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「ふうー。急なざぶりだったわね。
あなたも災難ね、変なのに絡まれて降られて。
こっちで適当に寛いでね」
「こんなに激しいぽたりは初めてでした。
さっきの人は、私を誰かと間違えたみたいですね。
ちょっとびっくりしました」
「私はざぶりが初めてって部分に、びっくりしているけれどね。大丈夫、直ぐに止むと思うわ。
ああ、ルヒね。許してあげてね。
とっても優秀だったらしいのよ、彼。
ほら、この街にある建物の造り、似てるでしょ?最初に考えついたの、ルヒらしいの。
他にも古い下へ降りる道の加工とかね。
今はなんて言うか、病気なの」
「病気、ですか。心配ですね」
「ダメよ。ちょっと顔が良いからって騙されちゃ。あなたも可愛い顔してるんだから、気をつけて。そんなことよりも、随分長い間あなたのこと見かけなかったけれどどこに居たの?
下の街なんて、見るとこそんなに無いはずだし、この街も小さくはないけれどあなたが居れば気が付くわ」
「登ってました、ずっと。
この街まで辿り着くのが、こんなにも大変だとは思っ…」
「登ってた?まさかさっき私が言った古い道を通ってきたの!?昇降木とか斜行木があったでしょ。あなた、なんて言うか。面白いわね」
顔を崩して笑う女性に、モネは恥ずかしがりながらいじけるように、また葉湯を口に含んだ。
「そんな物があったなんて気が付かなかった。
ほんとに大変な道のりだったけれども、でも、やっぱり間違えたのかも知れないけれど、それで良かったかも知れない。と、今は思えます」
「私は絶対昇降木を使いたいけどね。
まさかあなたがそんなに、…変わっている子だとは思わなかったから。案内してあげれば良かったわね。おじいさんのこともあったから…、ごめんなさいね」
「あ、いや、私の方こそこんなにも良くしてもらって。あの、今さらですけれど私、モネって名です。なんてお呼びすれば」
「そういえばまだ、お互い名前も知らなかったわね。私は、ワイスよ。モネ、ね。可愛い名前ね。ここまで登って来たなら、疲れているでしょう。そこの長椅子で横になるといいわ。あと、これも使って。私は食事の用意をするから」
「そんな、大丈夫です!手伝わせて下さい」
「良いのよ、ゆっくりして。
私が招いたんだから。それに、あなたのおかげで少し元気が出たから。ほんとに、ゆっくり休んで」
ワイスは柔らかい絹布を手渡して、葉湯を片手に奥の部屋へ行った。ぽつりとそこへ残されたモネは、長椅子へ腰を下ろした。ふかふかとしたその椅子に、自然と身体は横になり絹布を被った。彼女からモネへ手渡されたものは、全て温かかった。




