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滅茶苦茶なシスコン剣士の妹件  作者: 魔王
過去よりも未来よりも今を生きる血族たちへ
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滅茶苦茶な因果

「ライ、今から少し時間を貰えない?」

学院の授業が終わった放課後の教室。

ライも荷物を片付けて帰る準備をしているとソレーユから話しかけられた。

「どうした?」

「またあのクレープ屋さんに行きたいな」

「なるほど、デートのお誘いか」

盛大に違うであろう方向に解釈したライにソレーユは「あー」と、ちょっと間の抜けた声が出てしまう。

「まぁ、それでもいいから付き合って」

ソレーユはそれでもいっかと思い適当に返事してしまうのだった。

それはそれとしてその会話を実に面白くなく聞いていた子が一人。

「お兄ちゃん、私は?」

「ごめんなさいアリシア、少しだけお兄ちゃん貸して」

「むぅ〜」

アリシアはソレーユに宥められるも頬に空気を溜めて可愛らしく拗ねてみせる。

そんなアリシアにライ苦笑して「また今度な」と優しく頭を撫でてやる。

「ソレーユは貸ひとつだぞ!」

「わかった」

アリシアはそう言ってライの袖に掴んでいた手を離す。

「じゃあ先にリーナ達と家で待ってるぞ!」

「あぁ、すぐに戻るよ」

アリシアは元気よくライに手を振って教室を出ていく。

その後ろを二人の女神近衛兵が追いかけるように去っていく。そのうち一人は俺らの見知った顔がいたので安心してアリシアを任せることにした。



「それでどうかしたのか?」

場所は変わって噴水広場のベンチに二人は腰掛けていた。

いつものクレープ屋でクレープを買ってソレーユはそれを小さな口で小動物みたくもきゅもきゅと食べている。

ちなみにソレーユが選んだのはチョコミントクレープでライは無難にカスタードクリームだ。

「おいしか?」

「うん、おいしい」

ソレーユ本人がそう言うなら美味しいのだろう。

「ライも食べてみる?」

ソレーユは齧りかけのクレープを俺の目の前に差し出してくる。

「いや、今回は遠慮しておくよ」

「そう」

ソレーユは特別気にすることなくまたクレープを食べ始める。

ソレーユには申し訳ないがライにはチョコミントの良さがよくわからなかった。

ん〜、正直にチョコミントって歯磨き粉でも混ぜて作ってるんじゃ…。

「ライ、それ以上は許されない」

「ん?なにがだ?」

「チョコミントは決して歯磨き粉なんてものと一緒にしてはダメ」

「俺は何も言ってないぞソレーユ」

「顔が言ってた」

「ほんとに妙なところで鋭いな」

考えてることまるまる顔に出てたのか、俺。

「本当なら今からライにはチョコミントの良さを三時間ほどかけて教えたいところ」

「そいつはマジで勘弁してください」

恐るべしチョコミント愛。

ソレーユがそこまでしてチョコミントが好きなのが意外すぎる…、いやそうでもなかったかも。

そういえばソレーユって確かバカ舌だったような…。

「今何かとても悪口を言われた気がする」

「そんなことはない」

よし、もうこれ以上は何も思わないでおこう。これ以上藪つついて蛇出してもその後が怖いしな。

触らぬ神に祟りなしとやらだ。

「ソレーユさんはなんで俺を連れ出したのかそろそろ聞いてもよろしいかい?」

「ん」

ソレーユはグレープの最後の一欠片を口に放り込み飲み込む。

可愛らしくごくんってすると今度は真剣にライを見る。

「この前の課外授業は覚えてる?」

「ダンジョン攻略の事か」

「ライはそこで出会った、魔王の血筋を継ぐ者に」

ソレーユは俺から一片たりとも目を離さずにそう問いつめる。

有無言わせないソレーユの気迫にライは観念して本当のことを話す。

仮面の集団に襲われたこと、その時に自分のことを魔王だと名乗る少女に出会ったこと。


「ライはその子を見てどう思ったの?」

ソレーユは話しを聞いてベンチの背もたれにゆっくりと体を預ける。

ソレーユは最初はライこそが魔王だと思っていた。

だがそれはソレーユと戦った際にライは本当の魔王ではないと結論が出た。

それがまさか他に魔王がいるとは思ってもいなかった。

「わからない、正直初めて会ったようには思えなかった」

リリナと初めて会った時に抱いた違和感はそれだった。

俺は彼女のことを知らないはずなのに、それでもリリナの姿に既視感を感じた。

それと同時になにか大切なことを忘れてるとさえも感じていた。

「ライは自分の親を覚えてる?」

「んや、俺が物心つく前にはもういなかった。あの時にいたのはリーナだけ…」

自分でそう言っていてまたも違和感を感じた。

そう、俺が物心つく頃には帝国の中でリーナと二人で暮らしていた。

それは確かだ。リーナだってそのことは覚えてる。

でもその前は?その前はどこで暮らしてたんだっけ?

「ライ?」

「いや、なんでもない」

「私も、私もライと同じ。パパもママも覚えてない」

「ソレーユは確か…」

「そう、あの村で育ったのは覚えてる。でもどうしてルナと二人ときりで暮らしてたのかその理由がどうしてもわからない」

ソレーユの表情に少し翳りが見えてライもまた何も言えなくなる。

とりあえずそんな表情のソレーユは見たくなくて頭を優しく撫でてやる。

「ん、急に何?」

「なんとなくだ」

「そう」

ソレーユは嫌がることなくライに撫でられる。

こころなしか翳りも消えたように見える。

「問題は私たち自身が自分のことをよく知らないこと」

撫でられながらもソレーユは話を続ける。

「そういえばなんでソレーユは自分が勇者だって分かるんだ?」

「これ」

ソレーユはおもむろに虚空からシュレディンガーを取り出す。

ルナの持つシュレディンガーとは違って雷を帯びていない。

その代わりに鈍い輝きを放っている。

「この剣は勇者の血族にしか持てないの」

「その剣が?」

「うん、ルナが持ってる剣はこの剣のレプリカ。私たちがまだあの村で暮らしていた時にお世話になったおばさんに貰ってその時に気づいた。自分がその血を引き継いでることを。でもそれに気づいた時には遅かった」

「遅かった?」

「その後にカオスが村を滅ぼした」

「なるほどな」

カオスには勇者の村を滅ぼした前科がある。

その話についてはもう既に済ましてあるとソレーユからは聞いていたが…。

「ソレーユはカオスを恨んでいないのか?」

「…確かに私の村は滅んだ。でも誰かが死んだわけではない」

「どういうことだ?」

「あの戦いは勇者滅ぼす為のものだった。それと同時に私たちを救済するものでもあった」

俺にはソレーユが何を言ってるのか理解出来ずに首を傾げる。

それを見てソレーユは一息おいてライの手を取り立ち上がる。

「ここからは長くなるから私たちの家に来て」

「うぉ!?」

こうしてライはソレーユに連れられていくのだった。

11月最後の投稿だぞー!ということで皆の衆元気にしているかー!?

ティルちゃん出番少なくね?って思った方、大丈夫です、ちゃんとティルちゃんまだまだこの後に出てくる予定です。

次回はソレーユやルナがメインで出るかも?

あんまりネタバレも嫌いだから我はここら辺で!では皆の衆サラダバー!



ソレーユ「久々の出番」

ルナ「次は私も出れる!やった!」

アリシア「むー!」

ネア「出番あった、ね」

アリシア「最初だけだったぞー!」

ネア「私は無いもの、ね?」

ティル「言葉だけで作者に圧力をかけるのはやめなさい」

ネア「魔女を敵にすると怖いわ、ね」

リーナ「ネア、めっ」

ネア「むっ、仕方ない、ね」


ライ「次回」

ソレーユ「滅茶苦茶な勇者姉妹のお家でお泊まり会」

ルナ「次回も見てね!」

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