めちゃくちゃな、かぞく
『寝言は寝て言いなさい』
凛と響くその声には僅かな殺気が込められているのがわかる。
それでもライは臆することなく剣と対面する。
『誰が泣いてるですって?私は剣よ、道具よ。そんな感情は持ち合わせてないわ』
「君が本当に道具ならこうして話すことも、そうやって怒ることもできないと思うんだけど?」
『余程殺されたいみたいね?』
剣はライを刺した時と同じように空中にふわりと浮かぶ。
もちろんその切っ先はライに狙いをつけている。
「違うよ、君の友達になるためにここまで来たんだ」
『……あなた馬鹿なの?』
「よく言われる」
ライの予想外の言葉に剣も少しその切っ先を下に向ける。
まるで人が呆れた時にとる反応とよく似ている。
『そんなものいらない、そもそも私は貴方たちが大っ嫌いだと言ったはずよ』
「他の人間は嫌いなままでも構わないから僕のことだけは好きになってもらえたりしないかな?」
一瞬、ライが何を言っているのか理解出来ずに数分ほど剣がフリーズする。
『……もう一度言うわ。あなた馬鹿ね』
「馬鹿はお嫌い?」
『話の通じないバカはね』
「じゃあよかった、僕は話が通じる馬鹿だから」
『馬鹿は等しく馬鹿よ、このバカ』
剣にそう罵られるがライはそんなことを気にすることなく優しく微笑みかけるだけだった。
そんな滲み出るようなライの優しさが剣にとってはいささか居心地が悪く、自然と謎のイライラが募っていく。
『一度見逃されたから殺されないと思ってるのなら大間違いよ』
「そんなこと思ってないよ」
『私が魔剣だとわかったから、だから私を取りに来たんでしょ』
「え?」
至って剣は真剣だ。
それでいてなぜこの少年が自分の元に戻ってきたのか。それが考えられる唯一の可能性を出して問うたのだが…、またまた予想斜め上の反応をされて黙ってしまう。
ちょっとして逆にライの方から「魔剣なの?」と問い返されてしまい再び黙り込んでしまう。
『とぼけてるの?』
「至って真剣だ」
『じゃあ何故ここに来たの!本当の理由を教えなさい!』
「最初に言った通りなんだけど」
『あぁもぅ!あなたと話していると訳が分からなくなるわ。これだから人間は大っ嫌いなのよ!』
「人間じゃないなら好きになってくれるの?」
そんな少年のふとした発言にじたばたしていた剣は動きを止める。
「どうやったら君をここから連れ出すことが出来る?」
『連れ出す、ねぇ。私を使役したいわけでも、ましてや奪いに来たわけでもない、ね。それにその言い方だと私がここに囚われてるように聞こえるのだけど?』
「違うの?」
『違うわよ、私はここに居たくて居るの。あなたたち人間が近づかないこの森にね』
「じゃあどうしてこんなにも泉は溢れているの?」
『そんなの自然とできるに決まってるじゃない。そこまで馬鹿だとは思わなかったわ』
相変わらず蔑んでくる剣に対してライは躊躇いなく泉に近づく。
そのまま少しかがみ両手で泉の水を掬う。
その色は掬っても変わることなく深い紅色をしていた。
『何をする気?』
ライの奇行に思わず訝しむ剣。次にライがとった行動に剣はあまりの驚愕に空中から落ちてしまう。
『あ、あなたなにを…』
ライは両手で掬ったおおよそ水とは呼べないそれを躊躇いなく口に運んだのだ。そのままそれを飲み干してしまう。
「ん〜、やっぱりね」
『なにがよ』
「この泉の水はしょっぱい」
『はぁ、馬鹿すぎて話にならないわ』
「つまりこれは君の涙だ」
『……ばっかじゃないの、そんな得体の知れないものを口にして。本当に死んでも知らないわよ。周りの自然がなんで枯れてるのかとか考えなかったの?もしかしたら、いやもしかしなくてもこの泉の水だって毒水かもしれないのよ?それをなんの躊躇いもなく飲むんじゃないわよ』
「んー、でもこの方法以外に君の涙を拭ってあげるやり方がみつからないから」
少年はケロッとした顔でそう剣に返すのだった。
(なにがしたいのよ、全くもってわけがわからないわ。普通なら二度とこんな森に入ったりしないはずなのに。それに一度、私に刺されてるのよ?こいつは恐怖を知らないの?いくらまだ小さいからってそんなことがあるはずがない)
剣は少年の本当の目的がなんなのかをずっと考えていたがあまりの奇行に全て吹き飛んでしまった。
(一体何が目的なの…。今までここを訪れた人間は私の力を求めて来たわ。一人として例外なんてなかった。なのにコイツは…!)
動かなくなってしまった剣にライは少し考えて立ち上がる。
「本当の目的を教えてあげる」
そうライの放った言葉に剣はハッとしたように再び空中に浮かぶ。
『ふ、ふふ、ついに言う気になったわね。言ってみなさいよ、本当の目的を』
剣は先程よりもライに近づいた位置で留まる。
ただしその切っ先は地に向いていた。
「僕の家族になってほしいんだ」
『…………は?』
想像すらつかない少年の言葉に今度は完全にフリーズした。
少しでも力を望むようなことを言えば即刻斬り捨てるつもりだったのに、その気さえ削がれてしまうほどに。
「そしたらもうこんなところに一人でいる必要はなくなるでしょ?」
『あなた、言葉の意味をちゃんと理解してる?』
「もちろん」
『誰を家族にしたいって?』
「今こうして僕と話している君だよ」
『あなたは他の人間に剣が家族だと言い張るつもり?』
「もちろん」
『…いいわよ、あなたの目的がそうだと一応は信じてあげるわ。けど、家族になんてなるつもりはないわよ。そもそも私は人間が…』
「大っ嫌いなのはもう知ってるよ。だから君に好きになってもらうにはどうしたらいいのってずっと聞いてる。まずは君に僕を認めて貰えないと家族には程遠いからね」
剣の言葉をさえぎってライはその答えを返す。
その返事に剣は少しだけしり込みしてしまう。
少年の本気が伝わってくる。この人間は本気でそう言ってるのだと。
やがて考えることを諦めた剣は一つ条件を出すことにした。
『わかったわ、ならこうしましょう。あなたが毎日ここに来てこの泉の水を全て飲み干したら家族にでもなんにでもなってあげるわ』
「ほんと!?」
『えぇ、ただしそれができなかったら。一度でも来ない日があったならその時は、私自ら貴方の命を奪いに行くわ。それでいいかしら?』
「あぁもちろん」
『正気の沙汰とは思えないわ、けど約束は成立ね』
「必ず君をここから連れ出すよ」
『約束が守れたなら、その後は好きにしてもらっていいわよ』
その剣の言葉にライは今度は頭から泉の水に突っ込むのだった。
☆
ティルは一息ついてティーカップを静かにテーブルに置く。
「バカは死んでも治らないとは、昔の偉人もよく言ったものね」
「えぇ〜俺ってそんなに馬鹿?」
反対側に座っているライも飲み干したティーカップを置きティルの言葉にリアクションする。
「私と出会った時からずっとね」
「むしろあの頃は頭がいいって帝国では評判だったんだけど」
「それは見る人達も馬鹿だったのよ」
「それは手厳しい」
ライは苦笑して背もたれに体を預ける。空を仰げば夜空には綺麗な星空がキラキラと輝いていた。
それにつられてティルも同じように空を仰ぐ。
「こんな綺麗な夜空はあの森じゃ見れなかったわね」
「霞がかかったような場所だったからな」
「ライ」
「どうした?」
「一回しか言わないからよく聞きなさい」
「?」
ティルは一度深呼吸してまっすぐにライを見つめる。
ライもそんなティルにまっすぐと見つめ返す。
するとティルはちょっと照れたように頬を桃色に染める。
それでも視線を逸らすことなくティルはライを見つめたままその桜色の唇を開く。
「私を連れ出してくれて、家族にしてくれてありがとう」
元気にしているか人間どもー!
今日は特に何も無いな。
はやく続きを書きたいとは思うがなかなか言葉や表現が難しくて勉強しながらでなかなか進まないが気持ちと勢いだけでどんどん書いていくぞ!
ということで今日はここら辺でサラダバー!
ライ「あの不意打ちはアカンでしょ」
ティル「なにがよ」
ライ「可愛すぎ死ぬ」
リーナ「ティルは、もともと、かわいい」
ティル「リーナまで」
ルナ「ティルちゃんって結構あざとい?」
ソレーユ「昔からそう」
ティル「殺すわよ。ていうかソレーユに関してはあんまし話したことないじゃない」
ソレーユ「ぷい」
ティル「可愛くそっぽ向いてもダメよ」
ルナ「というか私たちの出番なさすぎでわ!?」
アリシア「そうだそうだ!」
ネア「前にも見た光景、ね」
アリシア「ネアだってそう思わないのか?」
ネア「むむぅ」
ティル「不満なのはわかるけど今回は我慢してちょうだい」
アリシア「むぅー!」
リーナ「むぅ」
ネア「…む」
ソレーユ「ぷくぅ」
ルナ「ぷくぅ〜」
ティル「みんなしてやめなさい」
ネア「次回」
アリシア「滅茶苦茶な因果」
ソレーユ「次回も見てね」




