屋敷案内
連続投稿です。短いですが、区切りがいいので。
フィオナは瑠衣の後をついていきながら、屋敷についての案内を聞く。
屋敷は全部で4階。1階は応接室やサロン、リビング、調理室などの家事の類をする場所などが配置されていた。2階では客間、公爵の書斎やレッスン室、談話室などを案内してもらった。3階は使用人部屋と鍛錬室があるらしいが、まだ客人の状態なので3階には上がらない方がいいだろうという瑠衣の判断に従った。4階は公爵家の人々の居室らしい。公爵はもちろん、神琉の部屋もそこにあるという。
「4階……広いですね」
「そうですね。我が国の筆頭貴族でもありますから、他の貴族よりはお屋敷も立派だと思いますよ」
「……そう、ですよね」
「どうかされました?」
歯切れの悪いフィオナに瑠衣は声を掛けてくる。話を聞けば聞くほど、人間の国と何ら変わりはない。想像していたよりも遥かに違う。
「……いえ、人間と同じだなって思ったんです」
「同じ、とは?」
「その……」
本当のことを言えば流石に失礼だと思う。人間が想像していた魔族の国。魔族の人。それがあまりに違い過ぎる。人間が描く魔族は決してこのような屋敷に住んでいるイメージではない。森や洞窟など、人とは違う場所で暮らしているのだと思っていたのだから。貴族社会。それも人間と同じだ。王族がいて、貴族がいて、平民がいて。国はそれで成り立っている。
ここまで、皇王を始め公爵、神琉、燕と瑠衣も皆人間と変わらぬ形をしていた。言葉も通じる。会話も成り立つ。ここまで同じだというのに、なぜ争いが起こるのか、フィオナにはわからなかった。
「怒らないですからおっしゃってください」
怒られるとは思わないが、大分失礼な想像だとは思う。実際の瑠衣たちはフィオナたちを何ら変わりがないというのに、ひどい想像をして勝手に恐れているのだから。それでも聞かせてほしいという瑠衣に、フィオナは口を開いた。
「……巣窟に行くと思っていたんです」
「巣窟、ですか?」
「はい」
瑠衣にフィオナが思っていた魔族のことを話した。そして実際に来てみると何もかもが違っていたことも。瑠衣は茶化すこともなく、ただ黙ってフィオナの言葉に耳を傾けてくれた。
「私には、魔族と人間との違いがわからなくなってきました」
「エルウィン様……まず訂正をさせていただきますが、魔族は魔の力を操る人のことです。血筋という意味では人間とはその……力が通っているということで違うかもしれませんが、姿形は同じで当然です」
同じで当然。魔の力を操る人というだけなのだから。瑠衣は言う。それでもフィオナには腑に落ちない部分があった。
「当然なのですか? それに魔の力、とはなんですか?」
「……わかりました。朝食後にでもお話しましょう。少々長い話になりますので。そろそろ朝食の時間ですし」
「は、はい。よろしくお願いします」
屋敷を歩き回って時間もかなり経っていたようだ。
フィオナは瑠衣に案内されるままリビングへと向かっていった。




