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6話

〇アードラ・スフォリス


気になる者を見つけた。直感的なものだ。偶々、偶然、視界に入っただけの子供だった。

特に何の面白みもないのだかが・・・とりあえず後をつけて見る事にした。

そのままストーキングよろしく私は一人で街の外へと出かける子供を追った。


べ、別に好きじゃないんだからね。ショタとかじゃないんだからね。

これは、何となくイヤな予感がしたからだ。

私の勘はよく当たるのである。


街を出てすぐの所にある森へとその子供が入っていくのが見えた。

身なりからして良い所の子供なのだろうと伺えた。

こそこそとしているがあまりに不自然だ。

しかっし、子供追っかけてもしょうがないか。

まぁこの辺りは比較的安全だし、問題ないだろうが・・・。


森と言っても浅く見通しが悪いわけでもないしなぁ。

と思っていたら、その子供が森から慌てた様子で飛び出してきた。

ゴブリンのおまけ付きでだ。


さすがに見てしまったものは仕方ないか。


依頼でもなければ冒険者の稼ぎにもならいが助けることにした。

風魔法の基本技「ウインドカッター」を正確にゴブリンの首に向けて放ち軽く両断した。

瞬殺である。


倒れた子供が無事なのかを確認するため駆け寄っていく。

起きる気配がないので少し心配になるが頭を怪我しているらしく血を流して気絶している。

10歳前後の黒髪の男の子だが身なりがやはり良い。

そしてこの国では黒髪は珍しいので少し噂を思い出す。


このローグ領主の子供に黒髪が居たとかなんとか。


治癒魔法を使いある程度の傷を癒してからそっと子供を抱えて街へと戻った。


そしてやはり貴族で領主の息子だった。

恩を売るつもりはあまりなかったが冒険者としての信頼度が上がるならそれでもいい。

まだ冒険者として各地を回る予定であるので信頼を得られる事にこしたことはない。

見分を広めるのが目的ではあるし。


しばらくすると回復したのか領主の坊ちゃんが宿まで尋ねてきた。


「先日は危ない所を助けていただきありがとうございます」


貴族の子供らしく礼儀正しく挨拶をしてくる。

私にとっては貴族等どうてもいい。

適当に受け流しながら会話していると。


「冒険者である貴女に僕を鍛えて欲しいのです!」


なんだか馬鹿らしい事を言ってきた。

助けられた事に感動でもしたのか?

冒険者への一時的な憧れで領主の息子が言うようなことじゃないだろうに。


「意味が解らないわね。剣術指南所にでも通えばいいだろうに」


当たり前の常識としてこの国の貴族、騎士が習う流派の剣術指南所があったはずだ。

そこに通えばいい。

こちらは冒険者であり貴族のお抱え騎士なんかじゃなければ指南役でもない。

面倒事に付き合っても良い事はないのである。

ましては子供の戯言だ。


「怒らないで聞いてほしいのですが・・・」


「?」


どうも適当にあしらわれる事をあらかじめ理解していたふしがある。

なにか言いたげにしたあと、


「貴女は魔族ですよね?」


ぼそりと呟かれた一言に虚をつかれ慌てて否定する。


「そ、そんなわけないでしょう?どうしてそうおもうの?」


周りに聞かれていないか素早く見渡し、誰にも聞こえなかったようだと

確信するとなんとか落ち着いた。

疑われるだけであまりにマズイ。


「まず、魔力ですね。はっきり言って桁違いです。

 それに、薄っすらとですが常に全身に魔力を帯びていますよね?

 恐らくですが幻覚系の魔術にて姿を少しだけ変えているのではと思ったわけです」


信じられない事を子供が言う。


実際に印象操作の魔術を使い自身を少しだけ武骨な冒険者に見せるようにしている。

魔族と言っても私の場合は外見が人と変わらないのだ。

さしたる問題は冒険者に見えない事である。

意外と華奢に見えてしまうのが難点だった。

そんな事情もあって魔力制御を完璧にこなして自分の印象操作までも行っていたが・・・・


この子供程度に見破られる?


いや、あるわけがない。


印象操作を使用していつもの威圧を思わず出してしまう。

が、相手が子供である事を思い出す。


おっと、いけない、いけない。

殺気放出解除だ。


「坊ちゃん・・・いや、アストくん。聞いてもいいかな?」


とりあえず偶然にしては的確過ぎるが、子供の勘とかいうのも侮れない時がある。

何かしら感じ取った可能性がある。


「ど、どうぞ」


「まずは、見えないはずのモノを見ているようだけど

 頭がおかしいとかそういう事言われてないかな?」


まずは、適当にはぐらかしてみるか。

簡単に言えば「可笑しなこと言ってるけど頭大丈夫貴方?」だ。

子供相手なのでやんわり言ったつもりだったが結局ストレートに言っていた。


「これからは言われる可能性がありますが・・・

 今の所言われたことすらないですね。」


これからはいわれるんかい!

と思っても声には出さないが苦笑いだ。


「はぁぁ。どうも頭の打ち所が悪かったみたいねぇ。

 ちゃんとした治療をもう少し受ける方がオススメなんだけど?」


とりあえず追い返すか。

あまりしつこくしてくるようならこの街を出ても問題はない。

流れの冒険者なのだからと考えていると耳元でつぶやく。

この子のつぶやきは危険度が高い気がする。


「僕、魔王の生まれ変わりなんですよ」


生まれ変わりなんて聞いたこともない。

が、

現魔国には王が居ない。

魔国と言っても閉鎖された環境にあり、人間が立ち入る事はない国だ。

普通に見つける事さえ困難なのだから。


現魔国では代理人としてシルヴィア大叔母様がいるが、王とは言っていない。

彼女を納得させられるだけの者が居れば別だが、

今の所誰にも王を名乗らせる気はないようだった。


当然ながらこれらに反発する者が出るが・・・

そんなヤツは大抵叔母様にぶっ飛ばされて終わる。

その大叔母様を倒せば王になれるかと言えば・・・名乗れそうだ。

あの人、最強に近いからなぁ。


まぁそんな感じでこの子が魔王を名乗ったら、

撫でられるだけで死んでしまうだろうと思われるなぁ。


「面白い冗談ー」


「魔力視を使っているんですよ。力量差がありすぎで偽装魔術までは

 確認できませんでしたがね」


私の言葉を遮るように被せられた言葉に驚きを隠せない「え!?」

ニコリと笑うこの子をどうすればいいのやら・・・

うーん、困ったこれは視えているという事だろう。

私の種族特有の「牙」と「目」が。


「はぁ・・・とりあえず、場所を変えるわ」


「外出許可」をやっとの事得られたのに帰る事にはなりたくない。

まだ、冒険者として楽しみ始めたばかりなのだから。


証拠隠滅を図るにも相手が貴族だ。厄介なことに。

やれやれ、良かれと思ってやった結果がこれかぁ。

部屋へ歩きながら溜息が漏れる。




部屋に入り扉を閉める。

軽く部屋に盗聴防止の魔法をかける。

これは音が遠くに届きにくくなる魔法である。

普通の声ならば数メートルで声が掻き消える。

最初に彼アストには言っておく事があった。


「まずは、忠告。あまりこちらに深入りしないでほしいかな」


忠告、これは魔族に関わるなという意味を含んでいる。


「それは、・・・わかりました」


正しく理解しているようで、アストの頭の回転の速さが覗える。


その後の話で彼は生まれ変わりと言っている

どうもある魔族の記憶を持ったまま人種として生きている感じだと思われたが、

最近の事はまるで知らないらしく。

「魔族」の現在の機密等は漏れていないと判断できた。


鍛える分にはまぁ問題なさそうだ。

魔力量が少ないので魔族とは比べられないがそれなりに仕上げて

やれば問題ないとこの時は思っていたのだった。

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