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「星の降り注ぐ町。あの町がその名で呼ばれるようになった原因の上の街から落ちた男は、フェルムという者だ。私の幼い頃からの友人であり、兄弟のような仲の男だった。その赤い実を取りに行って、過って転落してしまったんだ。私は転落した彼を探したよ。それはもう、全てを投げ捨ててね。根元のあんな陰にある小さな町で、フェルムが樹に還ったことを知った時は、やっと見つけたと安堵したよ。歪な跡も、残っていなかったからね」
「そんな…。そうだったんですね。
私はその方が今際に言った言葉を聞いて、幼い頃からずっと上の街へ行く事を夢見て、そしてここまで来ました」
「この樹は美しかった、だろ」
「そうです。まだ、この樹には見知らぬ事が沢山あります。だから私はまだまだ、上へ行かなくちゃ。でもここよりも上の街へは、限られた者しか入れないことを知って。どうすれば、認めてもらえるかなと」
「ああ、そうだったね。
それならば、私の客人として入ればいいよ。
ここで君と出会ったのも、何か縁があるのだろう」
「本当ですか!?」
「ああ、勿論。
ただ、明日出発だが構わないかね」
「もちろんです!あ、でも…。
陽が出て間も無いうちに、お世話になった街の人へ挨拶に行きたいのですが、良いですか?」
「構わないよ。
ではまた明日に、ここで待っているよ」
モネは飛び跳ねて喜び、部屋へ戻って行った。しばらくして、おばあさんが料理を運んできてくれた。今晩の料理も一つ一つ丁寧に作り込まれていて、吸い物の香りすら惜しく感じていた。配膳を下げに来たおばあさんにお礼を言うと、「寂しくなるわね」と呟いた。モネがまた直ぐに戻って来るかもしれないと返すと、「そうね」と言って部屋を出て行くまで、おばあさんは寂しそうだった。




