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それから少し坂を登ると、身体を預けても良さそうな窪みを見つけた。モネは苔を集めて敷き詰めた後、光る虫を一掴みと大きな葉を数枚集めて窪みを覆った。樹の香りに、ふかふかの苔。沢山登った疲労も相まって、久々に寝心地が良かった。集めた光る虫達を放つと、窪みの暗がりの中には星空が広がった。
飛び交う星を眺めて、モネは星の降る街を思い出していた。一緒に葉っぱや木の実を集めた友達、そしてお爺さんのこと。瞼を閉じるのが勿体ないと感じながら、モネは苔に頬ずると星の飛び交う夜に解けていった。星空をかき消す光が窪みに差し込み、眩しいと寝返りながらも彼女は身体を起こした。大きな葉を外して窪みから出ると、葉に溜まっていた水を浴びて身支度をした。
気持ち良く登り始めたモネだったが、その日は今までよりも過酷な道のりだった。至る所に棘の生えて居る道に痛い思いをしたと思えば、道なりの枝が折れて進めずに蔓を伝って行ったりと、険しい道が続いていた。棘で傷付いた脚と、蔓でよじ登り傷付いた手を擦りながらも進んで行くと、その先には劈くように咲く花が咲いていた。
モネは香りを嗅いで一輪摘み取ると、髪に簪た。そして顔をあげると、もう辺りは暗くなり始めていた。身体を休められそうな場所は見当たらず、仕方なくモネは花が咲いているすぐ側に腰を下ろした。花々の陰に隠れるように荷を下ろし、大きな葉を探した。そして数枚見つけて運び終わる頃には、もう暗くなっていたが、花を見た彼女は驚いた。咲いている花々が、ほんのりと光っていたのだ。
髪に簪ていた花を手に取ると、もちろんその花も光っていた。モネは解けた髪を手ぐしたあと、荷から草を取り出した。そして花の光を頼りにしながら、草の果肉を脚へ塗り始めた。切傷に染みる痛みに怯みながらも、両手にも塗りこんだ。塗り終わると手足を庇いながら、ゆっくりと頭を荷へ預けて大きな葉を被り、モネはただただ目を閉じて眠った。