第7話
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「はあ~っ」
千歳の大きな溜息、さっきから7回目。
食堂でディナーをいただきながら一体何があったのか問いただすけど、千歳は口を割りません。何でもないわよ、な~んて言うけれど、そんなの嘘に決まってます。どうしてあたしに隠し事をするの? あたしは怒ったりしないのに。千歳のためなら何だってするのに。
「元気ないわね、お姉ちゃん。神愛のとんかつ一切れあげよっか? 脂身のとこ」
「いらないわ、ちょっと考え事をしていただけ」
その考え事って何なのよ? って聞き出したいんだけど、今はサリーも神愛ちゃんもいるし、きつく問い詰める事も出来ません。
「で、何考えてるの、お姉ちゃん?」
「あ、ああ。そうね、部活のこと、とか?」
千歳はあられもない方を見てうそぶくきます。
「アタイの心配? それなら大丈夫わよ。部活狙いはやめたわよ。生徒会に入ることにしたわよ」
「はあ~っ? 生徒会?」
またまた突拍子もないことを言い出すサリサリ。
千切りキャベツをもりもり頬張ったままサリサリ曰く、日本に来てからの1週間、日夜彼女がサブカルの猛勉強したところでは、高校生の放課後は部活動と生徒会活動のふたつに大別されるんだとか。生徒会ってレアな特殊ケースだと思うんですけど、きっと何かのマンガかアニメに感化されちゃったのでしょう。目の前では千歳があからさまに頭を抱えます。
「あのねサリー、生徒会は入りたくても入れるところじゃないのよ」
「分かってるわよ。先輩からロザリオを強奪するわよ」
一体何を参考にしたのでしょう? ともかく大きな勘違いしていることに変わりはなさそうです。
「分かったわ。ともかく明日生徒会を訪ねましょうか。改選の時期とか立候補の条件とかも聞いておきましょう」
「わあ~い、さすがはチトセですわよ~っ!」
茶碗片手に盛り上がるサリサリとは対照的に、チトセは8回目の盛大な溜息をつきました。そうです、やっぱり千歳は隠し事をしています。あたしには何でも相談するって約束したのに――
トントン
「開いてるわ」
食後、思い切って千歳の部屋を訪ねました。
ハーフのキュロットスカートにざっくり羽織ったカーディガン、ラフでも愛らしいコーデですね。あたしは彼女のだらしない格好を見たことがありません。
「どうしたのマナ、こんな時間に何か用?」
「ううん、ちょっと千歳とお話がしたいなぁって」
銀色のノートパソコンを閉じた千歳はあたしに椅子を勧めてくれました。
「そうね、実はわたくしもマナに話しておきたいことがあって……」
やっぱり、と思うと同時に嬉しさが込み上げました。千歳の方から話してくれるんだ! ちゃんと約束を守ってくれるんだ! って。
「なになに? 何でも話して!」
「マナの方からどうぞ」
「ううん、千歳から」
じゃんけんの結果、千歳から話をすることに。
「実はね……」
「……」
「驚かないでね」
「大丈夫よ」
「あのね……」
暫く悩んだ千歳は、やおらとんでもない事を口走りました。
「実はわたくし、西園寺くんとデートすることにしたの」
「ええ~っ!」