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「もう僕からは、案内する所はない。
少し疲れたね」
「ありがとうございました。
でも上にも街があるのなら、
そっちも案内してほしいなーなんて思ったり」
「僕はもう、上の街へは入れないんだ。
ごめんね」
「入れない?どうして」
「ここよりも上にある街、樹師の街。
そこには、簡単に言うと一定以上の能力が認められた者しか入れない。
その街に居るのは、この街を造ったりだとか、僕達の在り方を決めるような者達が住んでいる。
僕は僕よりも優れた者が現れたから、居場所が無くなってしまったんだ。それだけじゃなくて、
もう僕の中からは、何も生まれてこない。
空っぽなんだ。だからもう、あの街へは入れない」
「病気、だから?」
「病気、ね。病気か。まあ、病気だよ。
もう僕には何も無い。この街の者にも迷惑だろうし、下へ行ってひっそりと樹に還ろうかと思っているんだ。街の者には軽蔑されるだろうけれど、僕は何も知ろうとせずに上の街に焦がれてこの街に縋りしがみつくこの街を、軽蔑しているから問題は無い。何を言われ何を思われても、気にはならない」
「そんな…。何も無いだなんて、どうして分かるんですか。こんなにも凄い街並みを造れたのに、
また何か造れるようになるかも、知れないじゃないですか!この時計塔だって、私はとても好きです」
「だから、もう出し尽くしたんだよ。
何にも、出てこないんだよ。
時間が経てばと思ったけれど、僕にはもう何も無いんだ。何度も何度も、時間をかけても何も出てこなかったんだ。君には分からないし、分かってほしくない」
ルヒはそれを言い放つと、辺りを見渡して「ごめんね」と呟き、その場を去っていった。モネは、彼を追えなかった。追い掛けて引き止めても、何も言えないことを感じたからだ。二人を避けて通る者達の目に気づいて、見失ってしまったルヒを思いつつ、モネは宿へ帰っていった。




