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第1話 やばい青春ライフが始まるよ

「本当に僕がこの学校に通って上手くやれるかな?」

『それ今まで何回も聞いたぜ。そもそもここに行きたいって言い出したのお前だし、ってかもう門の前なんだから覚悟決めよーぜ相棒。』

「...わかった、行くよガヤ」

僕の名前は覚眼寺ガロア。名前だけ聞くと恐ろしいイメージだけど実際は高校生になろうというのに見た目も声も小学三年生程度のちんちくりんだ。でも僕の特徴はこれだけじゃなくて周りの人には見えない精霊がくっついていることだ。名前をガヤと言い、黄色くてうねうねしている。

『おい!それだけじゃねぇだろ相棒!オイラの鼻先についたプロペラを忘れないで欲しいぜ。』

こうやって僕の心の声まで聞くことが出来てうるさいしわがままだけどスパコン以上の演算能力を持っている。

そんな僕が入学するむくげ台学園は全国でも上位の進学校で開放的な校舎と校風が魅力的だ。僕はこの学校に入るために結構無理をしたのだけれどそれはここに中等部から通っているある人に会うためだ。

『相棒や、お前の目的はいいけど"アレ”もやらねーとな。青春したいならな。』

うん、そう”アレ”今まで何度もやってきたけど今度は緊張感も罪悪感も段違いだ。何かって?言いたくない。すぐ分かるけど。

そんなこんなで歩いているといつのまにか校門を潜っていた。制服姿の人達が増え出し数年前に建て替えられたばかりのガラス張りの校舎が中庭を囲んでいる。もう後戻りできない。いざ!


 入学式を終え教室に着くといきなり先生から自己紹介を勧められた。他のクラスメイトが次々と発表してついに僕の番がきた。緊張しまくりで他の人の全然聞こえなかったけど予定通りにやるしかない。

「えっと..き、今日から入ってきた覚眼寺っガロアとっいいます。こ、い、以後お見知り置きを!」

『お見知り置きって倍率が低い会社の新入社員かよ』

なんか凄く変な感じになった。そして案の定終わった後にクラスメイトが群がってきた。

「変わった苗字だな!寺育ちTの助か?」

「ガロアってすごい名前!キラキラを通り越してゾワゾワネームって感じ。もしかしてお父さん物理学者?」

「ってか背ちっちゃ!弟にしたいくらいかわいい!」

「高校入試大変なんだけどどうだった?裏口入学?」

あまりの質問責めに頭が追いつかずそんな僕をガヤは笑いながら眺めていた。1日目でいきなり挫折かと思ったその時

「ちょっとみんな、離れなさい。混乱してるじゃない。」

そうして場を諫めたのは白いロングヘアに七色の髪飾りの少女だった。さっきは緊張して気づかなかったが間違いない。彼女こそが僕の探していた幼なじみの雨空蕨だ。小学生の頃は家が近所でよく遊んでいたが、以降は疎遠になっていた。

「ガロア、久しぶりじゃない。まさかうちに転校してくるなんて驚いちゃった。」

「また君に会いたくてここまで来たんだ。これからよろしくな、ワラビー。」

「あっ、それ昔のあだ名じゃん!あの時から姿も全然変わってないね!いいよいいよ、困ったことがあったらいつでも言ってね。」

雨空さんははじめはしっかりした感じだったけど話が弾むとぴょこんと跳ねて目をキラキラさせるようになった。するど周囲からは

「おい、雨空さんは学年トップの成績で高領の花だぞ。」

「今までいかなる男子とも付き合う素振りを見せなかったのに。」

「しかも覚眼寺突然流暢になったし、もしかして入学前から示し合わせていたのか?」

と嫉妬の視線が注がれた。すると蕨は

「別にそういうわけじゃないから、ただ普段通り困っている人を助けただけよ。」

と慌てて訂正し皆そのまま解散していった。結構ヘイトを買ったかもしれないけど僕はワラビーと一緒に学園生活が送れる嬉しさに包まれて他のことはどうでもよくなっていた。

『楽しそうなのはいいけどよぉ、さっき「弟にしたい」とか言ってたの実はあの女だったぞ。相棒はそんな彼女で大丈夫か?』


 早めの下校時刻になり、人もまばらになったところでついに”アレ”をやる時が来た。数週間前の学校説明会で校内の死角はすでに把握済み。体調は万全。あとはターゲットを待つばかりだ。 

『ニュヒヒ ここの生徒は才女ばかりだぜ、どんなお味なのやら。』

僕はこの精霊に定期的に餌をやらねばならない。そしてそのために必要なアレとはスカートをめくることだ。僕は一年前にコイツに取り憑かれて以来幾多の女性のスカートをめくってきた。バレたことは一度も無い。なぜならガヤが獲物を狙う時僕の脳を極限の状態にし、並外れた集中力と体術を授けてくれるからだ。足音を立てず、低姿勢で走り寄ることで瞬時に終わらせることができる。僕とガヤの命はつながっていてこの”食事”をしないでいると一月で餓死してしまう。だから罪悪感に押し潰されようともやらねばならない。死にたくないから。そして絶好のチャンスが訪れた。廊下に僕と女子が一人だけいる状態。逆光で詳しく見えないが向こうはこちらに気付いておらず今を逃すわけにはいかない。豹の如く無音で相手目掛けて一直線。スカートまで後十メートル、五メートル、一メートル、、、ゼロ!掴んだ!引っ張らないように上あげようとしたその時、腕をガッと掴まれ引き剥がされた。見上げてみると驚きの表情が現れた。雨空さんだ。

「ガロアくん?今、何しようとしてたの?まさか私のスカートを?嘘だよね?」

そして彼女の目は怒りと悲しみの混じったものとなり

「ガロアくんのエッチ!人でなし!いつの間にそんな悪い子になったの?見損なったわ!」

一体何が悪かったのか。手順はいつも通りで問題なかった。僕のことは見えてなかった筈だ。なのに腕を掴まれた。それは直感?

「ばかばかばか!もう口聞いてあげないからね!」

雨空さんは涙目になって僕に掴み掛かっている。そうだ、悪かったのは僕だ。せっかくの雨空さんの善意を踏みにじろうとした罰が下ったのだ。後悔してももう遅い。彼女に嫌われたら僕は何を頼りに生きればいいのか、絶望で目の前が真っ白になりそうになった時、ガツンとした耳鳴りと共にガヤが

『簡単に生きるのを諦めんじゃねぇ!こうなったのは全くの偶然!故意じゃねえぜ!天罰来ないぜ!右手の階段を見ろ!希望はまだある!』

そこには階下から女子生徒が上ってきていた。確かにこの上ないチャンスだ。僕は雨空さんを振り解いて階段に向かいその女子のスカートの中を視界に収めた。僕からすればスカートの中は黒いもやが渦巻くように見えている。これがゲートが開けた証拠だ。そう、精霊の餌はあの中にあるのだ。

「待ちなさい!まだ反省してないの?」

『もう雨空さんにも知ってもらうしかねえぜ。オイラ達の真実をよ!いくぞ相棒!』

「『ゴートゥー異世界!』」

心の中で掛け声を合わせると僕と雨空さんは一瞬でスカートのもやに吸い込まれていった。

「ちょっとどうなってるのー?説明してぇ〜」





 「ん...ここは?」

私、雨空蕨はスカートをめくって逃げたガロアくんを追いかけた所で突然通りかかった女の子のスカートに吸い込まれた。全く理解が追いつかない現象だったけど眼下に広がる光景は私をさらに混乱させるものだった。なんと石畳にレンガの建物といった西洋風の街並みが突如現れたのだ。街を歩く人々は青や緑の肌をしている上に不思議な紋様の服を着ている。さっきガロアくんは異世界だのなんだの言ってたけれどまさか本当に私は異世界に送られてしまったのだろうか。そしてこのまま路上にいてもラチが空かないとたまらず走り出そうとすると一気に屋根よりも高く飛び上がり街を一望した後頭から地面に突っ込んだ。それなのに体はピンピンしておりそれを見た周囲の人達は

「ちょっとあの人おかしいぞ!」

「ホンネ様に連絡するか?」

と気味悪そうに私を見てきた。もうこのままではいられないと私は再び飛び上がり、民家の屋根を飛び移って逃げることにした。そうして改めて街を見てみるとおかしなことに気付いた。街は今の私でも届かない肌の高い城壁で覆われており門すら存在していなかった。また城壁の外はカーテンのようなもので包まれていた。食糧を供給する農地も見当たらず外部との交流無しに大勢を養うこの世界は一体どうなっているのか。行く宛が無くどうしようもない状態になったその時向こうから何かがこちらに飛んで来た。ガロアくんだ。黒い服に短パン姿で背中には蒼く発光するヒラヒラしたものが付いており、白い板の様な物に乗って飛んでいる。

「僕に掴まって、本当に絶対変なことしないから。」

正直なところさっきスカートをめくられそうになった恐怖が抜けきっていなかったが今は色々聞き出さないとラチが明かないと思い伸ばして来た手を掴んだ。その後も彼は飛び回り続け、私は落ちない様に足に抱きついた。恥ずかしいどころじゃないが今はもう手を離せそうにない。

「さっきのこと、許したわけじゃないけど今起きてる事を説明してよ。」

「わかったよ、ガヤ、難しい話しになりそうだから頼む。」

すると足下から声がして

『相棒よぉ、面倒事ばかりオイラに投げないで欲しいぜ。賢くならないぜ。まあ相棒は口下手だしオイラが説明するか!』

「うわぁ!?板が喋った!?」

『板じゃねえぜ!切れ味抜群器用万能なスカートめくり精霊”ハイパープロペラ=ガヤ様だぜ!』

「スカートめくり精霊?ってことはあなたがガロアくんを唆したのね?」

『おいおいいきなりオイラが主犯だって?さっき廊下で叱ってた時もやけに小声だったしお前は相棒に甘いぜ。もしや好きなのか?弟にしたいのか?』

「ちがーう!」

そういえばさっきつい弟にしたいなんて言ってしまった事を思い出した。今考えてみると恐ろしい。なんであんなこと言っちゃったんだろう。

「ああ、アレは雨空さんが言ったのか。嬉しいよ、僕も雨空さんが姉さんになって欲しい。」

えぇ、どういうことなんでガロアくんはこんなに私に懐くの?この三年間で何があったの?理解が追いつかない内にガヤがまた話し出した。

『ここは人間一人一人が必ず持っている心の中の異世界だぜ。人の記憶や感情を基にそれぞれ自分だけの世界が作られているぜ。オイラはスカートの中に門を作り人を中に入れることができるのさ。』

「スカートに異世界?そんなのあり得ないわ。どういう理屈なのよ?」

『簡単さ、心の奥底もスカートの中も見られたくないというのは共通している。共通点があるってことは繋がってるってことだぜ。』

やっぱり意味が分からない。でもとにかく今はここから出ることが最優先。そのためにはこの精霊にあまり盾つかない方がいい。私はしがみつきながらも続けて

「じゃあさ、外に出る方法は知ってる?ある程度妥協するから。」と尋ねた。

『簡単だぜ。出たいってならオイラの許可がいる。絶対に他人にバラさないことが大事だ。お前は相棒がさっきやったこと、不問にできるか?』

ぐぬ、私は生まれてこの方周りのいけないことを見逃したことはないのでとても抵抗感がある。しかし、出られなければ一生ここに閉じ込められることになる。やっぱりみとめるしか...

『いいじゃねえかー相棒の可愛さに免じてよー』

「いえーい」

かれこれ話している間ガロアくんはずっと飛び回っていた。宙返りなども繰り返し、だんだん吐き気がしてきた。かといって下をみると大勢の兵士がこちらに槍を向けていた。 

「この敵意、ガロアくんも何かやったの?」

「別に、ただホンネの居城に侵入しただけだよ。」

「ホンネって何よ?」

『現実世界の人の分身でこの世界の支配者だぜ。本物と違って感情的で理性のタガがねえから怒らせるとまずいぜ。』

「何やってるの?何度もやってるんでしょ!勝手に侵入したらまずいに決まってるでしょ!」

「まあまあ落ち着いて、必要な事だったんだ。後で話すけどまずは地上に降りて兵士どもを蹴散らす。親玉をおびき寄せるためにね。絶対に離れちゃダメだから。」

「えっ、ちょっといきなり!?」

ガロアくんはそのままガヤの板を持って街の広場に降り立ち、兵士達に宣戦布告した。

「訳あって暴れるよ。」『本当に申し訳ないぜ!』

板を高速で回し出し、近づく敵を踊る様に切り裂いていく。彼は運動音痴だった記憶があるんだけど異世界だと違うのだろうか。やられた兵士は風船の如く破裂して跡形も無くなった。こいつらはホンネの人形ということか。近場の敵が居なくなったところでガロアくんは板に乗って飛び回り離れた兵士もジェット噴射を浴びせて一掃した。

「ここまでやったら来るだろうな、総大将。」

『来ないなら街ごと壊すぜ。作り直すの大変だろうなぁ。』

まあホンネをおびき寄せるために暴れたのは薄々分かっていた。感情的だと言ってたしまず来るだろうね。

「あっ言い忘れてたけど異世界で本名は良くないよ。相手の脳裏にイメージが残って疑われるかも。」

「今更すぎよ!悪いけど二回くらい呼んじゃったじゃない!」

「おっ今謝った。ついでにスカートめくりの件もさ、、」

「アレは...どうしようかしらねー?」

「そこを頼むよ〜」

『こいつらイチャつきやがって、でもまあいい友達がいたんだな相棒。』

そうこうしているうちにラッパが鳴り響き、城から大通りを通じて誰かがやってきた。髪型や背格好がさっき見た女の子そのものだ。まさかこれが異世界の王ホンネってこと?

[私の世界を荒らす不届き者よ、我が排除し平穏を取り戻さん。]

この貫禄、今までの兵士とは訳が違う。只者ではなく気配がする。

「さっきの兵隊さん達一言も喋らなかったよ。もう少し人間味を付けて欲しかったな。」

[そんなものは不要だ、アレは我が傀儡に過ぎないからな。]

「く、くぐ?」

『うわーやめろー相棒の無知が透けるー!ハイハイもう前置きはやめやめ!』

ガロアくん、見た目だけじゃなくて頭脳もちょっと幼いのかな?かわいい、、何考えてんだ私。

[残す言葉はそれで良いか?では行くぞ。やあや我こそはむくげ台学園高等部2年4組の...」

言い終わる前にガロアくんが斬りかかりホンネもそれに応戦した。私が目で追うのもやっとなスピードだが徐々に押していった。

「食べないみたいだし空からどう?」

ガロアくんは空に飛び上がり板からビームを飛ばし出した。これにはホンネも対応できず動きを止めたがその時

「あれ?そういえば今の戦いってスカートと全然関係無いじゃん。なんかしっくり来ないな。」

と言って空中で棒立ちしている隙に立て直した相手が投げた瓦礫が命中し墜落してしまった。

『説明しよう。相棒は戦いに集中している時ふとそれがスカートめくりと関連が薄いことを思い立ち一気に弱体化してしまうんだぜ。』

「何よそれ!緊急事態なのに今更すぎることで悩むな!」

ガロアくんは立つこともままならず、板も蹴飛ばされなす術がない状態に陥った。

「まって、勝手に入ってすみませんでした。どうか命だけは、話せばわかるから!」

[問答無用!]

突然の日本史語録に困惑しているときに近くに飛ばされてきたガヤが私に問いかけてきた。

『このままではみんなやられてしまうぜ。助かるにはアンタがオイラと契約して戦うしかねえぜ。』

「契約って?」

『あの相棒みたいにオイラと命を共有するんだ。そうすれば強大な力が手に入るしスカートめくりをチクらないと保証できるから外に出しても良い。』

「つまり誰にもバレずにスカートをめくり続けないとあなたが死んで私もガロアくんも死ぬということ?」

『そうだぜ。アンタも死にたくないだろ?選択肢はない筈だ。大人になると綺麗事だけじゃやってけねえぜ!』

ああそうだ。今は先の事に不安を抱いている暇は無い。目の前の大切な人を助ける為、やらねばならない!

「いいよ!契約して!私に力を!」

『よしきた!Power to the Girl!』

すると全身が光に包まれ白い水着の様な格好になった。さらに背中からカラフルなマントまでついてきた。何これ!?太ももとか横っ腹とか出てるし。私がこれを望んだっての?確かにスカートへの警戒心はあったけど...。

『すげえ格好になったな!スタイルいいぜぇ。』

「見るな!衣装のデザイン見直してよ!」

『そいつは無理な問題だ。これからそれで頑張れ。あっ、相棒!終わったから動いていいぜー。」

「そっかーおめでとうワラビー」

そういうと板が飛んでいってホンネを弾き飛ばし、いつの間にか平気そうな顔をしていたガロアくんの手に収まった。

「まさか契約させるために弱ったフリを!?ひどいわ板!」

『仕方ないぜ。こうしないと秘密が漏れるリスクがあったからな。(なんかオイラが主犯みたいになってるぜ)』 

「もう終わりだよ。道空けてもらうね。開放トゥウェラ・ゴスペル」

ガロアくんがそう言うと板の両端から黄色く光る刃が伸び、もう片方の手には黒い槍が出現した。

「見たか!これがオイラの相棒の能力!己の記憶を基に別の異世界のモノを投影できるんだぜ!」

「あまり喋らないでよ。」

『問題ねえぜ!今アイツの勝機はゼロだぜ!』

「ほんとー?」 

ガロアくんはそういいながらも余裕そうに笑っている。能力って言ってたけど私にもあるの?どうしたら出せるんだろう?

[何を言っているのだ。お前たちはここで処刑されるのだああああ!]

ホンネがガロアくんに襲ってきたがヒラリと躱して板で両足を切断してしまった。さらに槍が三つに分かれて伸び、両手と胴体を地面に縫い付けた。

「それはこっちのセリフだよ。雷神の釘打ち(ハイキリング・ドライバー)!!」

板からエネルギーを次々と打ち出して槍をより深く突き刺すと共にホンネごと延焼させて焼却した。

「断末魔もないなんてキャラが薄いなあ。」

ガロアくんはピントが外れた発言をしていた。

『ちなみにホンネは倒してもしばらくしたら復活するぜ。本体は無事だからそこから分身が再生成されるだぜ。』

それなら良かったー、ガロアくんは分かってやってたんだね。

『おい、オイラはもう満腹なんで帰ろうぜ。相棒も随分街を見ただろ?』

「うん、あとは”鏡”があればね。城に戻るよ。」

鏡?

そうして私達は無人になった城に入って行った。ガロアくんはガヤの板を折りたたんでカメラにして写真を撮りながら歩いていた。彼の言葉から察するにどんな異世界にもあるホンネの宝物だったりして。

『あったりー、察しが良いなオイラの子分』

「子分って、相棒じゃないの?それに私の考え読んだ?」

『相棒はまだガロアくんだけだぜ。アンタはもっと交流が必要だぜ。近くにいれば外でも念力で会話できるからよろしくな。』

念力に外では契約者しか聞こえないとかこの世にそんなモノがいて良いのか疑問だらけだったがそれにはガヤは返答せずそのまま城の宝物庫に入っていった。中は幾多のテレビ画面が天高く積み上がり、それぞれに何か写っていた。学校、大人の男女、ボウリング状、そして本人の顔は写っていない。これは本人の思い出が詰まった部屋、だからホンネは侵入者を許さなかったのか。そして部屋の真ん中にちょうどテレビ画面ほどの鏡を発見した。外の世界を写し出している。

「これで外を観察すれば外に出たあとバレずに退散しやすいんだ。」

『あの路地裏に出ればいいぜ。じゃあ帰るぜー』

そして目の前が真っ白になったかと思うと次の瞬間には鏡で見た路地裏に二人で立っていた。

「今日はお疲れ雨空さん。あと今日はごめん、これから色々巻き込む事になるかも...」

ガロアくんは申し訳無さそうな感じだった。表情は一見普通通りだけど私には分かった。

「正直全部納得いったわけじゃないけどガロアくんまだ危なっかしいからほっとけないの。うちの学校のみんなと一緒に成長していって欲しいわ。」

「ありがとう、こんなスカートめくり常習犯の僕にここまでしてくれるなんて。」

「...常習犯と聞くとヤバそうね、じゃあ保護観察処分ということで。他の子を泣かせたら弟にするからね!」

『それ罰なのか?あと次の食事は二週間以内だぜ。契約者が二人で消費カロリーも二倍だからな。』

そうだ、もう私達の学生生活は普通で無くなっていた。これより先、次々と異変学生降りかかる事になるのだから。


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