滅茶苦茶なチーム分け
「いいか、ダンジョンに入る前にまずはチームを作ることだ。先日も言ったようにダンジョンは本来一人で入れば生きて帰ってこれるような場所じゃない。それは俺が保証しよう。まぁ、何人か例外はいるがそれは気にするな」
昨日のダンジョン攻略決行の知らせの次の日、改めて教室に集まったアリシアクラスのみんな、それと別ではあるがフィナクラスのみんなも教室で似たような説明を受けているだろう。
「まぁ、チームについてだがお前らの好きなように組め。それぞれ相性もあるからな。学院の行事とはいえダンジョン攻略を許される中級生はそうそういない。それほどにお前達は強いということだ。だからといって油断は…。ふっ、お前達に限ってそれはないな」
ポル先はあらかじめ言うようにと指示されていた注意をみんなに伝えていくが、途中で言葉を切ってその心配はないと悟った。みんな、目つきが昨日とは違い、いつになく真剣そのものだったから。
「まぁ、誰かが困っていればそれを助ける。助ける人数に上限なんてない。この国の言葉だ、そして、それはお前達のことでもある。心してダンジョン攻略にかかれ。若き騎士達よ」
「「「「はい!!」」」」
ちゃんとした返事にポル先の心配事は全部吹き飛んだ。
場所は変わって訓練場。
ここで一旦、アリシアクラスとフィナクラスが合流する。総勢二百名近くの生徒がこの訓練場に集まった。きちんと、整列して目の前にいる二人の先生へと目を向ける。生徒達の周りには大勢の女神近衛兵が立っている。彼らは女神近衛兵の中でダンジョン攻略をメインとして活動するDCTの人達だ。
「よし、全員集まったな」
「はい、こっちもみなさん揃ってます」
ポル先とレアーナ先生がお互いに生徒の確認を行っていく。それぞれ確認が終わってみんなの前へとポル先が立つ。
「いいか、これから行くのはダンジョン。本当に生死をかける場所でもある。そのため、みんなにはそれぞれDCTの方々が一人ずつ付くことになっている。彼らはみんな精鋭兵ばかりだ。きっと何かしらの手伝いになるだろう。それに、今から行くダンジョンのことはほとんどと言っていいほど知り尽くしている。困った時には遠慮なく頼れ」
ポル先の言葉に周りで立っていた女神近衛兵たちが一斉に敬礼をする。それを確認してポル先が話を続ける。
「今回みんなに与える課題は5階層にいるフロアボスと呼ばれる魔物を1チーム狩ってもらう。未だ、ダンジョンの魔物がどうやって増えているのかはわからないが一つ確かなことなのは5日以内に魔物は同じ場所にまた出現する。これはみんなも授業で習ったとおり、リポップという現象だ。だから、魔物がいなくなることは無い。ダンジョン内では十分に気をつけることだ。ちなみにだが、フロアボスに関しては他のチームと協力して倒しても合格だ。
説明はこれくらいだ。なにか質問があるやつはいるか?」
ポル先の言葉を聞き逃すことなくみんな聞いていた。今回のダンジョン攻略の説明にみんな疑問はない。ポル先はそれを確認してもう一つ重要なことを伝えた。
「今回、あまりにもお前達が強いからということで特別にだ。今から指名された奴にだけ後衛である魔法使い、その生徒達を付かせる。しかし、今回はダンジョンだ。魔法使いを連れていくか行かないかはお前達の判断に委ねる」
魔法使い、それは前衛職と呼ばれる俺たち騎士とは違う職。騎士は主に先陣切って魔物との肉薄戦になる。だが、魔法使いは違う。魔法使いは言葉のとおり魔法のスペシャリスト。前衛で戦う騎士のサポートをするのが魔法使いだ。なにぶん、魔法使いは体を鍛えることは一切しないので体力面がとぼしい。そんな魔法使いを守るのが騎士の役目。ようは持ちつ持たれつだ。まぁ、ネアやアリシアは魔法を使うがあれは魔法ではない。神にしか扱えない力。しかし、それを例えることが出来ないから俺達は神魔法と呼んでいる。
「それじゃあ今からそいつらの名を呼ぶから、呼ばれた奴は自分で判断しろ。自分の力量をどこまで信じられるか、どこまでが限界なのかを把握すること。そして、自分にとってそれが大丈夫なのかという判断力も必要になる。これはその前座だと受け取っておくことだ。じゃあ名前を挙げてくぞ。
アリシア様クラス
ライ・シュバルツ
アベルト・バートナー
アグナス・ベルフォード
エレナ・カトラス
以上の四名だ。次はフィナクラスだ。レアーナ先生」
「はい。では僭越ながら。
フィナ様クラス
グラウ・ディオス君
ファルシス・フェレウス君
ルウス・アーカディア君
シルヴィア・ツヴァイさん
の以上の四名になります」
「今呼ばれた八名の生徒は決めろ。守れる自信があるか、ないか」
ポル先は生徒にその判断を任し答えを待つ。みんな、それぞれ考えている中で俺は即答した。
「俺は構わんぜよ」
「そうか」
そんな俺の返答にポル先は何事もなく返す。それはただ単に俺に信頼を置いてくれてるからだ。だから、何も心配することはなく答えてくれたのだろう。
「俺もいいぞ」
次に答えたのはグラウだった。意外にも。けれど、最近はなんだかフィナがきてグラウは角が取れた気がする。昔だったらきっと一人で入ってるだろうに。そんなグラウの成長に俺は少しニヤニヤしてしまった。
「わかりました、グラウ君。おまかせしますね」
「あぁ」
レアーナ先生もグラウの実力は知っているのか安心して任した。
しかし、それ以降みんな答えに困っている。果たして自分が守れるのか。それを成すだけの実力はあるのか。
次に答えのはアベルトだった。
「先生、俺とファルシスとで一人の生徒を守るっていうのでどうですか?」
「なっ!?」
アベルトが発した提案にファルシスが驚き、ポル先は笑顔で答えた。
「それでも構わない、守れる自信があるのならな」
「だそうだ?」
アベルトは少し離れたところにいるファルシスにそう問いかけた。最初は驚きもしたもののファルシスはその条件を飲んだ。
「任せる」
「とのことで、俺達はそれでお願いします」
ファルシスの了承も取れたことでアベルトはそうポル先に言う。
「わかった、そうしよう。任せたぞアベルト」
「お願いしますね、ファルシス君」
「「はい!!」」
ポル先もそれを承諾する。
それぞれのクラスのリーダー格が決めたことで残りの四人も、吹っ切れたのかそれぞれ答え始めた。
次に答えたのはアグナスだ。
「ありがたい話なんだろうが俺は降りさせてもらうぜ」
「無理そうか?」
「あぁ、デュアルムだってまだ完璧に扱えてないのにその力でちやほやされてた調子に乗っていた俺だが、この前の試験試合ではっきりと目が覚めた。俺にはまだ守れねぇよ」
「そうか、わかった。鍛錬を励めよ、アグナス」
「あぁ!」
次に答えたのはルウス。
「とても嬉しい評価ですが自分も降りさせてもらいます、レアーナ先生」
「そうですか、よかったら理由を聞いてもいいかな?」
「単純な話ですよ。まだ僕には誰かを守れるほどの力がない。けど、だからこそこのダンジョンで試してみたいんです。選ばれたということは僕は一人でもダンジョンに入ってもいいんですよね?」
「それは、そうですが…」
「なら、僕はそうしたい。力をつけるために」
「…わかりました。ただし、なるべくみんなの近くにいることが条件です。いいですね?」
「はい!」
残りのエレナとシルヴィアは。
「すみません、私も降りさせていただきます」
と、エレナは答えた。
「私は構いません。守ることこそが私の力の源なので」
と、シルヴィアは答えた。
それぞれの答えに先生達は言葉を返す。
「わかった、ありがとなエレナ」
「わかりました、任せましたよシルヴィアさん」
「はい」
「はい」
それぞれの答えが決まりポル先達はアレーザ魔法学院の先生達と話し、魔法使いの生徒を呼び出しに行く。
「よし、なら今承諾した五人もとい四人は前に来い」
ポル先に呼ばれ俺も前に出る。同じようにしてグラウ、アベルト、シルヴィアも前に出る。俺達が前に出るのと同時に魔法使い側の生徒達も姿を現し始めた。
「魔法学院側の生徒で今回、ダンジョン攻略に志望した生徒は六名だ。少しこちらの数か足りないがすまない」
そうポル先は俺達とは反対に横に整列した魔法学院の生徒に頭を下げた。
「制限はあるがまずは自分たちの好きな騎士の元に行ってくれ。それからまた決める」
「「「「「はい!」」」」」
魔法学院側の生徒達はみんな元気のいい返事をしてそれぞればらけた。みんな好きな方へと足を伸ばし、時間がかかることなくサポートする騎士の元へと辿り着いた。
その結果を見て先生達は少し感嘆する。
「綺麗に別れましたね」
「あぁ、だがちょっとな」
「これは大丈夫ですかな?」
ポル先やレアーナ先生の他に長く白い髭を立派に生やした、ユグドラシルと張り合いのあるようなおじいちゃん先生がいた。服装からして校長先生かな?纏うオーラはおっとりとしていいかにも優しさがにじみ出ている。そんなおじいちゃん先生はこの結果に少々不安を持つ。なぜなら数が3対1対1対1になっているからだ。あきらかに一人だけ偏っているのだ。一体、誰にこんなにも集まっているのか?普通ならみんな二人いるアベルトとファルシスのところに行くのが普通だ。けど、さっき彼らは一人と制限した。その結果ちゃんとアベルトたちのところには一人しかいない。かといい、グラウやシルヴィアのところにも三人いるわけではない。もうおわかりだろう、俺のところに三人来ているのだ。その子達のことを俺はよく知ってる、その中でも一人だけ知ってる度合いが違う。
「ライ、やれるか?」
「さぁ?けど、この子達が俺を選ぶというのならそれを受け入れるまでだな」
「さぁ?と、答えるか…」
ポル先への質問の返答が気に食わなかったのかおじいちゃん先生が突っかかる。まぁ、それはそうだ。ダンジョンには魔物がいて下手すれば死ぬ。大事な生徒を預かってる身としてはそんなあやふやな答えじゃ他の生徒に自分の生徒を任すことなんてできないだろう。けど、ポル先はもうとっくに知っていた。ライは必ず守りきると。なぜなら俺の元に来たのは…。
「大丈夫ですよ、ラーザル老師。他の子ならともかく、あの子達ならライは必ず守りきりますよ」
「本当かの?」
若干、俺にその閉じた瞳をうっすらと開けて見定めるラーザル老師。もといおじいちゃん先生には悪いが俺は何があってもこの子達を守る。
「おにぃ、ちゃん」
「お、お兄さん、お久しぶりです」
「今回はお願いします、お兄さん」
俺の元に来てくれたのは俺の愛すべき妹とその友達だからだ。
リーナは何も心配することなく俺の元へ来てくれた。それに付いてくるようにサラちゃんとレナちゃんもついてきていた。そのため、俺のところにだけこんなに集まってしまったのだ。
「あぁ、任せとけ」
俺は何も心配いらないと言わんばかりの自身を見せてサラちゃんとレナちゃんを落ち着かせる。
そんな俺達のやり取りを見てラーザル老師は
「あれなら大丈夫じゃの、ほっほっほ」
と、その目を再び閉ざし陽気に笑うのだった。どうやら、力を見抜かれたらしい。これでも隠してるほうなんだけどなー。
「よし、ラーザル老師の許可も出た。それじゃあこれからチーム分けをする。それぞれ時間を与えるからクラス関係なくチームを組め」
ポル先の指示にみんな動き出す。
チームを組むのに十分もかからなかった。それぞれ事前に決めていたチームの元に行って先生の元へ報告する。さすがにここまでしてるとは思わず先生はびっくりしていた。フィナクラスのみんなも今では落ち着いて行動しているが昨日の放課後は俺達の行動力にめっちゃ驚いていた。なぜなら、アベルト率いるアリシアクラス総勢でフィナクラスに押しかけたのだ。当然のごとく何事かとフィナクラスは慌てていたがアベルトがファルシスと話しをし、チームについて決めあうのだった。それは先生がみんな帰った後も話し合った。その場にはアリシアクラスもフィナクラスも全生徒がいたのだ。担任であるポル先やレアーナ先生は忙しいのかクラスに来ることは無かったがほかの先生は不思議そうにして忠告だけして帰っていった。そうして、夜になってやっと全員分のチーム分けが決まったのだ。今日はその決められたチームに集まって報告なのでスムーズに済んだ。まぁ、アベルトとの宣言でファルシスはタッグになったのはアベルト自体のの独断行動だったのでビックリしていたが。
「よし、全員チーム分けは決まったな。じゃあ、それぞれ各チームにDCTの方たちがつく。ちゃんと挨拶をしておけ」
その指示であらかじめ配当されていたであろう女神近衛兵がそれぞれのチームにばらける。当然、俺のチームにも来るが…。
「助けはいるか?」
「んや、大丈夫だ」
「そうか、では私は他のチームの加勢に行く。いいか?」
「あぁ、そっちの方がいい」
「わかった。だが、なるべく他のチームと近い場所にいながら行動するのだぞ」
「おけ、じゃあ他のチームのこと頼んだぞー」
「ふっ、言われなくてもわかっているさ」
そう言って他のチームの加勢にいった。
「え、え、お兄さん大丈夫なんですか?その、わ、私たちは正直…」
「とっても足でまといになっちゃいますよ?」
そう、リーナの友達のサラちゃんとレナちゃんが不安そうにこちらを見る。まぁ、なんというかむしろこっちの方が楽なんだよな。本気もいざという時に出せるから。
「大丈夫大丈夫、必ず3人とも俺が守りきるから。大空に乗ったつもりでいればいい」
「は、はい」
「じゃあ、お兄さん頼みましたよー!」
サラちゃんはまだ不安が拭いきれてないみたいだがレナちゃんは元気よく返事して俺に任せてくれた。まぁ、レナちゃんも不安はあると思うけどな。
「おう」
そんな二人にはまだ返事しかできないがいずれ実力を知ってもらうことになるだろう。
なにせ、この中で。いや、この全体の中で一番安心しているのは恐らく俺の最愛の妹、リーナだけだろう。リーナは本当に何も心配することなく俺の腕に抱きついている。その瞳は一切不安を感じさせない。そんなリーナの頭を優しく撫でるのだった。
なんとかまにあったぁ!
ということで、いつも読んでくださってる皆様方、ありがとうございます。
今期は見るアニメが多い気がするぞ!
グラブルやエロマンガ先生、終末なにしてますか?に進撃の巨人、弱ペタとかまぁ、いろいろ。そして、絶賛風邪ひき中。もうメッチャしんどい。ということで今回はこれぐらいにしておくぞ!サラダバー人間ども!
ライ「次はいよいよダンジョン攻略だー!」
グラウ「いつもと違って気合入ってるな」
ライ「当たり前だろ!今回は俺の女神様がいるからな」
グラウ「相変わらずだな」
ライ「あったりめぇよ!」
グラウ「まぁ、それなら心配もないな」
ライ「おう!それより、グラウのとこも初級生だった気がするけど大丈夫なの?」
グラウ「まぁ、俺はお前と違ってちゃんとチーム組んでるからな」
ライ「遠まわしにぼっち言うのやめて!」
グラウ「ちげえよ!」
ライ「まぁ冗談さておき、それなら安心だな」
グラウ「あぁ、正直あいつらだけでも十分だと思うけどな」
ライ「へぇ、そんなに強いのか」
グラウ「まぁな、みんないい線してる」
ライ「ふむふむ、ま、グラウいるし平気か」
グラウ「そう過大評価するな」
ライ「いやいや、素直な感想だじぇ」
グラウ「うっせーよ」
ライ「おう、照れてらっしゃる」
グラウ「うっせーって!もう次行くぞ!」
ライ「ういうい」
ライ「次回」
グラウ「滅茶苦茶なダンジョン攻略」
ライ・グラウ「次回も見てくれよな」




