二話~悪魔の天敵?12~
風もなく、音もない。
時間帯が夜というだけで、夢と全く同じだった。
…………こっち……
「?」
誰かの声が、言葉として聞こえた。声からして、女の子だ。
「はぁ。やっぱこうなるのね」
フェリーが落胆にも似た声を出した。でも、心なしかホッともしている、そんな声音だった。
「行こう」
テウも、オレの肩にひょっこりと乗り、ついてくるようだ。
フェリーはオレから二歩くらい空けて、歩き出した。不機嫌そうだった。オレは構わず歩いた。
辺りが不気味なほど静かだった。もしかしたら、何かに守られているのかもしれない。
朽ちかけた大きな扉が、僅かに開いている。まるでオレを――
「ええ、マスターを待っているわ」
フェリーがオレの心を読んだ。
恐らく、フェリーはこの先を知っている。もしかすると、こうなる運命なのかもしれない。オレも、フェリーも。
扉に手を当てた。ガガガガァと扉が軋む。鼓膜が震えた。
「誰かいるのか?」
無意識に夢の中と同じことを訊いた。
徐に眼前が輝いた。女神の像――
『……えた』
頭の中に響く声がある。フェリーの時と同じだ。
「一緒にしないでよ?」
不機嫌な声に、オレはハッとした。
頭の中の声も、嬉々とする。
『……り……さん? ふぇ……ん、なの?』
「しまった……」
『フェリーさんだぁ!』
「ぃい! 大声やめてぇ!」
急に嬉々とした声が耳元、というより頭の中で響いて、鼓膜が破れそうになる。
『あっ……ごめんなさい』
オレの抗議に、声が慌てた。
『えっ、っと、あなたが……わた……』
「え? ちょ、また声が遠くなったよ?」
「マスター、あの子を召喚んであげて」
フェリーの言葉に、オレの鼓動が跳ねた。
この感覚は、フェリーの時と同じだった。
希望と絶望が入り混じる。もう後には引けない。人ではない者を召喚する恐怖と歓喜が、オレの中で血潮と共に脈打っているようだった。
オレは、この女神像の名前を知っている。
アルからもらった『天地史第十三巻』にそれは載っていた。
この女神の名前は――
「ミセリア」
突如、閃光に包まれた。咄嗟にオレは腕を翳した。
「!」
徐々に光が形となる。
それはだんだんと――
「ふぅ……やっとあなたに会えました」
女神の像が、目の前にいた。
フェリーとはまた違う美しさだった。深い蒼の髪は、優しく雲を湛える空のようだ。フェリーの燃えるような金色の瞳とはまた違った薄い金色の双眸は、恥ずかしそうに俯いていた。
「は、はじめまして。不幸の女神ミセリアと申します」
小鳥の囀りにも聞こえる可愛らしい声は、まさに夢の中のもの。
彼女の、ミセリアの言葉は、オレにとって不幸の始まり――
重なるように聞こえる声がある。
「やっと見つけたぜ」
「っ!」
「マスター! 構えて!」
黒い風がまた渦巻く。
「フラグ回収ぅ~!」
オレの身体はまた地から離れた。




