二話~悪魔の天敵?・悪魔の呟き~
太陽に近付き過ぎた英雄は、翼を焼かれ、地に落とされる――
どこかで聞いたことのある伝承だ。
「誰があんな奇妙なもんに近付きたいって思うのかしら?」
赤い猫の姿のフェリーキタースは屋根の上で呟いた。
高い山々に囲まれたこの町ガラーナには、数々の伝承があるらしい。が、フェリーキタースには興味がなかった。
興味があるのは、今のマスターであるダリア・カーチスのことだけだ。
「英雄よりも魔王に憧れる人間がいるとねぇ」
マスターのダリアは、寝ても覚めても『魔王になる』と意気込んでいる。フェリーキタースを召喚できたのも、彼にその強い願望があったからだろう。
フェリーキタースは、決して自分の力を過信しているわけではない。だが、自分の力で生きている者達が狂ってしまうことは重々承知している。だから、滅多なことでは生きている者の、人間の傍にいない。
ダリアに呼び出された時、彼女は本当に驚いたのだ。恐らく、呼び出した本人以上に。そして、今も驚かされている。
「力が、少しずつ漲ってる」
猫の姿でも分かるほど、体内を流れる気が熱い。これを爆発させれば、この町くらいは軽く吹っ飛ばせる。
普段でも真の姿でいられる時は近い。
だが、強大な力は諸刃の剣だ。
「マスター、間違わないでよ」
フェリーキタースは、来客の告げた事実に揺れているダリアの心を感じ取り、静かに呟いたのだった。




