はじまりー6
僕と委員長は、走って部屋へ向かったが、このとにかく広い城であるため、地図が完璧に入っている委員長と一緒でも、辿り着くのに時間がかかる。10分もかけてやっと着いた。
ドアを開けているとそこには、リリーとは別に2人の少女が立っていた。
「おはよう、コウキ君」
リリーは朝から爽やかな笑顔で挨拶してきた。窓から入ってくる陽の光の影響のせいか昨日よりも綺麗に見える。
少し見惚れていたいが、そこは我慢して本題を聞くことにした。
「今日の全校集会で君を紹介したい」
とリリーは言うが、着いた時にいた少し年上のような2人はそれに反対しているのだと言う。言い分としては、
「魔法も使えず、この世界の文字も読めない者をこの学院の新しく入った生徒として、全校生徒の前で紹介するのは、まずい」
と言う。正論だ。それで僕を呼び出しどうするかを考える為に呼んだらしい。僕は反応に困っていた。そうしていると、委員長は、では、魔法の適性を調べてみればいい。と言うと、リリーや反対している2人も納得した。しかし、僕は、魔法について、ほぼ何も知らない。
「僕に出来るんですか?」
そう聞くと、リリーは、
「大丈夫。君には才能がある。」
そして僕は、言われるがままに、自分の前に置かれた、色んな色の石を持ちそれぞれの石に合った物が、出てくるようイメージするように言う。
例えば、青い石なら水、茶色なら土…と。僕はまず青色を持ち、念のため、出てきても水浸しにならないようにキッチンへ向かった。
そして、目を瞑り水が出るイメージをした。その時だった。バシャーっと水が出て一瞬でシンクから溢れるほどの水が出た。リリー以外は、唖然した。しかしリリーは、
「さすがコウキ君、じゃあ他の石もどんどんやってみよう。」
それぞれ、得意な物や苦手なものがあると言うので、他の色もどんどんしようと言っても室内だと危ないので、校庭ですることになった。しかし、校内は広いので、リリーの魔法で外に出た。
委員長は、この魔法に感動している。どうしてか尋ねると、エレファストに、この魔法を使えるものは、リリー1人だけと言う。さすが学院長である。
この後も土、火、植物、金属など9種類のチェックを行なったが、どれもリリー以外は唖然とする結果に終わった。
そして、リリーがあの瞬間移動の魔法をやってみようと言う。この国で1人しか使えない魔法だ。しかし、ダメ元でやってみることにした。
魔法は唱えなければ発動しない。そのため、その唱え方をリリーから教わり、これまでに行ったことのある行き先をイメージする事が必要と言うので、リリーの部屋をイメージしながら唱えてみた。
するとそれは起こった。輪が出てきてそこに入ってみる。そこは、リリーの部屋だった。僕が部屋に最初に来ていた時反対していた2人ももう反対しない。
「今更かもしれないけど、私は、ベルナルド・ソフィアよ。これからよろしくね。この学院で生徒会長を務めているわ、さっきは、ごめんなさい」
「私は、副会長のマフチンヌ・アリアです。よろしくお願いします。さっきは、ごめんね。」
と2人から挨拶をされたので僕も挨拶を返した。
リリーはこの様子を見た後、
「そろそろ時間だから行こっか。じゃぁコウキ君連れてって〜」
と笑顔で言う。
行ったことない。と言いかけたが、よく考えると行ったことがあるのだ。食堂に行く時に、委員長に説明を受けていたのだ。
そのため、その時の風景を思い出しイメージをする。そして、呪文を詠唱すると、また輪が出てきた。その輪を通り講堂へ行った。