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ソムに見送られ、宿へ戻ったモネは大きな果実を一欠片と木の実をつまんだ後、眠ることにした。寝室を探すと、小さな窪みに大きな繭が敷いてあった。繭はとても柔らかく、モネは半ば飛び込んで繭へ寝転んだ。ふかふかとして温かく、その柔らかさに甘えるように顔を埋める彼女は、あまりの寝心地の良さに、すっと眠ってしまった。
時計塔の針が、最も離れ離れになるであろう頃。モネは目を覚ましてゆっくりと起き上がると辺りを見渡した。ほんのりと薄暗い光が窓から見えると、深々に上着を着込むと外へ出た。ひんやりとした空気は街並みの景色も相まって、より澄んでいるように感じた。
そこへ少しづつ、やんわりと明るみが足されていくと、ソムが言っていたような綺麗という言葉だけでは足りず、それはただただ見惚れる景色だった。柔らかく降り注ぐぽたりに、薄らと掛かる靄。そこへ陽が差し込み照らされ、降り止むぽたり。滲む光を薄らと掛かる靄越しに見ているような気持ちのモネの瞳は、靄越しに見られるぽたりそのものだった。
上着を着ていたものの、暗がりから明るくなる頃は少し肌寒かった。モネはひっそりと部屋へ戻ると、静かに扉を閉めた。扉にもたれながら、何か見てはいけないものを見てしまったような。誰も知らない事を、自分だけが知ってしまったような。そんな気分に微笑んで、たたんたたんと足を弾ませながら浴室まで行き、湯を出した。




