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滅茶苦茶なシスコン剣士の妹件  作者: 魔王
メインヒロインだったはずの勇者の末裔
47/83

二人の滅茶苦茶で秘密の争い

「ルナ?」

変わり果てたルナは俺にその愛剣であるシュレディンガーを突き立てたまま動かない。月明かりだけが彼女達を照らす中、静寂だけが彼らを包んでいた。ルナは俺のことを「魔王」と呼んだだけでそれ以上何も言わずこのままだ。

「あのー、ルナさん?きこえてらっしゃる?」

「…」

ダメだ!聞こえてらっしゃらない!と思ったら、ルナが唐突にその口を開く。

「二つ、質問に答えて」

「あ、はい」

あまりのルナの変容ぶり(二重の意味で)のせいでかしこまる。

「まず、混沌龍はあなたにとってなに?」

「カオスのことか?」

「そう」

カオス?なんでここでその名前が出たのかはわからないが素直に答える。

「なにって、そりゃあ俺よりもグラウのほうが思い入れはあると思うけど」

そう言うとルナはシュレディンガーの刃を更に俺に近づけた。

「いいから答えて」

「ひぃぃ!」

その動作には迷いがなかった。ルナは本気だ。

「カオスは俺にとってはただの伝説上の龍の存在でつい最近ではグラウの大切な存在なんじゃないかなーと思ってます。はい」

その答えにルナはしばし黙り込む。俺はまたシュレディンガーを近づけられるんじゃないかとひやひやしている。ルナはすこし考えて、少しだけシュレディンガーを離してくれた。

「わかった、なら最後の質問。六年前、ライは神山の麓の森に入ったことはある?」

六年前?六年前は確かライガルみたいに強くなろうとしてがむしゃらに力を求めてた気がする。しかし、そんな昔の記憶を思い出せるわけでもなく。いやまて、そういえばルナのこの姿を見た時に引っ掛かりを感じたけど…。ん?あれ?でもそれって確か…。

「ルナ、一つだけ確認いいです?」

「なに」

「確かに俺は神山の麓にある森林には行ったことある。けど、俺がそこに行ったのは八年前の事だ」

「…」

そう、八年前に俺は一度神山まで行った。そのことで思い出した。その際に俺は不思議な少女と出会った。龍を殺すと、そう断言した復讐の眼差しを持った少女を。確か、あの子もルナと似たような剣を持っていた。でも、だとしてもあの子は…。

「それに、俺はそこで女の子に出会ったけどその子は近くの農家の老夫妻のところで引き取られたはずだ」

「………」

その俺の言葉にルナはさっきよりも長く黙り込む。

「その、老夫妻の名前を教えて…」

「グレイスおじさんとパリべナおばさんだ」

「っ!」

その名前にルナは驚く。ボソッと彼女は呟いた。

「…他には?」

「ほか?」

「…質問を変えるね。ライはその女の子と何かあったの?」

「なにかって、言われてもな…」

「いいから全部話して」

「わかったよ」

そう、あれはちょうど八年前の事だ。



目の前には伝説の存在がいた。それは童話の中だけの存在だと思われていた幻想の生き物。ドラゴンが。みんなはそれを称して龍と呼ぶ。そして、今まさにそいつはいた。緑色の光沢のある鱗にふてぶてしい髭を生やした龍が。童話通りであるならその龍の名はユグドラシル。神山に住まう、否、神山そのものと言える龍。俺の目の前ではユグドラシルが放ったブレスによって地面が抉れた状態になっている。そのブレスは確実に俺を殺すために放たれた一撃だった。けれど、俺は今こうして生きている。幻惑分身アバフェクションで自分の目の前に分身を作っていかにもそこにいるように惑わした。そうして今は息を潜めてティルの幻惑魔法の一つ、ジャバクを掛けて気配を消している。ユグドラシルは俺を屠ったと思い少女に向き直る。ユグドラシルはその鋭い鈎をうまく使い少女を手元に乗せ飛び去った。


「おや、もう出るのかい?」

「ん?あぁ、早くしないと間に合わなくなるからな。泊めてくれてありがとうパリべナおばさん」

「いいんだよ。それよりも本当に行くのかい?」

「あそこはのぅ、子供の行くところじゃあない」

「グレイスおじさん」

俺は一度近くの村まで降りてとある農家夫妻の所に泊めてもらった。そして一夜明けた早朝。俺はすぐに出発する準備を整えてるとこだった。

「ライ君の言う通りなら、近くの国の騎士隊をだしてくれるように言っとくからもう少し考えてくれんかのぅ?」

「ありがとうグレイスおじさん。けど、今は一刻の猶予もないんだ」

「うーむ…」

「あなた…」

「しかしのぅ、あそこは本当に強い魔物だらけじゃ。騎士隊でさえ、中に入るのに最低五人は必要じゃというのに」

「お気持ちだけでも嬉しいです。ありがとうございます、パリべナおばさん、グレイスおじさん」

「それじゃぁ仕方ないね。ライくん、ちょっと手を貸してごらん」

パリべナおばさんが何かを握ってこちらに寄ってくる。俺は言われた通りに掌をパリべナおばさんにだす。

「これ、いざという時に使うんだよ」

そう言って手渡されたのは黄金色の宝石だった。

「これは?」

「そいつはの、丸薬じゃ」

「丸薬?」

「あぁ、体の内側からこう、力が溢れ出すぐらいに強い薬じゃ」

「薬なのか、これ…」

どう見たって宝石だった。

「あぁ、じゃからピンチになったら使うんじゃよ」

「わかった。何から何までありがとう、パリべナおばさん、グレイスおじさん」

「えぇ、そのかわり。ちゃんとここに戻ってくるんだよぉ」

「約束する」

俺はそう言って小指だけ立ててパリべナおばさんにだす。パリべナおばさんも同じようにして手を出す。小指と小指を絡みあわせる。

「「指切りげんまん嘘ついたら「晩御飯抜きじゃ」指切った」」

「ってえぇ!?」

急なグレイスおじさんの横槍にびっくりする。

「ちゃんと、夜までには戻ってくるんじゃよ」

「…あぁ、ちゃんと戻ってくる」

二人共、その瞳は不安で揺らいでいた。ライはそんな二人を安心させるためより強く答えた。そうして俺はまた、あの森に向かうのだった。



「グガァァア!!」

「ちっ!」

体がごつく虎みたいなやつで、所々に刃物みたいに鋭い部分がある魔物。トゥーチが九匹の群れをなしてライに襲いかかる。

『数も地理も不利よ』

「そんなことぐらいわかってるさ。けど、ティルならなんとかしてくれるんだろ?」

『あまり、頼られるのも問題ものね』

トゥーチの噛みつきをいなしながらライはティルと話す。トゥーチを上手にいなしながら五匹が一直線上に重なるように誘導した。

『そこよ』

「魔絶技 魔閃!」

黒い雷光を纏ったティルを残像が見えるほどの速さで目の前のトゥーチに刺突させる。その衝撃波で後ろに重なっていた四匹も纏めて吹き飛ばす。

「残り四匹」

『油断は禁物よ』

「わかってる」

しかし、トゥーチは仲間が一気にやられたのを見てその場から逃げ出す。

「ふぅ、これで何回目だ」

『56回目ね』

「少しばかし数が多くなってきてるし、前の奴らよりも強かった」

『それほど奥にまで進んでるってことよ』

「ドラゴンの場所、わかる?」

『分かるわけないでしょ、ドラゴンの生態ってあなた達でも解明出来てないんでしょ?』

「それどころか俺でさえ昨日まで童話の存在と思ってたんだが」

『なら無理ね』

「じゃあ、あの女の子の場所は?」

『それなら分かるわ』

「あ、わかるんだ」

『案内は?』

「お願い」

『仕方ないわね』

ティルはライにしぶしぶ案内するのだった。その間にも何回か魔物と戦闘したけど至って問題はなかった。

『そこを左よ』

「左ね」

鬱蒼と生い茂る草木をかき分けながら進むこと既に二時間以上が経つ。ライは少しだけ休憩を挟んだが、かれこれずっと歩きぱなしだ。

『足は大丈夫?』

「まだまだ平気」

『無理はしないでちょうだい』

「なるべくな」

『…ばか』

「まぁまぁ、今はとりあえずあの女の子の救出が先だ」

『早く終わらすわよ』

「あいあい」

そんなティルと共にどんどん奥へと入っていくと不思議な空間に出た。そこは光が遮断された場所なのに淡い光が照らす空洞。ちょっと奥には泉がみえる。泉に照らされている洞窟が星みたいにキラキラしていた。そこはまるで幻想的な場所だった。

「なんだここ」

『凄いわね』

ここだけ別次元みたいに美しかった。魔物と暗い森とは比較にならないぐらい。草木も少しあるだけで色は綺麗な緑色、見たことのない花があちこちに咲き誇っている。そんな中でも花が密集して咲いてる場所に目を向けて、驚いた。

『人がいるわ』

「なっ!?どこに!」

『あそこよ』

「っ!」

そこには、昨日出会った少女が花の上に横たわっていた。

少女に近づいて息があるかどうか確認する。

「よかった、生きてる」

少女の安否に安堵する。しかし、そんな時に大抵お決まりはやってくる。

「まさか、ここに来ようとはの。魔女の使い」

それは昨日出会った龍とは違う姿をした、というか確実に龍じゃない。姿が。でも声は確実に昨日のドラゴンと同じ声なのだ。

そいつは泉に浮いていた。長い白髭が特徴的でいかにも年老いている。言うならば仙人と言ったところか。そのシワがよった細い目を片目だけ開け俺を睨む。

「昨日から思ったけどその魔女の使いってなんだ?」

「ふむ?主は自覚がないのか?」

「自覚って言われても…、魔女は俺にとっての最大の敵だしな」

「……」

俺のそんな受け答えに仙人はしばした黙り込んだ。やがて、声を荒らげて笑い出した。

「ぐははは、まさかこんなことがあろとはな」

「なにがそんなにおかしいんだ?おっさん」

「おっさん?ぬしをは本気で儂をただのおっさんと思っているのか?」

「んや、ただのおっさんなんて思ってないよ。これぼっちも。単なるおっさんが泉の上に浮けるわけないしな」

「ふっ、変わった小僧よのぅ」

「そいつはどうも」

「しかし、そうきたか」

「だからなんだよ、教えてくれたっていいんじゃありません?」

「バカが。そう簡単に永年の敵に色々と教えるものか」

「永年の敵?」

「それさえも自覚がないのか…」

仙人もといユグドラシルは困ったように額に手を当てる。

「まぁよかろう。一つだけ教えてやる」

「お、太っ腹ぁ〜」

「死にたいのか?ぬしは」

「出来ることなら生きたいね」

「儂だから許すものの他の龍と話す時は言葉に気をつけるんじゃな」

「やっぱりあんたはユグドラシルなのか」

そんなライのいかにもな質問に。

「いかにも、じゃな」

そう自慢げにユグドラシルは白髭をなで下ろす。俺は俺でいつ攻撃されるか気が気でない。

「まぁ、お主がさっきから知りたがっていた魔女の使いについてだが、特別に教えてやろう」

「ほんと、なんなんだそれ?俺は魔女の言いなりになった覚えはないけど」

「ふむ、そうじゃろうな。なにせ主に植え付けているのは単なる種でしかない」

「種?」

「しかし、その種は主を蝕み、やがて魔女の前で開花させるじゃろう。それが主につけられた烙印。魔女の烙印じゃよ」

「魔女の、烙印…」

「本来それは魔女が自分と永劫に共にできるものに与えられる、あるいは付けられる印じゃ」

「なぁ、それをつけてるからお前は…」

「そうじゃ、魔女の使いと思ったんじゃがな。よく見れば種も開花しとらんただの豆粒じゃ」

いかにもって感じのポーズでユグドラシルは肩をすくめる。

「さっき蝕むって言ったよな」

「言ったのう」

「俺、死ぬのか?」

ライは真剣な顔でそうユグドラシルに聞く。ユグドラシルもそれを感じ取ったのかより険しくなる。

「しぬのが怖くないのか?」

「俺には守りたいものがある。それを守れるのなら死なんて怖くない」

その答えにユグドラシルはその細い目を見開く。その瞳に移ったのは…。

「ふむ、安心せい。なにも命を奪うような代物じゃない。その心が段々と魔女の色に染め上げられるだけじゃ」

「それってどういうことだ?」

命は取らないと聞きライは若干安堵する。

「そのままの意味じゃよ」

「…??」

「ま、主にはまだ早い事じゃ」

「なんだよぉ〜」

「理解するのにまだ時間が早かったということじゃよ」

ライはそんなユグドラシルに力が抜けたのかその場に座り込む。

「それより、お主よくここにたどり着いたのぅ」

「めっちゃ疲れた」

「ふむ、最後の蛇はどう乗り越えてきたんじゃ?」

「蛇?そんなのいなかったけ、ど!?」

ライは即座にその場から飛び退く。次の瞬間その場所に紫色の液体がバシャンとかかる。隣にいた女の子には見えない透明な壁が張られて奇跡的に無事だ。しかし、他の、液体がかかった場所は地面もろとも溶けだしている。

「なっ」

「ふむ、寝ていたのか」

「寝ていたってなにがだよ!?」

「この泉の門番みたいなもんじゃ」

「んで、なんでそんな奴が中に入ってきてるわけ?」

「もちろん、お主を排除しにじゃろうよ」

「どうにか止められません?」

「いや、じゃな」

「そこをなんとか!」

「ならば、褒美を与えよう。もし、バジリスクを倒せれば主の助けたがっている少女について教えてやろう」

「約束は守ってくれるんだろうな?」

「龍は誓を違わんわ、いいから倒してくるんじゃな。もっとも、今のお主の実力で倒せるかは危ういがのぅ」

「くっ!」

もう一度飛んできた液体を飛び退いて避ける。落ち着いたとこで相手を、バジリスクをよく見てみると。でかい。龍の時のユグドラシルの二分の一のサイズぐらいか。それでも十分に大きい蛇だ。甲殻はとても硬そうだな。魔閃で通じるかどうか。逃げるという選択肢はない。なにせ、出入口をバジリスクが塞いでるからな。だからといってぶっつけ本番で戦うのは少し厳しい相手だ。

「キシャァァァア!!」

雄叫びをあげてバジリスクがライに向かって突進する。かと思いきやそのままライの周りを這い始める。

「なっ!?」

ライはいつの間にかバジリスクの体の円の中に追いやられていた。徐々にバジリスクが近づいてくる。あんなでかいヤツにしめつけられれば一発でライは死に絶えるだろう。蛇とは全身筋肉でできているのだから。動かなくなったライに容赦なくバジリスクは噛みつきに来る。

「魔絶技 魔閃!」

それを機にライはバジリスクに一太刀浴びせるが。ティルがバジリスクの体に突き刺さったまま抜けない。それを見て容赦なくバジリスクがライに体当たりをかます。その衝撃でティルは抜けたけど多大なダメージを負う。

「ぐぁぁ!」

何度か地面をリバウンドした後、泉の浅瀬にバシャンと盛大にぶつかる。

『ライ!ライ!しっかりしなさい!』

ティルが必死に叫んでいるが意識が朦朧としてうまく働かない。ヤバすぎる。一撃受けたただけでこれはやばい。脳震盪を起こしてまともに立てない。けど、そんな働かない頭でも本能的にあるものを掴んで口に運んでいた。



吹き飛ばされ、自分の元まで転がり込んだ少年を見てユグドラシルは思った。

(ここまでかの)

まだ、ほんの幼い少年にこの森の化身でもあるバジリスクを戦わせるのは無理があったのだ。いくらなんでもレベル差がでかすぎた。それに、ライはここに来るまでに少なからず体力も消費して所々に怪我をしている。負傷でしかも万全じゃないライはユグドラシルから見てひ弱にしか見えなかった。

ユグドラシルはライの最後を見届けようとするが、その予想は裏切られた。唐突に、突然にライの体が淡く光り始めるのだった。



「マジですげー、これ」

『気のせいかしら、私も不思議と全力を出せそうな気がするわ』

「この状態で吸血したら?」

『間違いなくあいつに勝てるわね。それも瞬殺で』

「なら、やるしかないな!」

『私は貴方の剣よ、あなたが望むのならその通りに』

体がポカポカしてきた。それは太陽の光を浴びてるような。身体のうちから力が沸き上がる。いまなら、何にでも勝てそうな気がする。ティルを握ってる掌にチクッとした痛みが走る。ティルの吸血だ。ティルの輝きがより一層紅く、禍々しい光を放つ。その姿にバジリスクが恐怖を覚え、挙句、その巨体でライに狂い襲いかかる。

「ギシャアァァア!!」

その巨体を持ってライを喰らい尽くそうと大口を開けて地を這い迫る。

「ティル」

『えぇ、やれるわ』

本当ならこの瞬間ライは敗北を決していただろう。けど、いまなら。今のこの状態ならできる。

気づけばバジリスクの口が眼前まで迫っていた。

「『装甲化リンク!!』」




「まさか、お主がバジリスクを倒すとはな…」

そこにはでかい蛇、バジリスクが乱雑に切り刻まれた死体があった。すでに息絶え活動を停止している。周りは無残にも花が散り大地は荒れ果てている。そんな中、ライは片膝をつき息を切らしている。淡い光は消え、元のライに戻っている。

「はぁ、はぁ…」

『無茶しすぎよ』

「そうでもしないと、油断できないからな」

『それも、そうだけど…』

「心配してくれてありがとな」

『ばか…』

ライはなんとか生きてることを実感する。そして、やっとの事で息を整えてユグドラシルと向き合う。

「さぁ、教えてくれるんだろ?」

「生意気な小僧だが、その実力はしかと見届けたぞ。よかろう、教えてやろう。この子の正体を…」

ユグドラシルはその鋭い眼光でライを見つめ、口を開く。



「そんなことってあんの?」

「現にこうしてこの子がここにいることがその証明になっておるじゃろ」

「じゃあお前はその子を殺すためじゃなくて…」

「助けるために決まっておろうが」

ユグドラシルの言葉にライは口をポカーンと開ける。

「あぁもぅ、心配して損した」

そうしてまた座りこもうとしてこける。

「いた!?」

そこにはさっき、バジリスクが初撃で放った溶解液で大穴が空いていた場所だった。それをみてユグドラシルがため息をつく。

「それにしても派手にやってくれたものじゃな」

「しゃーないだろ、あんなのに勝っただけでも褒めて欲しいんですけど?」

「どこまでもむかつく小僧じゃのぅ。まぁよい、そんなお主にちょっとした力を見せてやるわい」

そう言うとユグドラシルは左手を空に掲げる。その手に淡い緑色が集まり、弾けとびその粒子がこの空洞に広がる。すると驚く事に…。

「おわ!?」

さっきまで穴が空いて無残になっていた大地や散っていた花たちが元通りに、いや、再生している。

「驚いたかのう?」

「正直、すごい」

『こんなの、魔法にもないはずよ』

「ふはは、素直でよろしい。ここは儂の庭じゃからな。これぐらい造作もない」

あっという間に元通りの神秘的な空洞にもどってしまった。



「なぁ」

「なんじゃ?」

しばらく、この空洞で戦闘の疲れをとっていると、ふとした疑問をユグドラシルに聞く。

「なんでお前達ってこんなところに住んでるの?」

「じゃあなぜお主らは街や国という場所に住んでおる?」

「へ?」

「お主はアホの子か。人が住むべき場所にいる。それと同じように儂らには儂らにあった住処があるという事じゃ」

「なるほど」

相変わらずユグドラシルは泉の上を浮いてライと話し合う。

「それより本題に入るけど」

「前置きが長いすぎるわい」

あまりの長さにユグドラシルが突っ込むレベルだった。かれこれ四時間は話し続けてるのだから当然だろうといえば当然だろう。

「その子、俺が預かってもいい?」

「それで、どうするつもりじゃ?」

「さっき言ったことと同じだよ、人には人の住む場所がある」

「しかし、この子の住処はヤツによって壊滅させられたのじゃぞ?」

「あぁ、だからドラゴンに恨みを持ってるのもわかった。けど、だからってここでずっと暮らせるわけでもない」

「ふむ、それもそうかもしれぬが…。貴様を信じてもよいのか、儂にはわからぬな」

「なら、どうやったら信じてくれる?」

ライの最終的な目的は変わらない。少女を助けるため、とは言ってもユグドラシルと話して危害を加えないことはわかった。けど、こんな森の奥でずっと閉じ込めるわけにもいかない。それに、そばにいるのは少女にとって憎むべき龍なのだから。

「よかろう、ならば儂に触れよ。小僧」

「へ?」

「儂に触れることができるのなら信じてやろう」

「まじか」

ライはそこで改めてユグドラシルの浮いてる場所をみる。泉の中央、恐らく一番深い場所に浮いてるのだ。決して泳げないわけではないけど、もしかしたら泉の中に魔物がいるかもしれない。これを出したということは恐らく試練的な何かだと思いきや。ユグドラシルは自らこちらに寄ってきた。

「な、何も出ないよな?」

「さぁの」

「そういう脅しは良くないぞ!」

「いいから早くこんか」

俺は恐る恐るユグドラシルに近づき片手をユグドラシルが差し出している手に近づける。ビクビクしながらも近づけた手はユグドラシルの掌に触れる。年相応を感じさせるシワのよった手にライは若干驚く。しかし、それ以上にユグドラシルが驚いていた。細目をさっきよりも真ん丸に見開いて。

「まさか、触れられるとはのぅ」

「なに?なに!?触れたらなんかあるの!?」

いまだにへっぴり腰なライにユグドラシルは呆れるが。それでも、触れられたことに驚きを隠せなかった。しかし、ふと目線を下に落として数秒考える。

「よかろう、連れていけ」

「へ?いいのか?」

ライはライでこんなことでほんとにいいのか逆に不安になるのだった。けど、いいと言うのだからいいのだろう。

「いいんだな!本当にいいんだな!?もう取り返しとかつかないからな!」

「うるさい小僧じゃ、さっさと連れてけ」

そんな呆れたユグドラシルを背にライは少女をおぶるのだった。

「小僧」

さっさと立ち去ろうとした時、突然ユグドラシルに声をかけれ振り返る。

「よろしく、頼むぞ」

「頼まれないぞ、俺は」

「ふ、そんなの分かっておるわい。しかし、人里までは頼んだぞ」

「それは頼まれてしんぜよう」

そう打ち切ってライはユグドラシルの空洞を出るのだった。




出たのはいいけど魔物に囲まれた。

「くそ!魔物と介さずに返してくれるんじゃないのかよ!」

『さすがに龍でも魔物を操れるわけじゃないと思うわよ?』

現在、十五匹のトゥーチに囲まれて大ピンチの状態だった。少女を背負ったままのライじゃまともに戦闘なんてできない。だからって少女を守りながら戦えるほど技量があるわけじゃない。

「くそ!なんでこんなことに!」

『言い出しっぺが何言ってるのよ』

そんな中でもティルは冷静だった。

「てか何でそんなに冷静なわけ?」

『じきにわかるわ』

そう話していると1匹のトゥーチがライにその鋭い牙を剥ける。

「やばっ!」

明らかに不意を突かれ、防御体制もままならないライに容赦なく襲いかかるトゥーチ。もうダメかと思ったその時。肌に熱気を感じた。

「うぉらぁぁ!」

勇ましい声が聞こえ目を開けると、目の前のトゥーチが吹き飛ばされていた。

「ほわっつ!?」

「せやぁぁ!」

それをやった本人を見てみると、おそらく誰もが予想しなかったであろう人物がトゥーチと戦っていた。

「なんでグレイスおじさんが!?」

そう、戦っていたのは炎が燃え盛る剣を振るっている老人、グレイスおじさんだった。

「ふむ、来て正解じゃったのぅ」

「え、ぁ、え?」

あまりのびっくり仰天にライは困惑するのだった。そんなライにグレイスおじさんは急かすように先を急がせる。

「ほれ、迷ってないで走るんじゃライ」

「え、あ、はい!」

混乱したままライは森を疾走するのだった。勇敢なグレイスおじさんと共に。




「はぁ、はぁ…」

二時間以上もかけて歩いてきた道のりをたった三十分で駆け抜けるのだった。グレイスおじさんもそんなハイペースに、というかハイペースになってしまった元凶なのに、年老いてるはずなのに、めっちゃ元気に魔物を狩っていた。場所は既にパリべナおばさんとグレイスおじさんのお家。

「ほら、たんとお食べ」

時刻は既に夜中。パリべナおばさんが目の前に暖かいシチューを置いてくれる。俺はそれをありがたく食べる。

「うめえ〜」

「そうじゃろそうじゃろ」

グレイスおじさんも反対側に座ってシチュー食べている。少女は空いてるベッドにいまは寝かしている。

パリべナおばさんは一度、少女の様子を見に行くと言ってこの場を離れている。

「まさか、おじさんがこんなに強いなんて思わなかったよ」

「ガハハハ、まだまだ若い子には負けとらんわい」

そんな食べっぷりも俺に引けを取らないぐらいだもんな。俺を助けに来た時のグレイスおじさんは筋骨隆々でやばかった。今は服を着てそれを隠してるから全くわからないが。とんでもなく筋肉質なおじさんだった。そして強い。ライガルと同じくらいに…。グレイスおじさんはあの森は最低でも五人いるとかなんとか言ってたのに自分一人で入ってくるあたりがもうやばい。俺にはまだティルがいたから良かったけど、グレイスおじさんに関しては普通の剣と魔法だけで戦っていたからな。トゥーチだって、森の浅いところはそんなに皮膚は硬くなかったが奥に行くにつれて俊敏さも皮膚の硬さも、それに知能さえも上がっていたのに。グレイスおじさんはたった一人で全てを葬って俺を助けに来たのだから。

「それよりグレイスおじさんはどうしてあの場所ってわかったの?」

「それはのぅ、ライが薬を飲んだおかげじゃ」

「え?」

「あの薬は力を与えるとともに自分の場所を示すための光を放つのじゃ」

確か、飲んだ時に体が淡く光った。もしかしてそれが?てか!あの薬どんだけすごいものだったんだ!?

「まぁ、無事で何よりじゃ」

「グレイスおじさんのおかげだよ」

俺は素直にそうグレイスおじさんに礼を言う。そんな中、ドタン!と大きな物音がした。

「何事じゃ?」

その音の方へ見てみるとドタドタと何かがこちらに走ってくる音が聞こえてくる。次第に音は大きくなり自分たちのいる部屋のドアが勢いよく開く。そこには…。

「っ!」

いまは麻の布でできた服を着ている。少女は俺と目が合うとキッと睨み。どこからか少女が持っていた剣を取り出した。

「おい!?」

「ほっほっほ」

なんかグレイスおじさんは呑気に笑ってるし!今ここでその力を使われると間違いなくこの家が半壊どころじゃ済まない!

「まっ!」

俺は全力で少女に飛びつく。危機一髪であの技を使わせず少女とぶつかりそのままゴロゴロと廊下を転がる。気がつけば俺が少女を押し倒すような状態になっていた。

「おやおや、最近の子は元気がいいねぇ」

そこにパリべナおばさんと出くわす。俺は冷や冷やしながら少女の方に恐る恐る見てみると。

「…っ!」

少し服が大きかったのか胸元がはだけ、服が乱れ、ちょっと危ない感じの格好になっている。不幸中の幸いか、少女の持っていた剣はぶつかった拍子に落としたのか廊下の隅っこに落ちている。

「こ、これはわざとじゃないというかなんというか!」

あまりの恐怖と少女の目が痛いのでなんとか誤解をとこうとするが、やったこと自体は事故でもなんでもなく意図的にやったのでなんともいえない。少女はうっすらと瞳に涙を浮かべずっと俺を睨んでいる。正直、俺の処理範囲を超えている。ずっと女の子と接したことない上にこんな不思議少女の相手など俺には荷が重かった。そんな様子を見たグレイスおじさんが救済の手を差し伸べてくれる。

「まぁまぁ、二人とも落ち着いて話し合いなさい」



なんとかグレイスおじさんのおかげで俺は死なずにすんだ。俺と少女は机に向かい合うように座っている。しかし、何を話したらいいのか俺には全くわからない。ユグドラシルから少女の事について大抵の事は聞いた。だからって何かができるわけじゃないやい!

「んく…」

少女は目の前に出されたシチューをちまちまと食べるのだった。もちろん、俺の目の前にシチューが置かれているのだがそれどころではなかった。そんな様子をグレイスおじさんとパリべナおばさんは離れた場所でニヤニヤしながら見守るのだった。

「あぁ、えぇっと…」

「……」

シチューを食べ終えたのか、少女はスプーンを置いてじっとこちらを睨む。気まずい!何を言ったらいいかわからない!どうしよう!

『そのまま気になることを聞いたらいいんじゃないの?』

そんなことを迷っているとティルが助言をくれた。

(気になることって言っても)

『そのままよ、一人しかいないの?あの剣は何?帰る場所は?あの龍から聞いたことも踏まえて聞いてみればいいじゃない。相手は一応、話を聞いてくれるみたいだし』

(わ、わかった)

ライは一度深呼吸して呼吸を整える。そして改めて少女と面を合わせる。

「えっと、君は…」

「あなたは一体何者」

せっかく勇気出して聞こうとしたのにぃ!少女はライの言葉を遮ってそう聞いてきた。ライは慌てながらも答える。

「俺はただの人だよ」

「嘘、ただの人が、私と同じくらいの子供があんな場所にいるはずない」

「ならそれは、俺がほかの子供と違ってちょっと強いだけだよ」

「ちょっと?そんなもので済むような場所じゃないのはあなたもわかってるはず。一体全体、あなたはなんなの」

「ライ、ライ・シュバルツ」

「ライ?」

「あぁ、それが俺の名前」

「…」

途端に少女は黙りこんだ。急に名前を教えられて困惑してるのだろうか?そんなことを思っていると少女も自分の名を名乗った。

「ソレーユ…」

「ソレーユ?」

「私の名前」

「あ!」

『どんだけ鈍感なのよ』

ティルに突っ込まれた。

「ソレーユ、えと、名前で呼んでもいい、のかな?」

「いい」

「そっか、じゃあ俺はライでいいよ」

「わかった。じゃあライは私が気を失ったあとどうしたの?」

どうやら、龍に会ったことは覚えたないみたいだ。それより、ずっと気絶してたみたいだし。ユグドラシルのことを話すべきか…。

「なぁ、一つだけ確認していいか?」

「なに?」

「君は悪い龍と優しい龍がいると思う?」

「龍は等しくみんな悪い」

速攻で返してきた。やっぱり、ソレーユのなかではそう思ってしまうのだろう。

「なら、もし君を守ってくれる龍がいるとしたら?」

「私を、まもる?」

「あぁ、もしソレーユがあの森の奥まで行けるほどの、それ相応の力を身につけたのならな。神山の森の奥深くの泉がある空洞を目指すといい」

「なにかの予言みたい」

「いやマジだって!そこにはソレーユがきっと会いたがってる人がいる。俺が言った人が」

人たというより龍なんだけどね〜。そんなことを思いながらソレーユに力強く云う。言ってることは本当だし、ユグドラシルもそれを望んでるだろう。いくら年老いた龍だからって俺たちより先に死ぬことはないだろうし。龍は人の数百倍長寿らしいし。

「……ほんとう?」

「あぁ、もし嘘なら俺が君を守ってやる。命に代えてでもね」

あれ?俺何言ってんだろ?なんかすごいこと口走ってない?

「ほんとうね?」

なんかさっきよりもソレーユが身を乗り越して、今度はガチの目で問われる。そんなガチなソレーユにテンパりながらもライは答える。

「あ、あぁ」

その返答に満足したのかソレーユは身を引っ込める。

「わかった、ライの言葉信じる」

「そうしてくれると助かる」

「けど、契りは必要」

「契り?」

「そう、約束の儀式」

そう言うとソレーユは小指だけを立てて俺の目の前に持ってくる。どうやら約束の儀式はどこも変わらないみたいだ。俺も同じように小指を立ててソレーユの小指と自分の小指を絡み合わせる。

「「指きりげんまん……」」




「とまぁ、そんな感じかな」

そんな長い話を変わらない状態で聞いていたルナはぷるぷると震えだす。しかも目に涙を溜めて。

「やっぱり、やっぱり会ってたんだ!」

ついに抑えきれなくなったのか涙を零し、俺の胸ぐらを掴んでくる。

「教えて!お姉ちゃんが今どこにいるのか教えてよ!」

激しく揺さぶってるくるルナ。その際聞こえたキーワード。お姉ちゃん、と。ルナはソレーユの妹で納得しても大丈夫だろう。なにせ、面影があるのだから。しかし、困った。今の俺にはソレーユの場所がわからない。グレイスおじさん達とも長らく会ってないため何もわからないのだ。

「教えてくれないのなら…。その気にさせるまで」

え、ちょっとまってルナさん?なんで目の光を落とすんですかね?ちょっと怖いですよ?いや、割とマジで…。

ルナはシュレディンガーをライの左肩に突き刺した。

「うぐっ!」

唐突な激痛とルナの不意打ちに混乱する。ガチだガチだとは思っていたけどここまでやるとは。俺はなんとか痛みに堪えて笑顔を保つ。

「る、ルナ?滅茶苦茶痛いんですが?」

「教えてくれたら治してあげる」

「そう言われてもねぇ、いだだ!?」

ルナは無言でシュレディンガーで肩を抉るように動かす。

「もう見てはいられないわね」

そんなルナに黒い電撃が襲う。ルナは俺から飛びさりその方向へと構える。そこには立っていたのは。

「ティル」

「少しぐらいあなたも抗戦したらどうなのよ」

「いやぁ、だってねぇ」

「はぁ、相変わらずお人好しね」

俺はなんとか立ち上がり、ルナとティルの間に入る。ティルもティルで俺の元まで歩いてくる。

「それで、どうするの?」

「どうするもこうも止めないとな」

ルナは本気だ。きっと殺す気で来るだろう。けれど、俺はそんなことは出来ない。なにせ、いままで共に歩んできたクラスメイトであり、いつもグラウを含めて遊んでいた親友なのだから。

「ルナ、もうちょっと話し合おう」

「話し合うことは無いよ、ライ。私は一方的にあなたを葬るだけ。それが、今私がやるべき事」

どうやら話し合う余地もないみたいだ。

「それは、俺のことを<魔王>って呼んだことと関係があるのか?」

「例え、魔王としての自覚がなくてもいまここでライを殺す」

わぁ〜、これが噂に聞くヤンデレかな?圧倒的に違いすぎて泣ける。むしろ、ヤンデレの方がまだありがたかったかもしれない。ルナは美人だしな。

「それは、ルナが勇者の血族だからか?」

「っ!」

俺の言葉にルナが驚く。俺の言葉から勇者という単語が出てくるとは思ってなかったんだろう。

「どうして、それを…」

「だって、ルナはソレーユの妹なんだろ?」

「…」

「だったら、ルナもそうなんじゃないのかな〜って」

「だからなに…」

「へ?」

「勇者の血族とか、使命とか。違うよライ。今、私がここにいるのは、ライからお姉ちゃんの居場所を聞くためだよ」

「グレイスおじさんたちのところには、行ったみたいだよな?」

「いったよ、けどいなかった」

「グレイスおじさんたちは?」

「森に行った、とだけ聞いた。それから何度も探した。けど、結局見つからなかった」

「空洞は?」

「空洞?そんなものはなかった…。でもありがとう、一つだけわかった。やっぱりライは何か知ってるんだね」

さらにルナの目が濁る。え、やばくない?

「はぁぁ!」

ルナは初撃のモーションを感じさせず、まるで瞬間移動したかのように俺の前に現れシュレディンガーを突き刺そうとする。そのまま、シュレディンガーはライの心臓に奥深く突き刺さった。しかし、ルナはそのライの奥を睨む。

「その魔法はあの時も見せてくれたね」

シュレディンガーを引き抜くと刺されたライは陽炎のように消えた。言わずとも幻惑分身アバフェクションである。

「ルナ、こんなことしたってなんにもならないぞ」

「うるさい!」

ライの静止の声にもルナは否定。彼女を止める方法はもうライにはなかった。

そんな時だった。そいつが現れたのは。

「!?」

妙に大きな羽ばたく音が聞こえ後ろの湖に振り返るとそいつはいた。ルナはその目を驚愕に見開いた。

「なんで、こんなところに、龍が…」

そう、そこには龍がいた。ライはそいつを知っていた。かつて、八年前にも見た緑色の龍鱗。圧倒的なフォルム、凶悪な顔には長い白髭が立派についている。ユグドラシル、そのものだった。

『久しいのぅ、小僧』

「八年ぶりだな」

俺はユグドラシルと目を合わせ会話する。その姿にルナはさらに驚く。

「んで、何でここにいるんだ?」

『お主に会いに、と言ったら?』

「殺しに来たの間違いじゃ?」

『ふっ、少しはジョークも言えるようになったかのぅ』

「八年まえから言ってた気がするけど?」

『変わらず、腹の立つ小僧じゃ』

「そいつはどうも」

そんなふうに普通に会話してる姿にルナは若干遅れて気を取り戻す。

「ら、ライはユグドラシルのことを知ってるの!?」

「知ってるも何も、八年前に会ったことあるってさっきの話で言わなかったっけ?」

「違う!仙人って言った!」

「あれ?そうだっけ?」

「でも、だとして神山の守り神でもあるユグドラシルがその地を離れてここに?」

『小娘、それは貴様のせいじゃ』

「な、わたし?」

『そうじゃ』

「わたしは、あなたになにかしたの?」

『なにもしとらん』

「じゃあ、なぜ?」

『答えを知りたいか?』

その問に、ルナはゆっくりと頷いた。カオスを除いて五神龍とも呼ばれている一柱のユグドラシルとの会話にルナは緊張するもなんとか言葉を紡いだ。

『だ、そうじゃよ』

そんなルナの答えにまるで別の誰かに教えるようにユグドラシルは答えた。

「そう」

「なっ!」

今度はライが驚くばんだった。姿を現したのは、ルナと同じ綺麗な金髪を夜空になびかせ、シュレディンガーと似ている剣を鞘に納めたまま手に持っている。服はとてもシンプルな赤と黒の線が入ったものだがそれでも彼女の美を落とすことは無かった。問題はそこではなかった。ユグドラシルの背から現れたのは…。

「お久しぶり、ライ」

「ソレー、ユ、なのか?」

八年前と姿形が変わらないソレーユの姿だった。

この前はすっぽかしてごめんなさい!

ということで、いつも読んでくれてる皆様、ありがとうございます!

無事今日で、我の忙しい予定はほぼおわり、気づけばこれを書き続けて1年が過ぎていたな。

うーむ、なかなか趣味ではじめたことだが、我的にはながくつづいてるほうだとおもうぞ。まぁ、ちょくちょくかけなかった時期はあったが。それよりもうすぐクリスマス、我はクリぼっち!ケーキでも作るか…。ということで、皆のものよいクリスマスを!



ライ「気づけば一年経つのな」

ルナ「1年で三章の続きまでしかかけてないって遅いの早いの?」

グラウ「さぁな」

カオス「妾たちのぶんの出番も当分ないみたいじゃし」

フィナ「そうよ!早くグラウのも書きなさいよ!」

ごもっともです。

来年はグラウパートも頑張っていきたいと思います!


アリシア「最初の頃から」

リーナ「見て、くれた、人」

ティル「本当にありがとうございます」

ネア「途中から見てくれた人も、ね」

アリシア・リーナ「これからも」

ネア・ティル「よろしくお願いします」


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