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第4章 川島という男

俺は団塊ジュニア生まれだ。


18歳で上京するまでは、千葉の田舎町でのんびりと育つ。少年時代は少年ジャンプが黄金期であり、ファミコン、カードダス、ガンダムのプラモデルが飛ぶように売れた時代を生きてきた。


当時はバブルであり、芸能界もビートたけし、明石家さんま、タモリなどのビック3と呼ばれる芸能人が活躍していた。テレビ番組は金をかけているのが、子供から見ても分かる程に派手であった。現在のテレビを見ると、年末と正月くらいしか金をかけられない時代に変化したと思う。


俺は華やかなバブル時代を見てきており、自分たちが大人になる時は、素晴らしい未来が待っていると信じていた。大人も日本はドンドンと金持ちが増えると信じていたらしい。だが、俺が高校生の時にバブルが崩壊してしまう。


それでも、親は大学に行けば就職できるはずと考えていた。いわゆる学歴信仰の世代であった。その反面、子供達は学歴信仰をまったく信じていなかった。もはや、時代は平成に移り変わり、全ての価値観が変わりつつあった。若者も髪を染めて、今が楽しければいいと思うフリーターが増えていった。


俺は高校卒業と同時に、東京にある3流大学に通う事になるのだ。とはいっても、勉強には興味なく、大学のサークル、彼女とのデート、アルバイトに精を出していた。いわゆる、トレンディードラマのような大学生に憧れていたのだ。


それは4年間遊びながら、やりたい事を探すという若者にありがちな目的であった。だけど、そんなダラダラした生活で、やりたい事など見つかるはずもなかった。すぐに、3年という月日は水のように流れていき、就職という現実を見なければいけない状態になった。


新卒は一生に一度なので、1997年から就職活動を始めてみた。この頃はアムラー、たまごっち、援助交際などが流行っており、若いギャルが日本を盛り上げていた。いつだって、日本で元気なのは若い女なのだ。


一方、若い男は元気がなかった。なぜなら、就職活動については非情に厳しい時代だった。のちに、氷河期世代と呼ばれて、通り魔や犯罪が多い世代だと呼ばれるのだ。日本の平成の黒歴史のひとつだと思う。


だから、有名大学を出ても、フリーターとして生きる人間が多かった。それほど正社員のイスを手に入れるのは難しかったのである。


俺はテレビや出版社に憧れていたが、倍率の高さは凄くて、3流大学の俺には無理だと分かっていた。スーツを着たホワイトカラーの仕事に憧れたが、もちろんその枠もなかった。あるのはブルーカラーの肉体労働ばかりであった。辛い、汚い、危険の3Kと呼ばれる仕事だ。


しかし、その人気のないブルーカラーの仕事でも正社員になるのは難しかった。まあ、俺のように能力ない奴は、どの時代でも厳しかったかもしれないけどな。


でも、俺は諦めずに何十社もの会社に足を運んだ。時に罵声を浴びたり、説教されたり、バカにされたりと圧迫面接も多かった。その場では笑顔だったが、頭の中で面接官の顔面を殴る妄想をした。


だけど、就職活動以外にやることはなかったので、とにかく数をこなして頑張ってみた。その努力の甲斐もあって、俺はついに正社員のイスに手に入れる事に成功した。では、気になるその仕事の話をしよう。


その仕事は自販機オペレーターと呼ばれるモノであった。簡単に言えば、自販機に飲料を補充する仕事である。駅や街で見たこともある人もいると思うが、自動販売機を冷蔵庫の扉のように開けて、缶やペットボトルをガチャガチャと補充するのだ。


完全なる肉体労働の仕事であり、人の入れ替わりは激しく、中には過労死する人間も出るくらいクソな仕事だ。もちろん、女受けも最悪である。


しかし、手取りは22万円なので、新卒にしては良い仕事だと思う人も多いと思うが、その認識は間違っている。実際は残業代も出ないで、拘束時間も非常に長い仕事なのだ。


俺の場合、拘束時間は14時間以上になる事も多かった。残業代はサービス残業として処理されて、一銭も出る事はなかった。もちろん、違法だけど、これは社会の暗黙のルールってやつだ。


車の制限速度40キロの道で、40キロ以下で走っている車はいないって事だ。サービス残業大国の日本なので仕方ない。まさに、くそったれな人生である。

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