三人目のメンバー
翌日、クロナと信二は時雨を連れて事務所を訪れた。
信二は昨日あった出来事を、社長である飯田に話した。
「……というわけなんです。この時雨をアイドルにすることはできませんかね?」
「ふむ……」
飯田は時雨に目を向けた。
「確かに、目を惹く容姿をしているな」
「でしょう! だから私をアイドルにすると、いいことありますよっ」
時雨は必死に自分をアピールする。
「社長さん、お願いしますよ。ねっ、ねっ!」
時雨は必死の形相で社長に迫る。
「わ、わかった、とりあえず研修生として迎え入れよう」
時雨の圧に屈したのか、とりあえず飯田は時雨を事務所に迎え入れることにしたようだ。
「よしっ!」
社長室から出た後、時雨はガッツポーズをして喜んだ。
「すごいな、時雨……」
大胆に自分を売り込む姿に、信二は感心している。
「私もあの積極性を見習いたいなあ……」
「というわけで、これからよろしくね、クロナ!」
時雨はクロナの手を握り、激しく握手をした。
「おはようございまーす。新しい人入ったんですって?」
ちょうどいいタイミングで彩希が事務所に顔を出す。
「あ、ちょうどいいところに来たな。この子が新しく入った錠本時雨さんだ」
「初めまして、錠本時雨と申します。以後よろしくお願いしますね」
時雨はキャラを作って丁寧に自己紹介をした。
「あ、これはご丁寧に。私は新屋彩希って言います」
彩希もかしこまって挨拶を返した。
「時雨ちゃん、キャラ作らなくていいよ……。彩希ちゃんは私と同じグループに入る予定なんだ」
「あ、そうなんだ。じゃあ素でいいね、よろしくー☆」
「え、あれれ?」
時雨の変わりように、彩希は困惑している。
「ねー信二さん。私もクロナや彩希と一緒のグループに入りたいなあ……」
「それは社長に聞かないとわからんな」
「じゃあ今から説得してくるね!」
と言ってすぐに社長室に入っていった。
「……何か、すごい人が入ってきたねえ」
「でも、すごい目を引く容姿をしているし、個性も強いし、アイドルに向いているよね」
「それは私も感じてるなー」
クロナも彩希も、時雨の個性に少しずつ惹かれているようだった。