U.F.O.
∀・)新年1発目の投稿!!味わってくれい!!
「エリピョン! 次の国語の先生休みだって! 補習だって!」
イラつくあだ名で私の名前を呼んだので背中を向けたまま軽く返事を返した。
気持ち悪いほど馴れ馴れしい。誰か吐き気止めをください。
早くどっかいけよ。お前なんか生きても死んでもこの世は何にも変わらない。
このクラスとかいう空間が滅亡して映画になったとしても、私の名前を残すな。コイツらと同化されて私の名前を奪われるものか。この教室とかいう所に閉じ込められた南瓜共と私を一緒にするな。コイツらほど私は無価値な生き物ではないのだ。
教室にいる奴らはみんなカボチャだ。
小さい頃、どこかの誰かがそんな話をしていた。
人気者とかされている奴はただ人に甘く優しくしているだけの話だ。
そいつらの主張曰く、どうやら世界はこのままで愛に満ち溢れるらしい。
知るか。そんなこと。お前の頭の中身がお花畑なだけだろう。
陰気者とかされている奴はただ徒党を組み、いじけ合っているだけの糞共だ。
そいつらの主張曰く、このまま世界は灰に埋もれて世界は消えていくらしい。
世界が終わるって? 人類が滅亡するって?
知るか。そんなこと。お前達そんなこと本気で言ってなんかないのだろう?
どうせその時が来たら「助けてください」と涙と鼻水を垂らして喚くだけだ。
お前達が偉い人間だと思うな。私でもなれない偉い人間なんかになれると思うな。虫唾が走る。自分も他人も価値がないなんて言うなら早く逝けばいい。
私はどうやら皮肉にも人気者らしい。私は美人で優しいのだとか。
知るか。そんなこと。気がついたらこういう顔で生まれていて、低俗なお前らなんかと横一線に並べられたくないから一生懸命勉強しているだけだ。
お陰様で昼休み、何も口にできず、ただ腹の底を隠して談笑に時間を喰われることすらあった。気持ち悪かった。腹が減ったうえに不細工な奴の事を「可愛いよね~」なんて言い続けなきゃいけないのだから。
吐いたよ。ああ。吐いたよ。お前なんかに私の時間が奪われたことが堪らなく気持ち悪くてトイレで洗いざらい吐いてやったさ。
私は部活なんかしていない。あれほど低俗で下らない余暇はないと思う。
サッカーができるから何? 野球ができるから何?
お前ら、プロの選手が前に出てきたらただペコペコするだけだろ?
お前ら、プロの選手を相手にヘッピリ腰で珍プレー魅せるだけだろ?
格好なんかつけるな。ただでさえ恰好悪いのに余計ダサくて目が向けられないじゃないか。
家に帰ったって私の理不尽な世界は続く。
この私よりロクにいい成績を残せない姉ばかりが讃えられ、優秀な未来があると言われている。アイススケートを始めても転んでばかり。しまいには3カ月もしない内に辞めてしまった。あんな女のどこにそんな未来が待っているというのだ?
腐ってしまうぐらいなら甘やかすな。時間の無駄ほど見苦しいものはない。
私は勉強を終えるとイヤホン越しに聴こえる理想の世界に耽った。
私はクラシック音楽が好きだ。余計な人間の声が入る音楽ほど無駄ではなく、無限の世界が広がっている――
こんな私に4人の男子が「付き合いたい」と言ってきた。
勿論全員断わってやった。一人もそんな価値のある奴はいなかった。
私の放課後という時間をなんという形で奪いやがったのだ。返せ。私の時間を返せ。しかも4日分。
1人目、1日目。
クラスで1番勉強ができるがり勉。ただ眼鏡をかけている印象しかない。何がキラースマイルだ。眼鏡をとってしまえば標準的な日本男児だ。調子にのるな。クソガキが。
2人目、2日目。
クラスで1番スポーツができるとかいう奴。勉強もまぁまぁできるらしいな。他の女子共から面白いとか言われているけども、何が面白いのか全くわからない。
3人目、3日目。
ヤンキーな男児。バンドをやっているらしい。色々悪さをしていることとかで有名だ。刺激的? ふざけるなよ? ここは法治国家だ。それもわからない馬鹿なんかと友達すらなるものか。私の目の前でギターをぶっ壊してバイオリンを手にしたなら、ちょっと考えてやる。即行却下してやるが。
4人目、4日目。
根暗な男子だ。誰もコイツの素性は知らない。いつも机に伏せて寝ているか、宇宙図鑑を開いてニタニタしている。これだけで却下対象だったのだが、意外にもコイツは見込みがあった。
「灰原さん、オレ、宇宙から来たの。今度還るけど、一緒に地球から出ようよ」
「は?」
「灰原さんのお家って大きなベランダがあったでしょ?」
「大きいかどうかはわからないけど……なんで工藤君が知っているの?」
「宇宙船からいつも覗いているからさ!」
「工藤君、あたま大丈夫??」
「ははっ、みんなには転校だと言っているけどね。でも、ずっと見ていて思っていたよ」
「何を」
「灰原さん毎日退屈なのだろ? オレがこれから楽しい毎日を約束する。そうだなぁ、夜中の3時ぐらいに灰原さん家のベランダに出てきてよ! 迎えにいくから!」
コイツ、こんなに喋る奴だったか?
夜中の3時まで私は起きていた。ベランダにも出てみた。
UFOなんて来てなかった。けど、アイツは来ていた。
ベランダに出ていた私を見かけると手を振ってきた。
私も手を振る。すると私の真上が急に光り輝き始めた。
空をみると鉄製のミニカプセルがゆっくりと私の家のベランダに降りてきた。
驚くのはここからだ。工藤とかいうアイツは空中を歩いて私の傍まできたのだ。
「!?」
「ははは、驚いたかい。これは小船だけど、本船は君のお家ぐらいでかいよ?」
「何ていうか……突飛すぎて私には何が何だかわからない……」
「くるならくるでいいし、来たくないならそれでもいいよ。でもこれだけは言える」
「?」
「これは夢じゃない。目を覚まさせてあげるよ」
小さな宇宙船を開いて私に手を差し伸べる彼の微笑みは信じられないくらいにハンサムだった。私は考える間もなく彼と手を繋ぎ小さなカプセルの中へとひきこまれてしまった。
でもこれはきっと本音。私は激しく揺れるカプセルの中で次第に笑顔になれた。
私たちは宇宙まで来てしまったようだ。
工藤は私に微笑むとミラーを指さして話しかける。いつの間にか彼の肌は青色になっていた。そっか、彼は宇宙人なのだ。
「あれが地球だよ。綺麗だろ?」
「うん、とても綺麗……」
「還りたくなったかい?」
「ううん、いい。だって私……」
私はずっと心に閉まっていた言葉を吐きだした。
「だって、私、ちょうど地球の男に飽きたところだもん」
私は私のほうから彼と深い口づけを交わした。
そして私の肌もみるみる蒼ざめていった。でもこれは私が死んだからではない。
私は私から生を授かったのだ。
「オレはロミオ・サンデク・デュペリ。宜しく。エリコ」
「じゃあ私も生まれかわるわ。ジュリエッタ・サンデク・デュペリ」
「そうか。君は面白いな。ジュリエッタ、惑星についたら家族を紹介しよう」
不安なんてものはない。むしろワクワクが止まらないの。
私は小さく遠くなっていく地球を見下ろしてニヤついてみせた。
さようなら。下らない俗物共よ――
∀・)最後の最後まで読んでくださり、ありがとうございました!あまりにも不愛想な灰原さんに苦痛だった御方いるかもしれませんが、彼女はそういう奴です(笑)本年も楽しく執筆していこうと思うので宜しくです!ああ!感想も遠慮なく宜しくね☆