第5話
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「どうしようかな……」
その夜、窓の外に星空を見上げた。
この辺りは住宅地。
街の灯が邪魔をするけれど、それでも夜空に星を眺めると気持ちがすっきり澄んでくる。
秋宮彩夏は美味しそうに寮の晩ご飯を食べて、嬉しそうにマナ達と大浴場に入り、楽しそうになぁ子にエサを与えていた。わたしもここの一員だって喜んで、週末は神愛とショッピングの約束まで取り付けていた。色々不足している日用品を買うんだとか。完全に居座るつもりだ。そんな彼女に僕は家に帰るよう説得しなければならない。とってもここを気に入って、あんなに嬉しそうな彩夏ちゃんをどうやって説得したらいいのだろう。お稽古事も家庭教師も全部キャンセルだと言うし通学時間だって増える。彼女のご両親だって心配しているだろう。マリアナ理事長であるお母さんの世間体だってあるはずだ。やはり一通り寮生活を経験すれば家に戻った方がいい、と僕も思う。そんなこんなをキチンと整理して理路整然と説明して納得させなきゃならない。
まず僕は自分の頭を整理するため、彼女がここで生活するメリットとデメリットを書き出して比較表に纏めてみた。こうするとわかりやすい――
週末、日用品とか買い込んでしまう前に説得しよう。木曜日の夜がいい。そうして金曜の夜、彼女のために美味しいケーキでお別れの会をしてあげよう。
僕は頭の中のスケジュールをノートに書き出した。そうして白い部屋でひとり、何度も何度も説得の予行演習を繰り返した。