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モネは大通りを通り抜けて、街に辿り着いた時に通り抜けた幹の中にある街並みへ向かった。辿り着くと彼女は幹に触れて、ほんのりと懐かしさを感じた。そして中へ入ると、十字路を一つ一つ通って見て行った。外にある明かりとはまた別のぼんやりとした明るさに、どこか温かみを感じていた。橙と茶と土の香りに満たされながら、登って来た時に迎えてくれた扉まで辿り着いた。その扉は、本当にもう使われていない様だった。入ってきた時は、振り向かなかったから気が付くことは無かったが、扉は蔓や苔を纏い古ぼけていて、ここは誰も居なくて少し薄暗い。この扉の向こうには、緑という緑が広がっていることを、どれほどの者が覚えているのだろうか。扉に触れてみると、こちら側から開くには一人では開きそうにはなかった。ずしりと重たく、ひんやりとしていて、背を向けられている気分になった。モネも扉に背を向けて歩き出し、幹の外へ向かっていると、不意にルヒの事が思い浮かんだ。彼ももうここへ来ることは無いのだろうかと考えていると、聞き覚えのある声がした。
「やっぱり、君か。
この前は、その、ごめんね。
間違いだったんだ」
モネが振り返ると、そこにはルヒが居た。彼女はたった今彼を考えていた事と、それが突然目の前に現れたこと。そして、先日は取り乱していて気が付かなかったが、彼の容姿を見て思わずひとときの間、目を奪われてしまった。洒落ている訳でもなく、街ゆく者の様に着飾りもしていないルヒに品の良さを感じて、ただ見てしまっているモネを呼び戻したのは、ワイスに言われた言葉だった。
「どうしたの?」
「い、いや。あの、ごめんなさい。
びっくりしてしまって」
「ああ、ごめんね。
この前の事があるから、仕方ないね。
じゃあね」
「ま、待って!ルヒ、さんでしょ?
街の方からあなたの名前を聞きました。
あなたがこの街の建物とか、幹の中にあるあの扉とか凄いなって思って、今ちょうどあなたのことを考えていたの」




