8話
〇アードラ・スフォリス
気になっていた少年は初日に一戦交えた所で大したことがなかった事が判明した。
魔力量や身体能力に加えて魔法技術、剣術を見たがどれも大したことがない。
子供である事を加味しても平凡そのものだ。
私は魔力視ができると言った彼に正直期待していたのだ。
結果は落胆で終わる。
適当に剣術の稽古に生活魔法の練習等をこなす毎日だった。
楽しくもない日々。
ただ、少し体つきが変わった気がしたがそれ以外には変化は見られなかった。
2週間が過ぎた頃だろうか。
アストが言ってきた。
「ちょっと見せたいものがあるから付き合ってくれない?」
護衛も兼ねているためアストの後を付いていく。
だからと言って護衛するほどの敵がいるわけでもないが・・・
そのまま街の門を出て草原の方へと1時間ほど歩くと、
「ここまでくれば、街からは見えないよね?」
ぽつりとつぶやく声に少し不審な点がある。
「見えない」事を確認しているのだから。
「で、こんな草原に何を見せたくて来たのかしら?」
「あー、まずはこれね」
そう言うと鞄から魔道具らしきものを取り出し、発動させる。
結界の魔道具のようだ。
「冒険者がよく使う魔物除けの魔道具だよ」
なるほど、あれか。
冒険者になる為に必要な物を整えてきたから見てくれと?
ただ、貴族が、ましてやあの甘い領主の父親が、
この子供を冒険者にするかと言えば答えは「否」だろう。
「それを使ってどうするんです?」
「簡単な事だよアードラ。
ここで僕にいつも通り稽古つけてくれればいい」
「わざわざ、こんな所まで来てやる事じゃないでしょう?」
「まぁね。ただ、見られるのは困るんだよ」
「?」
意味が解らない。
見られると困る?
この場にいる私以外にということだろうか?
それと最初に言っていた「見せたいもの」とはなんだ?
「見せたいものは、僕の今の全力」
ブワッっとアストの魔力が上がるのを肌で感じる。
対峙しているだけで強者と判断される程度には・・・強い。
私はどうやらこの子を過少評価していたようだ。
普段家で見せていた稽古は何の為かは知らないがかなり手加減していたのだろう。
「へぇ」
不謹慎かもしれないがワクワクしてしまう。
最初に感じた何かを今から見せてくれるはずなのだ。
私の直感がそう言っている。
「なら、かかってきなさいよ」
にやける私は落胆した事も忘れて魔力の出力を上げていく。
やっぱり、この子はどこかオカシイ。
口元がゆるむのが自分でもわかる。
10歳の子供が向かい合うだけでここまで楽しませてくれそうなんだから。
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