家族との絆
短めです。
久々の家族との話に花を咲かせていたフィオナ。リンとナンから尋ねられた話は、神琉のことが多かった。
家では何をしているのか。神琉はどういう人なのか。いつも何をしているのか。そもそも魔族とは何なのかなどだ。答えられる範囲でフィオナも対応するが、婚約者といえども知らないことは多い。フィオナが神琉を見るのは、食事と寝る時だけで、仕事をしているのはほとんど見たことがないし、その仕事も何をしているのか聞いたこともない。領主の仕事をしているらしいというのはわかるが、屋敷の外を見て回ることもあるし、屋敷に隣接している訓練場で鍛錬をすることもあるようだ。全て、瑠衣から聞いた話である。
「そういえば、お父さんたちはどこまで知っているの?」
「お前が、婚約式だったか? というのを迎えるにあたってということで、説明を受けたよ。その……神琉殿にな」
「神琉様が?」
婚約式の前に神琉より、自分がフィオナの婚約者であることと、儀式のあらましを説明されていたらしい。命の危険があることも、両親と兄のルークは聞いていたそうだ。
それでもフィオナが婚約式を避けることが出来ないことは理解したという。元々、フィオナの人質に近い形であったこの村を神琉らが包囲したのは、フィオナの出生を知りたかった魔族側の意向である。更に、フィオナの正体が知られれば人間の王は村を滅しに来ることはわかっていた。濡れ衣を村に着せるつもりだったのだろう。それを避けるために、神琉の父は村を襲撃することを決めた。全てはフィオナの血筋を取り込むためだ。フィオナも正確な話を聞いたわけではないが、王族の直系の血筋に近いということは聞いていた。このことは、フィオナの父から聞いたという。それは、目の前にいる父のことを指す。
「お父さん、私が……王族の血を引いているというのは、本当?」
一瞬、目を開いて驚いた顔をしたフィオナの父は、次に肩を落として頭を下げた。
「……黙っていて済まなかったフィオナ。本当だよ。お前は間違いなくグラコス家の血を引いている」
「お兄ちゃんも……知っていたの?」
あの時、父だけでなくこの兄もフィオナを止めていた。ならば、事情を知っていても不思議ではない。ルークは、ゆっくりと頷いた。
「ごめん……」
「ううん。もう、いいのそれは……ただ、聞いておきたかっただけ。私は……ちゃんとわかっているから」
「フィオナ?」
泣くでもなく、フィオナは両親を見て、次にルークを見た。何も知らないまま、実の子ではないと告げられたなら取り乱していたかもしれない。実際、屋敷では混乱して泣きわめいてしまった。今は、聞いていて良かったと思う。
「私ね……初めて聞いた時は、悲しかった。お父さんとお母さんの子じゃないって言われて……お兄ちゃんもリンもナンも、兄弟じゃないって言われて……でも、血がつながっていなくても、やっぱり私にとっては、家族だから……私の両親は、二人しかいないし。お兄ちゃんもお兄ちゃんで、リンとナンも妹と弟。大切なのは、それだけだってわかったから」
「そっか……俺も、お前は大切な妹なことに変わりない」
「ありがとう、お兄ちゃん」
「「フィー姉? ルー兄?」」
フィオナたちが何を言っているのかわからないのか、双子の弟妹は首を傾げていた。その様子に、ルークと顔を見合わせて苦笑する。幼い弟妹は、まだ知らなくていいことだ。大きくなったら、いずれ知ることにはなるだろうから。
話をしているだけではつまらなくなったのか、リンとナンにてを引かれてフィオナは家の外に出る。小さな村の子どもたちも集まってきて、久しぶりにフィオナは子どもたちの相手をするのだった。




