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モネはその日、騒々しい夢を見た。ヒソヒソとした話し声に、悲鳴や怒鳴る声。走る足音や、転げたような音。様々なそわそわとする音が、重なって聴こえたような気がして目を覚ますと、部屋の中も窓から見た街の様子も、何も変わりはなかった。むしろ暗がりらしく、静けさに虫の鳴き声が響いていた。変な夢を見たのだと目を擦りながら、彼女はまた繭へ戻って眠りについた。
次にモネが目を覚ますと、部屋の中には窓から明るい光が差し込んでいた。窓越しにぐっと朝に向かって身体を伸ばすと、顔を洗いに行った。ソムの迎えを待って居たが、食事をして散歩をして食事をしても一向に訪れずに、外は暗がりになってしまった。もしかして自分の事を忘れられているのではと、少々不安になったモネは窓から何度も外を見るも、やはり彼は現れなかった。
彼女は仕方なく何かをしようと、ここまで登ってきた日々を記そうと机に向かう事にした。そして題名を何にしようかと考えていると、扉を叩く音がした。
「いやあ、お待たせしたね。行こうか」
ようやく迎えに来たソムと共に、モネは上へ続く道を歩き始めた。上へ、奥へ進むに連れて明かりのついている建物が増えていった。モネに用意されていた家の付近には、恐らく誰も住んでいないのだろう。暗がりでも明かりがついた事は、二度や三度しかなかった。
「とても遅い時から、食事をするんですね」
「この街は、暗がりが長いからねえ。
下の街とは、また違った時の流れ方なんだ」
「こんなに暗がりが深まってからとは思ってなかったから、私は忘れられてるのかと思って不安になってましたよ」
「忘れてたなんて、そんな!
忘れていたなんてことはあ、ないよ。
忘れていただあなんて無い無い。ないよ?」
もう始まっているだろう食事会だということをモネは確信しながら、おどけて歩くソムに少し苛立っていた。




