった。


セリーシア達四人が食堂へ移動していた時の事である。

突如モンドリリーがアキーリスに、背後からタックルをぶちかました。

安全な学園の中で完全に油断していたアキーリスは、数メートル吹っ飛んだ。その後のモンドリリーの『ごめんなさい。よそ見してたら、ぶつかっちゃった』と、可愛らしく身体を捩り恥じ入る姿に周囲の人間はドン引きした。誰がどう見ても、ぶつかったレベルではないし、よそ見ではなく完全に狙いを定めた見事なタックルだった。ちなみに、アキーリスは脳震盪を起こしていたので、その謝罪は聞いていない。その後、見ていた生徒が教師に報せ、アキーリスは無事に病院へ運ばれて行った。


アキーリスの名誉の為に付け加えると、アキーリスは日頃から身体を鍛え、反射神経もよい。王太子という立場から、刺客に狙われる事もあるだろうとの想定の下、それに対応する為の訓練もしっかりと受けている。

そのような訓練は、常にアキーリスの横にいるレスダールも同じである。

それでも防げなかったうえに、衝撃の威力は普通の令嬢として規格外だった。



その後も、アキーリスの前を歩いていたモンドリリーが、後ろに向かってハンカチを投げつけてきた事があった。それが見事にアキーリスの顔面にヒットした。柔らかい筈のハンカチが、何故かビシッと石粒のように顔に当たり、その痛みにアキーリスは呻いた。

その時のモンドリリーは『私のハンカチを拾って下さって、ありがとうございます』と、鼻血を垂らし呻いているアキーリスの手を不敬にも握っていた。そしてアキーリスが振り払おうとするのに、その手を中々離さなかった。

その時は『王太子が血を流しているのに何をしているのか』とセリーシアがモンドリリーを引き剥がした。アキーリスはレスダールに応急手当をされ、保健室に連れて行かれた。



モンドリリーは挙げたらきりがない程、あの手この手でアキーリスを痛めつけ、何かとアキーリスの周りをウロチョロとしている。



そして、その少女モンドリリーの行動は学園の人間を恐怖に陥れた。彼女の、あの行動は隣国で発生した『ヒロイン病』ではないか、と。



読んでいただき、ありがとうございます。









書いたからには、完結させたい・・・




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