12 童話〔その他〕『あの娘、もしかして……』ステロイド疑惑の少女 -白雪姫-
【 タイトル 】
『あの娘、もしかして……』ステロイド疑惑の少女 -白雪姫-
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【あらすじ】
ここは中世ヨーロッパ。
とあるお城に住む王妃は今日も魔法の鏡を前にポージングを決め、鏡に問いかけていた。
王妃「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰?」
鏡 『……はい、それは王妃様です』
王妃「フフフツ」
従順な魔法の鏡の返答に満足し、王妃は引き続きポージングを決めたっ!
均整の取れた王妃の理想的な筋肉は、三十五歳の今になっても依然衰えず、いやむしろ日々成長し続けているのだっ!!
王妃「ああ、私はなんて美しいのだろう」
鏡 『……』
◇◆◇◇◆◇◇◆◇
そして別のある日
いつもと同じく王妃はポージングを決めつつ魔法の鏡に問いかけた。
王妃「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰?」
鏡 『……はい、それは白雪姫です』
王妃「はあああああぁっっっん???」
鏡の意外な返答に王妃は驚きを隠せなかった。
なぜなら義娘の白雪姫は王妃主催の毎月定例女子ボディビル大会に顔も出さない、反抗期真っ只中のクソガキビッチであるが、筋肉はそれほど付いていなかったはずだったからだ。
王妃は自らの筋肉のみならず、城にいる人物はメイド一人一人に至るまでその筋肉を日々チェックし、記憶しているから間違いはないはず。
白雪姫が大した筋肉も付いていないただのひょろガキであることはたまに観察しているので確認済みだ。
白雪姫がいくら成長期の若い肉体を誇ろうとも、筋肉は一日や二日でつくものではない。「筋トレ」「エクササイズ」「栄養管理」「睡眠管理」その全てを年単位で計画し、着々と積み上げた上で初めて美しい筋肉は身につくのだ。
白雪姫が自分より美しい筋肉を誇っているなどあり得無い!
王妃「鏡! 世界で一番美しいのは誰っ!」
鏡 『白雪姫です』
王妃「ありえないッ!!!!!」
ありえないでしょ!! だって!!!!
……はっ!?
まさか、あの娘、もしかして……
『ステロイ……ド?』
そのとき王妃の頭に浮かんだ一つの疑惑。
――ステロイド。
――それは、見せかけの筋肉を作る魅惑の薬物。
ステロイド投与によってトレーニングの効果は劇的に向上し、筋肉量は爆増する。
しかしっ! その代償は命!
ステロイドは一度手を出すと歯止めが効かなくなる禁断の薬物なのだ……
『まさかあの娘……、ステロイドに手を染めているの!?』
そうとしか考えられないっ……!
『やめさせないと!』
白雪姫を更生させるための王妃の奮闘が始まるのだった!
鏡 『(別に筋肉が美しいとは一言も言っていない……)』







