滅茶苦茶なおかえり
あれからみんなで学生特別カレーを食べたあと、両学院の代表のポル先とラーザル老師が簡単に締めの言葉を送りその場で解散となった。
もう既に周りは暗く、街頭の光が帰り道を優しく照らしている。
そんな夜道をフィナクラスとアリシアクラスの生徒たちがバラバラに帰り始める。
「じゃあまた明日、ライ」
「おう、また明日」
ルナがそう軽く手を振ってくる。
みんなが別れの言葉を告げて帰る中、またライ達も皆と別れの挨拶をしていく。
そこにルナの隣にいたソレーユがジト目で俺の事を睨んできた。
「今度はトラブルに巻き込まれないように」
「ソレーユもトラブルのひとつなんだけどなぁ」
「なにかいった?」
「いいえ、なにも」
俺の余計な一言にソレーユは更に睨みを利かしてくる。
挙句の果てには背中に回してる手にシュレディンガーを握っている。
柄が丸見えになってますよ!てか、もうわざと見せつけて威圧するのやめません?あなた達姉妹がそれをやるとシャレにならないから!
「じゃ、ソレーユもまたな」
「えぇ、また明日」
何とか無事に気を収めてくれたソレーユはシュレディンガーをしまい、ライに別れの言葉を交わして背を向ける。
その横をルナが楽しそうに歩くのだからこちらも少し嬉しく思ってしまう。
ああいう姿を見るとほんとに仲がいいんだなって思う。
そんなルナたちの姿を微笑ましく見ていると袖を誰かに引っ張られる。
「にぃ」
俺の袖にはちょこんと両手で可愛らしく摘んでいるリーナがいた。
あぁもぅ、仕草の一つ一つが可愛いなぁ!
「俺たちも帰ろうか」
「んっ」
いつもの癖でリーナの頭を優しく撫でてやり、手を繋いで自分たちの家に帰るため歩き出す。
「今夜は月が綺麗ね」
「お?」
「ん、てぃる」
帰り道の途中、暗いこともあってあまり人気のない道に入った時にティルが人の姿で俺たちの前に現れる。
そんなティルに俺はリーナと繋いでる手とは逆の手を差し出す。
「別にそんな気はなかったのだけど…」
そんなことを言いながらもティルは差し出されたライの手を握る。
「てぃる、も、きょうは、ありがとう」
「いつものことよ」
「よし、よし」
リーナはライとの手を離さずにそのままティルの元へと移動する。そして空いたもう一つの手でティルの頭をナデナデする。
「もぅ、なによ。くすぐったいわ」
そう言いつつもティルはリーナのナデナデを拒まずに受け入れる。
「あなたからは何かないのかしら?」
ティルはリーナのナデナデを終えて今度は俺の事をじっと見る。
少し口の端をにやけさせてそうからかってくる。
そんな余裕顔のティルに俺は少しだけ意地悪する。
「そうだな〜、両手がふさがってるし何もしてやれないな〜」
「ふーん、そう」
そんな俺の返事にティルは素っ気なく返すのだった。
というか、そう言っても二人とも手を離す気はないのかむしろギュッと強く握ってくるのだった。
「なーんてな」
俺はティルと繋いでる方の手を強引に俺の方へと引っ張るとその可愛い頬にキスをする。
そんな不意打ちにティルはしてやられたと頬を膨らませるのだった。
あー可愛い。
すると、逆の方の手が引っ張られる。
「にぃ、わたし、は?」
「もちろん、リーナにもだよ。今日はありがとな」
「んっ」
リーナにも優しくそう感謝の意を込めて頬にキスする。
リーナは少しくすぐったそうにしていたが嬉しかったのか少しだけ口角があがる。
そうやってイチャイチャしながらライ達は3人横並びになって仲良くお家にかえるのだった。
「「ただいまー」」
そう言ってお城の門をリーナと二人で通る。
すると門番の女神近衛兵が椅子から立ち上がり敬礼をする。
それに返すように俺とリーナも敬礼をする。
そうして奥の方に進んでいくとお城の扉の前、そこにはアリシアとネア、それにグーデンが立っていた。
アリシアは俺の存在に気づくと迷わず一直線にダッシュしてくる。
「おにいちゃぁぁん!」
その勢いを殺さずにアリシアはライに飛びかかる。
ライはそんなアリシアをティルが戻ったおかげで空いた手で何とかキャッチする。
「おつかれさま、ね」
アリシアの後ろにはゆっくりこちらに歩いてくるネアとグーデンがいた。
ネアは至って落ち着いてるように見えるがソワソワしてるのが丸わかりだ。
グーデンは少し心配するような、そんな顔でライを見ていた。
「それで、この時間じゃ。話しはあらかた聞いておるが…、まぁ無事なようじゃな」
「まぁな、それに俺がこの子達の前でヘマなんかしないさ」
「まぁ、詳しい話は明日にでもしようかのぅ。今日はもう休んでいいぞ。ライ・シュバルツ」
「うぉ?意外に優しいのな」
「お前が普段からちゃんとしてればもっと優しいがのぅ」
「うぃうぃ、じゃあありがたく今日は休ませてもらうよ」
「いちいち反応が腹立つがまぁよい、風呂も湧いておるから好きにせぇ。少しすればわしも帰るからな、何かあるならそれまでに書室にこい」
なんだかグーデンはオカンみたいなこと言うんだな。
グーデンはそれだけ言って城の中に戻っていった。
ふーむ、少し疲れてるように見えたのは気の所為だろうか?
まぁ、その原因は俺で間違いないだろうけどな。
「お兄ちゃんが無事で何よりだ」
「そう、ね。けど…」
アリシアは満面の笑顔でそう俺を労わってくれる。
けれどネアはなにか思うところがあるのか少し含みのある言い方をする。
「いえ、やっぱりなんでもない」
ネアは途中まで言いかけてたのをやめて口をつぐむ。
「そうか」
俺はそんなネアの頭を優しく撫でる。
やはりまだこういうことには慣れてないのか頬を朱色に染めて俯く。
「リーナ、アリシアと一緒に先にお風呂に入っててくれ」
「ん、わかった」
リーナは素直に俺の言うことを聞き入れてアリシアの手を掴み城の中に入っていく。
アリシアは「待ってるからなー!」とリーナに手を引っ張られながら連れていかれるのだった。
この場にはネアと俺だけが残った。
「それでネア、さっきの事だけど…」
「あの子にあったのね」
俺の行動にネアは察したのか俺の質問が言い終える前にそう答える。
やはり何か知っているのか…。
「そう、こんな近くにいたのね」
「ネアは会ったことあるのか?」
「一度だけ、ね」
「あの子は自分のことを魔王だと言っていた。あれはどういうことなんだ?」
「その通り、彼女は正真正銘の魔王。あなたと同じ魔王の純血ね」
「ちょちょちょ!ちょっと待て!今のは…」
ネアから思いもよらない発言に俺は珍しく取り乱す。
「これ以上は私の口からは言えない」
ネアはそう言って俺の唇に自分の人差し指をピタリとくっつける。
流石にそんなことをされてはネアにこれ以上のことを聞くことは出来なかった。
「ふふ、私達もお風呂に行きましょう。アリシアはあなたの帰りをすごく待っていたから、ね?それに…」
わたしも…とネアはほんとに誰にも聞こえないぐらいの声量で付け加えた。
それが聞こえていたのかいなかったのかライはにこっと微笑んでネアの頭をグリグリと撫でてやる。
そうして、二人も城の中に帰っていくのだった。
お久しぶりだなー人間ども!この暑い中仕事でダウンしそうだけど頑張って続き書いてくぞー!
あとちょっとしたお知らせなのだが第1章の方でちょっとしたミスで1話丸ごと消してしまった部分があるので新しく書き直しました。それに加えて新しく話を追加する予定なので気になった方はまた見てくれると嬉しいぞ!
ということで今日はここら辺でサラダバー!
アリシア「はぁ〜やっと出番だと思ったら少なくないか!?」
ネア「まぁ、メインヒロインはあの子だから、ね」
リーナ「ぶい(両手でVポーズ)」
ティル「あなたそんなことする人だったかしら…」
リーナ「てぃる、も、やる?」
ティル「やらないわよ」
リーナ「どうして、も?」
ティル「そ、そんな目で見てもやらないわよ」
アリシア「じゃあ私が代わりにやってやるぞ!ブイ!」
ネア「愉快、ね」
ティル「ほんとよ」
アリシア「次回!」
リーナ・ティル「滅茶苦茶なエピローグIV」
ネア「これで一区切り、ね」




