三人トーク
「はい、それでは今日もレッスン始めます!」
数日後、クロナたち三人は一緒にレッスンを受けていた。
「彩希と時雨は基礎が全然できてないから、あなたたちは重点的に鍛えるわよ」
「はーい」
「初めてのレッスン、ワクワクするよ!」
時雨は目をキラキラと光らせている。
「彩希はいつも通りアップダウンの練習、クロナちゃんは彩希を見ててくれる? で、時雨はダンスは初めてって聞いたから、まずは基礎からやっていきましょう」
「はーい」
時雨は二人と比べると経験がないので、はじめのうちは明佳がマンツーマンでつきっきりのレッスンを行うことになっている。
「じゃあ彩希ちゃん練習始めようか」
「うん」
クロナと彩希も準備運動を行い、練習を開始した。
「はぁ~、今日もレッスン疲れたー!」
3時間後、三人はレッスン室を後にし、近くのファミレスで休んでいた。
「時雨は基礎からだから大変だよねー」
「でも、二人ともこれらを乗り越えてきたんでしょ? だったら私もやらなきゃ」
疲れた顔をしながらも、時雨は自分と二人との差を実感しているようだ。
「今日社長さんに聞いたらさ、私たち三人でユニットを組むことになったんだって。はじめは私とくーちゃんの二人だけの予定だったけど、時雨も事務所に入ったからどうせなら一緒にやろうってことになったとか」
「同じユニットになるなら尚更、二人に追いつかなくちゃね」
「でも、あまり無理なペースはダメだよ。最近時雨ちゃん夜遅くまで練習してるでしょ」
クロナたちは、最近夜遅くまでレッスンを行っている時雨を心配し、こうやって無理やり練習を中止させている。確かに三人の実力が揃っていればユニットとしての完成度も高くなるが、かといって無理をすると体を壊しかねない。
「そうそう。今日だって私たちが連れ出さなきゃ、夜遅くまでやってたんでしょ」
「そりゃね。これでも私だって気を遣ってるんだよ」
時雨は不貞腐れたような表情をしている。
「本当なら、彩希がある程度のレベルになったらデビューする予定だったんでしょ? それなのに私がユニットに入ったから、デビューが先延ばしになったって」
「え、そうなの?」
「……」
実はクロナは、時雨が言った話を社長から聞かされていた。
「……うん、社長から聞かされたよ」
「ほらね」
「何で時雨ちゃんは知ってるの?」
「知ってるんじゃなくて、そう思っただけだよ☆」
時雨は自信満々な表情を見せる。先ほどとは正反対だ。
「キャラつくる元気があるなら、まだ大丈夫そうだね。今日は遅くならないうちに帰ろうか」
「賛成ー。私も眠くなってきたし」
「じゃあ彩希おんぶしてー」
「眠くなったの私だよ!?」
時雨は彩希に寄り掛かり、彩希は時雨を背負いながら店を後にした。
「……って、お会計まだだよー!」
結局、三人分の代金はクロナが支払った。