case.12
海外ドラマが好きなので、日本に落とし込んだ話をなんとなくイメージしたものを書いて見ようかなと思いました。かなりゆっくりになるかと想いますがチマチマ書いていこうと思います。
5月10日。東京都調布市。
午前8時30分に稲村鉄平の頭にファイルが叩きつけられる。
「痛った!!」
「また徹夜か、稲村」
声の主は稲村の上司である藤堂崇である。
「…おはようございますチーフ。捜査資料纏めてたら寝ちゃったみたいですね。」
「…なるべく帰れと言ってるだろ。報告は朝礼で聞くから、とりあえず顔洗ってこい」
「いえっさー!」
彼らは自衛隊関連捜査班。昨今増加する犯罪に対し、警察だけで処理しきれない事態に危機感を持った政府が、自衛隊に関連する事件のみを扱う機関を設立した。それが自衛隊関連捜査班である。
いわば自衛隊の警察とも言える立場の彼らだが、階級は無いものの所属としては自衛隊に分類される。設立から日が浅く、事件数もまだ多くは無いものの、人手不足である彼らは忙しい日々を過ごしていた。
稲村が朝礼で先週の事件を振り替える。
「先週の事件は一件。5月6日に市ヶ谷駐屯地の自衛官二名が繁華街にて乱闘騒ぎを起こしました。佐々木明、青森県出身の24歳。五十嵐哲埼玉県出身の26歳の二名。被害者の佐々木明に対して、五十嵐哲が暴行を加えました。」
稲村がリモコンを捜査し、モニターに佐々木と五十嵐の写真が表示される。
「喧嘩の原因は?」
「二名とも黙秘を続けています。」
「被害者もか?」
加害者が黙秘をすることは珍しくないが、被害者も黙秘を続けるのには違和感を覚える。勿論稲村もこの点は気になっていた。
「繁華街でのことですし、酒のトラブルの線も考えましたが、二人が食事をした居酒屋の店主によると、食事中は和気あいあいとしていたそうです。店を出るまでの間特に目立った様子は無かったようです。事件の報告が上がったのが5月8日なので、管轄が回ってきたのが今日なので聴取はまだ行えていません。」
自衛隊関連の捜査を行うのは彼らの管轄だが、身分が分かるまでの間は1度警察が捜査した上で、自衛隊関連捜査班に回るため、どうしても捜査が後手に回ってしまうのが現状だ。
「…報告は以上か?」
二人の後ろから声が掛かる。
稲村が振り向くと、そこには自衛隊関連捜査班のトップである、古林康夫の姿があった。
「おはようございます長官。」
「おはよう二人とも。今うちが抱えてる事件はこの件のみだ。他に仕事が有るわけではないが、早急に処理してくれ。」
「…週末の警視総監とのゴルフはどうだったんだ?」
藤堂と古林は旧知の仲である。
「56だ。」
「長官上手いじゃないですか!?」
「スコアの話じゃない」
話を反らされたことが藤堂は気に入らないようだった。
「お前が前々から言っている管轄の件も含め、まだ国も警察も我々も手探りの事が多いのが現状だ。これは相手に伝えれば実現するという簡単な問題ではない。だから接待ゴルフまでして歩み寄ろうと私も頑張っている。お前の気が短いのは分かっているがしばらくは耐えてくれ。」
「チーフ!今はやれることをやりましょう」
「当たり前だ」
稲村の頭にファイルが叩きつけられる。
「ですよね」
「俺は佐々木の話を聞きに病院に行く。お前は佐々木だ稲村」
「了解です。チーフ」
二人はそれぞれ聴取に向かう。
「報告は小まめに頼む。今日は1日会議尽くしだが、緊急で私の手を借りたければ何時でも連絡してくれ」
「ありがとうございます長官」
「頼むぞ二人共」
「任せろ古林」
今日の調布市は快晴である。




