翌朝の遭遇
間が空いてしまいました。
それと瑠衣の弟の名前が間違っていたので修正しました。すみません。
正しくは燕です。
翌朝、フィオナは早くに目が覚めてしまった。アンリを呼ぶのも忍びないので、もってきていたワンピースに着替え簡単に身支度を整えると、廊下に出て散歩をすることにした。勝手に出歩いては何か言われるかもしれないが、部屋でじっとしているよりも気が紛れる。
フィオナの客室は2階の奥だった。それ以外の部屋については特に説明を受けていないためわからないが、アンリは3階の使用人部屋に通されたと聞いている。
「3階が使用人部屋と言うことは、2階に公爵様や神琉様がいるのかな……」
1階には応接室やダイニングといった大きい部屋があった。そこから察するにそういうことだとは思うが、人がいるのかいないのかなんてフィオナにはわからない。それに朝早くに尋ねるのも失礼だ。そんなことを考えながら、廊下を歩いているとふと窓の外に人影が見えた。
「誰か外にいるの?」
窓を覗いてみると、銀髪の青年の姿があった。フィオナが知る限りで銀髪は神琉しかいない。
(こんなに朝早くに、何をしているんだろう……)
やっと日差しが昇ってきたくらいの時間だ。まだ起床には早いだろう。人間の感覚なのかもしれないが、廊下に人がいないところをみると、魔族の国でもそうは変わらないはずだ。それなのに何をやっているのか、フィオナはその姿を見ることにした。
後ろ姿しか見えないのでただ立っているだ。フィオナがその姿を見つけてから既に数分は経っている。だが、一向に動く気配はない。窓の外なので話声も聞こえないし、そもそも見えるのは彼一人だ。誰かと話をしているようには思えなかった。
「ただ立っているだけなんてことないよね」
「何がですか?」
「ひゃっ⁉」
突然背後から声を掛けられ、フィオナは素っ頓狂な声を上げた。振り返るとそこにいたのは、昨日話をした瑠衣だった。
「る、瑠衣さん⁉」
「おはようございます、エルウィン様。何やら真剣に見てましたけれど? ……あぁ、若君を見てらしたのですね」
「えっいや、あの……ちょうど窓から見えて、一体何をしているのかと思いまして」
瑠衣はフィオナの背後に神琉の姿を認めた。その上で何かを納得したように頷いている。フィオナは怪訝そうに瑠衣を見上げた。
「瑠衣さん?」
「あ、えぇあれは若君の日課なのです。まだエルウィン様の立場ではお話することはできませんが、決してただ立っているだけではありませんよ」
「そうなの、ですか? でもずっと動かないですし……」
「うふふ。それほど見てらしたのですね。興味を持っていただけて何よりです」
「え、い、いえ。ち、違います‼ そういうことでは!」
ただ見ていただけ。それ以上のことは何もない。何か変に誤解を与えたようで、フィオナは必至に首を横に振った。
「そこまで否定されるのも悲しいのですが……でもそうですね。今後のことを考えると、その方がいいかもしれません」
「瑠衣さん?」
「……こちらの話です。少し朝食には早いですし、お屋敷を案内しましょう。こちらです」
「は、はい!」
話をはぐらかされたような気がするが、瑠衣はフィオナの返事を聞く前に移動を始めたのでフィオナはその背を急いで追いかけるしかなかった。




