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いつもより少し遅く歩き出したモネの前にある道は、また障害物が重なっていた。草が生い茂り道を塞いでいたかと思えば、その先には虫の巣があった。草を掻き分け、虫の巣を駆け抜けて続くのは、また何も無い登り道。そしてまた暗がりが覆い始めると、モネは不安と孤独で押しつぶされそうだった。道は正しいのか、間違っているのか。自分は何をしているのだろうと、故郷の友人はもう皆、それぞれに役割をこなしている頃だろうかと。たった一人で、こんな所で、何をしているのだろうか、と。モネは道の脇に腰を下ろし、膝を抱えて顔をうずめた。
考えれば考えるほどに、考えることが嫌になり、何も思わないまま古い切り株を見つけた彼女は、その陰へ荷を下ろして身体を横にして、近くにあった大きくはない葉を被り小さくなって目を閉じた。上手く閉じられないのか、身体を横にした目からは涙が零れて、余計に閉じられなくなっていた。拭って、また拭ってして、拭った後に滲ませながらもモネは眠ることが出来た。そして気がつくと、辺りは明るかった。
風の音と、木漏れ日の音。虫達はまだ、眠っているようだった。葉の上に溜まった水玉で顔を洗うと、モネは辺りを見渡した。静かで心地の良いとても良い朝にも関わらず、彼女の気持ちは振り返るばかりだった。支度を終えようかという頃、モネは顔を上げて登り坂の先を見た。そこは曲がりくねり、その先は見えなかった。それを見てまたうつむき加減に支度を済ませると、古い切り株にもたれ掛かり上を見上げて深く息を吸い、ゆっくりと吐いた。先のことも、後のことも、もう何も考えたくはなかった。