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「やあ、おかえり。
あれ、もう部屋に居ると思っていたよ」
宿の玄関では、またソムがおばあさんと話していた。ルヒが言っていたように、モネも少し疲れていたという事もあり、声を掛けられた彼女は一緒になって玄関にある椅子へ座った。
「おや、今日は首飾りをしていないんだね」
「え?あ、本当。
多分、付け忘れて部屋に置いたままになってますね」
「変わった飾りを付けているんだね」
「樹に還った祖父の形見なんです。
御守りにってくれた。
忘れちゃうなんて」
モネは慌てて立ち上がると部屋へ戻り、御守りを首から下げて安堵した。そしてまたソム達の所へ戻ると、二人に御守りを見せた。
「その中には、珍しい物が入っているね」
彼がそう言うとモネは包みを開いて、中に入っている赤い実の欠片を取り出して見せた。
「やっぱりその実だったか。
それは、とても珍しい物なんだよ。
嗅ぎなれた者にしか分からない、
独特な香りが特徴だ」
「祖父にもらったんです。
すごく昔に、男性と一緒に町に落ちてきた実の欠片だって聞きました。
香り、ですか。私には全然分からない。
そんなにも珍しい物だとは、知らなかったです」
「いやー、君は本当にあの町から来たんだね。
懐かしい、とても懐かしいよ。
その実はね、上の街からまた少し先へ行った場所でしか、今のところ見つかっていないんだ。
そして病気を治療する時に使える事が分かってね、限られた者しか扱えないようにしているんだ」
「病気?この実は病気に効くんですか!?」
「ああ、効くよ。
さっきも言ったように、扱える者は限られていているがね。医者なら扱える者も多いだろう。
星の降り注ぐ町、か。友人を思い出すよ」
「友人が居られるのですか?
星の降り注ぐ町に?」
「ちょっと、ソム様」
「大丈夫、構わないよ」
彼は座り直すと口元を拭い、一息をついた。心配そうに見つめるおばあさんを他所に、ソムは思い出を見ながら話し始めた。




