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ダンス練習

 ダンスの練習は主に明佳が担当している。場所は明佳の仕事先のスタジオがほとんどで、偶に外で練習する場合もある。


「じゃあ、まずはクロナちゃんのダンスの実力を知りたいから、なんか適当な曲に合わせて踊ってみて」

「はい」


 クロナは信二からもらった音楽プレイヤーから曲を再生し、踊り始めた。

 曲は信二と初めて会った時に歌った紺野幸香の曲だった。


「ふーん。紺野幸香が好きなんだ」

「はい。私の憧れです。私が持っていないものをすべて持っているから……」


 その言葉を発するクロナの表情は、どこか儚げに見えた。

 明佳はしばらくクロナの踊りを見ていたが、突然、


「もういいよ。ストップ」


 といって踊りを止めた。


「もう終わりですか?」

「うん。とりあえず今の実力はわかったから」

「それで、どうでした?」


 明佳は少し気まずそうな表情を浮かべている。


「はっきり言うと、下手くそなアイドルと同等、といったところね」


 それでも、思ったことはしっかりと言うようだ。


「き、厳しいですね」


 厳しい評価に、クロナは少し落ち込んだ。


「まず、動きが拙いんだよね。リズム感があんまりないっていうか。あと、体がダンスに適していないってのも大きな理由だね」

「それって、私じゃ上手くなれないってことですか?」


 クロナの表情が沈んだ。


「そうじゃなくって、ダンスをするための体になっていないってこと。体の柔軟性とか、筋肉のつきかたとかね。動きが拙くてキレがないのも、それが要員だね」

「じゃあ、まずは体を鍛えることから始めるってわけですね」

「そう。でも、体つきなんて一朝一夕で変わるものじゃないのよ。私が教えられる時間はあんまり多くないから、体作りに関してはクロナちゃんに任せるしかないのよ」


 明佳は予め作成しておいた書類をクロナに渡した。

 その書類には柔軟のやり方や、ダンスに必要な筋肉の部位の名前などが記載されていた。


「その紙に書かれているメニューを、二日置きにやってほしいの。一日にやる時間自体はそんなに多くないから、できると思うけど」

「わかりました。今日からやります」

「とりあえず、今そこに書かれているメニューを教えるから、実際にやってみましょう」


 クロナと明佳は準備体操をして体を温めた。


「ストレッチや筋トレのやり方はそれを見ればわかると思うから省くね。まず覚えてもらいたいのはアイソレーションよ」

「アイソレーション?」

「そ。分離するって意味の言葉なんだけど、まずはお手本を見せるからみてて」


 明佳は首のアイソレーションを行った。


「す、すごい! 人間技とは思えません!」

「そんなに驚くことじゃないよ。私よりも上手い人なんていくらでもいるし」


 言葉は淡泊だが、表情は嬉しそうだ。


「アイソレには上半身とか下半身とかいろいろあるけど、一番難しいのは首なんだよね。首のアイソレを独学で身に着けるのは非常に難しいから、誰かから教わった方がいいんだ」

「そうなんですね」

「まず基本姿勢からやっていこう。顎を支点として、足を肩幅より少し広く開いて、視線は前をみて」

「はい」

「次は首を動かすんだけど、そのときに注意してほしいのが、首だけを動かすこと。首以外が動いちゃうと意味がないから注意してね」

「は、はい」

「じゃあまずは首を前に傾けてみようか。軽く頷くようにするとイメージしやすいかも」


 クロナは言われた通りに軽く頷いた。


「うん。始めはそんな感じでいいよ。じゃあ次は横に旋回させてみようか。首だけを右に向ける感じで」


 クロナは首を右に旋回させた。


「じゃあ次は首を横に傾けてみようか。耳を肩に近づけるんだけど、近づけすぎると多分体ごと動いちゃうから注意して」


 クロナは首を右に傾けた。ほんの少し体が動いてしまった。


「す、すみません……」

「まあ最初は気にしないで。体が固いのは仕方ないんだし」

「はい……」

「じゃあ次は頭を後ろに置いてみて。上を向く感じで。胸は反らないように」


 クロナは頭を後ろに置いてみた。やはり、体が少し動いてしまう。


「よし、まあ始めはこんなもんよ。これを毎日やっていけば、首回りが自在に動くようになるから、地道にやっていきましょう」

「はい。アイソレって難しいですね」


 自分でやってみて、はじめてその難しさを実感した。


「初心者が躓きやすいからね。上半身と下半身はもう少し簡単なんだけど」

「そうなんですか」

「今日はこの辺にしましょう。続きはまた後日で。メニューの練習は忘れないでね」

「はい!」

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