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モネが宿へ帰り着いた頃には、辺りはもう暗くなり始めていた。扉を閉めてもたれると、ため息をついた彼女は浴室へ行き、また湯を溜め始めた。溜まっていくお湯を眺めながら、右手で湯と戯れた。
モネがそうしている時、ルヒは大量の書物に埋もれていた。暗がりの中で小さな明かりを頼りに書物を読み漁り、そして別の紙に何かを書いてはまた書物を読み漁っていた。数時間それを繰り返し、何かを書いた紙をぐしゃりと潰し頭を抱える。彼はモネが街を離れてからの数日眠ることも出来ずに、これを繰り返していた。
頭を抱えるその度に、腕の隙間からモネが渡した御守りがちらついていた。無理矢理にそれから目をそらして膝に顔を埋めた。疼くように震える足を押さえつけてまた書物を読み始めたルヒだったが、身体を抑えられずに書物を投げ飛ばした後は、暴れるように部屋中を壊し回った。そして立ち尽くす彼の視界の隅に、またモネの御守りがちらついた。
彼にはもう、衝動を抑えることは出来なかった。ルヒは転げながらも這いながら御守りを手に取ると、中から赤い実の欠片を取り出した。舐めるように匂いを嗅ぐと、座り込んでその実に何かをしているようだった。そして吸い込む音が鳴り止んだかと思えば、ルヒは紙切れの束になった書物へもたれて、ぐったりとしていた。




