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レヴァールの華  作者: 紫音
婚約期間編

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義母との対面

 

 少し気落ちした気分で向かったのは、1階にあるサロン。神琉が扉をノックすると、中から女性の声で了承する旨を伝えてきた。


「……気持ちを切り替えろ」

「え……?」

「アンリのことは、後で聞く」

「神琉様……はい」


 扉を開ける神琉に続いて、フィオナも中へと入る。切り替えなければならない。フィオナは、ふぅと深呼吸をするのだった。

 広々としたサロンにはソファが3つに、テーブルが2つ。更にはピアノも置かれていた。ここにフィオナが足を踏み入れたのは、最初に屋敷を案内されて以来となる。その奥にあるソファに、貴婦人が優雅にティータイムをしていた。

 髪は金髪で目を開いた時に見えた瞳は、藍色。神琉と同じものだった。フィオナと神琉を見ると、その女性は柔らかく微笑む。


「あら、そちらが貴方のお姫様ね」

「母上……」

「まぁいいじゃない」


 カップを置くと、スッと立ち上がりゆっくりと近づいてくる。フィオナは思わず姿勢を正してしまった。


「初めまして、になるわね。神琉の母の彩璃(サイリ)=レイン=レヴィンドライよ」

「は、はじめまして、フィオナと、申します」


 勢い良く頭を下げる。そこで、ふと思い返した。婦人としてのマナーでは、挨拶をするときに腰を折って頭を下げるのではなく、スカートの裾を持ち上げて膝を曲げ、目を閉じながら少しだけ頭を下げるのが正しい挨拶とされている。

 気がついても既に遅い。よりにもよって、間違ってはいけない人の前で失敗をしてしまった。フィオナは冷や汗を流す。この場を切り抜けるような機転の利くようなことを思い付くはずもなく、ただただそのまま固まり続けるしかなかった。


「フィオナ、顔をおあげなさい」

「っ……はい」


 促されるままゆっくりと顔を上げれば、彩璃は怒っている風でもなくじっとフィオナを見つめていた。


「作法については気にしていないわ。いずれにしても、ここでの作法を身につけるべきなのだから、あちらでの作法は一度忘れてもらっても構わないくらいよ」

「えっ……?」

「教え甲斐があるというものね……あとは、女同士の話をしましょうか。神琉、貴方はもう行っていいわ」

「……」


 手で払いのけるような仕草をする彩璃。フィオナが恐る恐る神琉を見れば、呆れたようにため息を吐いているだけだった。


「……フィオナ」

「は、はい」

「俺は執務室にいる。何かあれば呼んでくれ」

「えっと、わかりました」


 そっとフィオナの肩に手を置いてそれだけ告げると、彩璃には何も言わずに神琉はサロンを出て行ってしまった。パタンと扉が閉まると、彩璃から笑い声が聞こえてきた。


「うふふ……相変わらず、面白みのない子なんだから」

「……その、彩璃様」

「フィオナ。貴女は、神琉の妻になるのだからそんな他人行儀な呼び方はしないで頂戴ね。母と呼んでもらいたいわ」


 母。確かに、義理の母と呼べる相手だろう。そこでフィオナは同じようなことを煉琉にも告げられたことを思い出す。煉琉を父と呼ぶのならば、彩璃のことも母と呼ぶのが普通だろう。


「……その、お義母様」

「少しぎこちないけれど、慣れていってもらうとして……まずは座ってお話をしましょうか」


 タイミングよく扉が開くと瑠衣とアンリが顔を見せた。まずは、アンリを彩璃へ紹介すると紅茶とお茶菓子が用意されて、フィオナと彩璃は向かい合う形でソファへ座る。瑠衣とアンリは、少し離れた場所で見守っているようだ。アンリの変わらない態度に、安堵しながらフィオナは目の前の紅茶に手を伸ばす。


「さて……最初に聞いておきたいのだけれど、この一週間、あの子の様子はどうだったかしら?」

「え……? それは、神琉様のこと、ですよね?」

「えぇ。あの子は、皇族としてあまりにも強すぎる力を持ってしまっているから……兄様も心配していたのよ」


 彩璃が兄と呼ぶのは、皇王陛下のこと。皇王陛下は結婚をしておらず、この先もするつもりはないと明言されているらしい。だからこそ、後継者候補であり甥である神琉の様子が気になっていたようだ。

 フィオナが知っていることは多くない。言えることと言えば夜のことだろう。耐えていると言っていた神琉へフィオナが告げてしまったこと。その後のことを思い返してフィオナは顔が火照ってしまい、思わず頬に手を当てた。


「っ~~」

「あらあら……ちゃんと、あの子は貴女を求めたということかしら?」

「ふぇ? え……その」

「顔を真っ赤にして、初々しいわね……そう。なら、あの子は大丈夫ね。身体はどう?辛くない?」


 ブンブンと音がなるような勢いでフィオナは首を縦に振る。正確には辛かった時もあったが、全て神琉が魔法で癒してくれたため、動くのに支障はない。それ以降もいくつか質問をされることになってしまい、首の振りだけで答えていく。まさかこのような話を求められるとは思わなかったというのもあり、フィオナは既に羞恥の限界を超えていた。




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