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こんなに華麗な美少女が、あたしに恋するはずがない!  作者: 日々一陽
第4章 お嬢さまは女子寮がお好き?
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第2話

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「今日も忙しかったね~」


 マナとサリーは下履きに履き替えながら。


「明日は応援の練習をして~、そうだ、衣装の仕上げも急がなくちゃだし!」

「映画研究部のお手伝いもあったわよ」

「ああ、自主制作映画の出演依頼ね。タイトルは確か……」

「『浪花の休日』だわよ」


 『浪花の休日』は文芸部のシナリオによる『ローマの休日』のパロディだ。浪花の地を訪れた某国のお姫さまが宿泊先を勝手に抜け出して日本橋で知り合ったオタクニートと恋に落ちる話だとか。


「で、サリーに出演依頼が来たのよね。役どころは聞いたの?」

「当然お姫さま役に決まってるわよっ。絶世の美女役だわよっ!」

「お相手は水野みずのくんよね、映研の……」


 マナの言葉にサリーの笑顔がサッと消える。


「あの、ぽっちゃりちゃんの、わよ?」

「そうらしいよ、あの、巨大ぽっちゃり水野くんがオタニート役だって」

「……」

「キスシーンもバッチリあるって」

「……」

「ベッドシーンも――」

「いやわよ~っ! デブに押しつぶされるわよ~っ!」


 半狂乱のサリー。

 脚本から十分に予想できたと思うんだけど……


「デブはイヤなの?」

「べっ、別にデブだからってイヤなんじゃないわよ。ただ、その、ベッドシーンは聞いてないわよわよ~っ」


 きゃーきゃーと騒ぎながら寮への帰路をゆく3人の乙女。下校する男子生徒の熱い視線は相変わらずだけど、もう慣れた。


「あれっ? 女子寮ブログのフォロワーが一気に3桁に乗ってるわ!」


 突然マナが話題を変えた。彼女のスマホを覗き見る。昨日の夜は8人だったのに、あっという間に108人、マウナケアもビックリの大噴火を起こしている。


「ホントだわよっ、一気にブレイクだわよ~っ!」

「凄いね千歳、やったわねっ!」


 喜ぶマナとサリー、だけどそれは――


「それ、きっと吉野くんのお陰よ――」

「吉野くん?」


 そうか、マナは知らないんだ。教室で女子寮ブログを更新しているところを吉野くんに見つかったこと。それ、吉野がクラスメイトに漏らして学校中に広まった結果に違いない。そうであれば、増えたフォロワーはみんな男子のはず。属性の性別を確認すればすぐ分かる。


「と言うことは、吉野くんが学校中に言いふらしたってこと?」

「そうよ、それが証拠に……」


 フォロワーの男性比率9割超え、やっぱり見事に男ばっかり。


「これじゃターゲットの女子中生に届いてないよ!」

「昨日までのフォロワー8人だってあたし達と理事長先生、それに神愛ちゃんのお友達ばかりだものね」

「たははは……」


 剛勇女子寮のブログはその日にあった面白い出来事をちょっとだけ脚色してアップしている。昨日の話題は晩ご飯のメニュー、その前の日も晩ご飯のメニュー、そしてその前の日は寮母さん特製お弁当の中身。正直面白いネタなんてそうそう転がっていない。だから全部美味しそうな写真を付けるのだが反応はからっきし。まあ、まだまだこれから頑張って内容を充実させる予定、なのだが……


「やっぱりチトセのセクシーショットが必要だわよ!」

「エロサイトじゃないのよ?」

「クラスメイトがヨダレ垂らして喜ぶわよわよっ!」

「パブロフの犬みたいね」


 そんな写真アップしたら野郎どもにどう使われるか分かったもんじゃない。ああ気持ち悪い――


「あのっ、失礼ですが……」


 と、突然の声。

 振り向くとくるり巻き髪のゴージャスな美少女、赤いカバンを手に僕を見上げている。


「剛勇学園女子寮の方、ですよね」


 はい、と答えながらもう寮は目の前にあることに気がついた。もしかして、ここで待っていたのか?


「そうだけど――」

「初めまして。わたし、秋宮彩夏あきみやあやかって言います。女子寮を見学しに来ました」

「はい?」


 女子寮見学って、そんなサービスあったっけ?

 キララ華麗な麻色の長い髪に真っ赤な薔薇の髪飾り、異様に目立つ派手目な少女は嬉しそうに僕を見る。


「ブログ見てきました、とっても綺麗な寮ですよね!」


 いいとこのお嬢さま然とした立ち居振る舞い、目鼻立ちのハッキリした美少女はキラキラした瞳で僕に迫る。


「ありがとう。だけど見学なんてやってないわよ?」

「ええ~っ? そうなんですか? わたし、受験希望者なんですよ?」


 そんなこと言われても、見学とか募集してないはずだけど……


「いいんじゃない、せっかく来てくれたんだし」


 マナは上目で僕を見ながら微笑む。

 ま、そうだな。

 寮には僕たちしかいないんだし、堅苦しいことを言う必要もないよな。


「そうね、秋宮あきみやさん。一緒にいらっしゃい」



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