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「君は、本当にここから入ってきたんだね。
この扉の前に来る者は、今はいないから。
僕もここに来たのは、久しぶりだよ」
「入って来た時は、簡単に開いたんだけれど。
こちらから出ようとすると、開かなくて」
「当たり前だよ、そういう造りにしたんだから。
昔は皆、この道を行来していたんだ。
でも道中に、大きな蟲が出るようになってね。
それ以来、誰も通れなくなった。
でも、その頃にはもっと簡単に上と下を行来出来るようにしようってことで、斜行木や昇降木を造っていたから、街の皆にはそれほど困ることは無かったんだけどね。
君が本当にここを登って来たんなら、
君は本当に変わり者だよ。
どうして昇降木使わなかったの?」
「同じことを街の方にも、
何度も言われたからもう言わないで。
いいわよもう、馬鹿で結構です!
それよりこの扉、こちらからは開かないの?」
「開くよ、手伝って。
一人じゃ開かないんだ」
ルヒが指をさして示した所には、小さな把手があった。モネは扉の隅にあるそれへ手を掛けると、彼はもう一方の隅にある把手へ手をかけた。ルヒの合図で同時に把手を引くと、小さな音が鳴った。「開けてみて」と、促されたモネは扉に触れると、ほんの少し力を加えた。そうすると、あの冷たく重かった扉が、そっと開いた。




