滅茶苦茶なティータイム
この投稿から心機一転しまして、毎月投稿から毎週投稿に切りかえます。
ですので毎週日曜日の18時にこれからは投稿していきます。
読んでくださっている皆様、どうぞこれからも『滅茶シス』でライ達の様子を楽しんでいただければ幸いです。
「すぅー、すぅー」
「むにゃむにゃ」
「ん、んぅ〜」
可愛い妹たちが寝静まった真夜中にライはふと目を覚ました。
そのままライはリーナ達が起きないように細心の注意を払いながらベッドから出る。
三人ともぐっすり眠っているのかライが離れたことに気づくことはなかった、ただ一人を除いては…。
ライは物音を立てないように部屋から出てとある場所に向かうのだった。
向かった先はいつも皆で日向ぼっこをしている城の庭園。
今は真夜中なので陽の光が刺すことはなく、代わりに月の光が庭を照らしていた。
そんな庭にはテーブルと二つの椅子が用意されておりテーブルの上にはお茶とお菓子が用意されていた。
二つ用意されていた椅子のうち一つには既に先客が座っていた。
「私はいいと断ったのだけど、どうしてもと言うことを聞かなかったわ」
そこに座っていたのはライの最愛の妹の一人であるティルだった。
ライはティルに促されるまま反対側の空いてる椅子に腰をかける。
「ここのメイドはやり手よ」
「ティルがそう評価するなんて珍しいな」
ティルはそうボヤくが満更でもなさそうだ。
むしろ先程から優雅に紅茶を嗜んでさえいるしな。
俺もそれにあやかりひとくち紅茶を啜る。
んー、アップルティーの程よい甘さがまたいいな。
「紅茶を入れる技術もそうだけどお菓子もまた美味しいわよ」
ティルにそこまで言わせるここのメイドさんたちは凄いな。
今でも人嫌いが変わらないティルは人がやることなすこと全部辛口評価になるのだが…、そんなこの子にここまで褒めさせるこの国のメイドさん達はプロ中のプロなのだろう。
まぁ、女神様がなかなかわがままな部分があるからかもだけど。
アリシアに言ったら怒られるだろうなぁ。
俺は目の前においてあったチョコシフョンに手をつける。
これもまた俺とティルが好みそうな甘すぎないベターな味わいで紅茶とよく合う。
「久しぶりね、こうしてゆっくりお茶会が出来るのも」
「最近は色々なことがあったからな」
こうしてティルと二人きりに夜でお茶会するのは昔からの習慣だ。それこそ月に必ず一回はしていた。
ティルはそれが毎月の楽しみにしている。
その日が近づくにつれて鼻歌を口ずさむぐらいに。
「二人、いや四人も新しく家族ができたのだから当然ね」
そんなティルの言葉にはどこか少し棘があった、拗ねてるようなそんな感じの。
「あー、自分でやってて言うのもあれだが割と凄いことしたなーって思ってる」
「凄いことどころか世界を揺るがす程の大事なのだけど」
「ですよねぇ〜」
「まぁ、世界が騒ごうが何しようが私にはあんまり関係の無い話ね」
そう言ってティルは椅子から立ち上がりテーブル越しにライに急迫する。
そのままそっとティルは自分からライに口付けをする。
そんなティルからはほんのりと桃の味がした。
なるほど、ティルのはピーチティーか。
「あなたがこうして私の傍に居る限り」
月夜に照らされる彼女の神にも勝る微笑みはライの心臓の鼓動を速くする。
妖艶とも神秘的にとも捉えられるティルの表情にライはより一層と惚れ込んでしまう。
「俺はティルやリーナ達の前から消えたりしないよ」
俺の返事にティルはゆっくりと椅子に座り直す。
そのまま俺を意地悪そうな顔で見つめる。
「そうね、消えたりなんかしたら必ず私が貴方の心臓を貫く契りだもの」
「それはそれで本望かもしれないと最近気づき始めた」
「ばーか」
クスクスと笑うティルは闇夜の月に照らされてとても、とても可愛く見えた。
ほんと、ティルはよく月が似合うな。
妹たちはみんな可愛すぎてお兄ちゃんとしては困りものだな。
「それで女神も魔女も、ましてや勇者にまで家族にしちゃったお馬鹿さん、次は誰を家族にするつもりかしら?」
「あの子、リリナのことを言ってるのか?」
「えぇ、このまま順当にいけば次の妹候補はあの子じゃないかしら?」
「怒ってる?」
「怒ってないわよ、ただ貴方はいつも背負いすぎなのよ。色々と」
「そういうティルの優しいところ好きだよ」
「そんな口車には乗ってあげないわよ」
「事実を口にしたまでだ」
「はいはい」
素のティルなら赤面して恥ずかしがるはずなのに軽く受け流されてしまった。
「ライ、私は何があっても貴方の傍から離れないから」
そう真っ直ぐにティルはライを見つめる。
その真紅色の瞳にはどこか強い決意さえ感じさせる。
「何があっても、ね」
「何があっても、よ」
ティルはライから視線を逸らすことなくそう宣言する。
「最初に言っておくわ、止めても無駄よ」
「兄の言うことはなんでも聞いてくれるんじゃなかったのか?」
「反抗期よ」
「困った反抗期もあったものだな」
ライは何を言っても聞く気がないのがハッキリとわかったので肩を落とし背もたれに体を預ける。
「可愛い妹の反抗期なんだからしっかりと可愛がりなさい」
「そうだな、それなら今度の神休日に街に出かけないか?」
「二人で?」
「もちろん、この前の魔女騎士の時に約束しただろ?」
「覚えてたのね」
「大事な妹との約束を俺が忘れるなんて天と地がひっくり返ってもないな」
「いいわ、それで手を打ってあげる」
ティルはそう区切ってピーチティーに口をつける。
そこでほっと一息つくティルは大人びて見えて少しドキッとしてしまう。
ティルは別の意味で俺の心臓を貫いてるな。
俺もそうアップルティーに口をつけるが気のせいかさっきよりも甘く感じた。
「ねぇ、私とライが初めて出会った時のこと覚えてる?」
「もちろん、それこそ大事な妹との初対面を俺が忘れるわけないな」
「ねぇ、少し昔の話をしない?」
「昔の話か」
「そう、まだ私がただの魔剣だった時の頃よ」
「懐かしいな、あの頃のティルもまた可愛かったなぁ」
「バカね」
あの頃、とはティルと初めてあったのは俺がまだネアの帝国で暮らしいていた時の話だ。
その頃の俺はまだ右も左も分からないガキだった。
そんな時に俺とティルは帝国から少しはぐれた森の中にある泉で出会ったのだ。
月投稿とはいえ1ヶ月以上過ぎてしまいすみませんでした。お久しぶりだな皆の者!
ということでこの5章のメインヒロインはお察しライの愛妹の一人、妹の中では皆のお姉さんポジションであり魔剣としても最強の力を誇るティルちゃんだ!
今回の章は主にライ達の過去に触れていくぞ!
それと前書きにもお知らせしておいたがこの投稿を機に毎週この曜日、この時間に投稿していくぞ。
仕事もだいぶ余裕が出来たので頑張ってこちらを進めていこうと思います。
もしかしたら他の作品も手直して続きを書くかもしれません。その時は活動報告の方にてお知らせします。
ということで今回はここまでだな、それでは皆の者サラダバー!
リーナ「むぅ」
ティル「どうしたのよ」
リーナ「ずるい…」
ティル「なにがかしら?」
リーナ「おちゃ、かい…(ぷくぅ」
ティル「そ、そんなにふくれなくてもいいじゃない」
リーナ「や…」
ティル(珍しく駄々こねてきたわね、この子…)
リーナ「じー」
ティル「わかったわよ、今度はちゃんとリーナも呼ぶから。そんなに睨まないで」
リーナ「ん♪」
リーナ「じ、かい」
ティル「滅茶苦茶な魔剣」
リーナ「次回も、みてね」
ティル「見ないと心臓を貫いてあげるんだから」




