4話
世界を分断するかのような大戦の終結後、
勇者一行により連合国側の悪事が公開された。
戦争の切っ掛けとなった事件を引き起こしたのが
人間側の貴族の一部だったのだ。
魔王の討伐で権力を得た勇者達にも魔王の思う所が通じたのか
それにより魔族に対する批判事体は無くなり
法的にも魔族差別はなくなったが
結局の所・・・
それでもしこりは残る。
ただ・・・
魔族はそれ以降あまり人類国家には姿を現す事が無くなった。
そのため表面化はしていなかったが差別意識や迫害等が多く実際には残っていた。
500年の年月である程度は薄れているが
魔族は現在も好意的にはとらえられていない。
そして魔術にて変装していると思われるアードラに
確信をもって告げたところ・・・
コロサレソウデス・・・
秘密を知られれば表立ってはなくとも被害を受ける可能性だってあるのは明白だ。
極端な方法では口を封じられてもおかしくはないが・・・
睨まれて動けないまま数秒だろうか・・・
スゥーっと殺気が引いていく。
ーーーぷはぁッ。思わず息が漏れた。
「坊ちゃん・・・いや、アストくん。聞いてもいいかな?」
ニコリと笑いかけてくるアードラの目だけが笑っていない。
正直なことろ怖すぎる。
「ど、どうぞ」
「まずは、見えないはずのモノを見ているようだけど
頭がおかしいとかそういう事言われてないかな?」
うーん、どうやらこのおねーさんは僕が頭おかしい人だと
半分くらいは思っていそうだ。
そう言う事にてごまかしてしまおうとも取れた。
「これからは言われる可能性がありますが・・・
今の所言われたことすらないですね。」
「はぁぁ。どうも頭の打ち所が悪かったみたいねぇ。
ちゃんとした治療をもう少し受ける方がオススメなんだけど?」
まぁ、普通に考えたらその通りだろう。
ゴブリンに襲われた僕の年齢では錯乱しているような
状態の頭であってもおかしくない。
なのでちょっとだけ近づいて。「僕、魔王の生まれ変わりなんですよ」
とぎりぎり聞こえる声で言った。
アードラは一瞬目を見開くが「そんなわけがない」とつぶやき
笑いかけるように
「面白い冗談ー」
「魔力視を使っているんですよ。力量差がありすぎで偽装魔術までは
確認できませんでしたがね」
冗談と言わせる前にかぶせる様に、使えないはずの魔術で一つ種を明かす。
「え!?」っとアードラはあっけにとられた。
「ちなみに魔力視ですが・・・今現在のオラフティア王国では
あまり使える人が居ないと思います。」
魔力に関する知識がこの500年で薄れてしまっていた。
平和がもたらす弊害ではあるが必要のない武力は
ある程度を除き排除されていった。
魔法技術が衰退したのか?
と。
そういうわけではなく。
利便性の方向へとシフトして行ったのである。
魔石や魔道具等はもちろん、生活魔法等が発展しているのである。
町中の街灯や生活用の水魔法等が一般化して
魔石の補助や魔道具を使用すれば子供でも水が出せたりする。
もちろん攻撃目的ではない為攻撃力なんかはない。
500年で一番画期的なのがアイテムボックスであるが高価なため出回ってはいない。
そんな感じで魔法の使われ方が変わって行ったのだ。
アードラは「はぁ」と一息ついて席を立つと
「とりあえず、場所を変えるわ」
そう言って長い赤髪をきらめかせて宿の二階への階段に向かうのだった。
その後を僕はついていく。
未だブックマークはない・・・orz