滅茶苦茶な二人の秘密事
残りはアベルトとファルシスだけになった。同等の戦い。その言葉がしっくりとくるほど彼らの力量は拮抗していた。
「はぁ、なかなかやるじゃねぇか」
「お前もな」
ファルシスが力ならアベルトは知だ。アベルトはモルーより技術は劣っている。のにも関わらずファルシスと同等にやれてるのはひとえにその頭の回転力と観察眼の良さだ。モルーはそれを技術で行っていたがアベルトはそれを感覚と知識だけで防いでいるのだ。要は先読み。相手の行動パターンを算出してそこから導き出されるいくつかのパターンの中で確率が高いものを予想する。さらにその後のそうだった場合とそうじゃなかった場合の行動はどれが有効かをさらに計算して次の先手を考える。さらにまたその次へ次へと考える。そういった計算をアベルトは一瞬にしてできるのだ。そんなほぼ未来予知と化していたアベルトにファルシスはなんとか力の横暴とでも言うべき馬鹿力で対抗していた。
「らぁぁ!」
「っ!おらぁ!」
最後の指揮官達の試合に観客は正しくフィナーレに相応しい盛り上がり方をしていた。しかし、そんなところ悪いが…。
俺はグラウの方を見てアイコンタクトを送る。グラウはあともう少しだけと粘る。試合を見ればまだお互いに競い合ってる。しかし、ライ達にはわかっていた。もう彼らは限界だと。息を切らし体を揺らす。そうすることで立つことを保っている。試合時間ももう2〜3分ほど過ぎてる。
(さて、どうするかねぇ)
ライは困ったように首を傾げる。しかし、その心配は無用だった。
アベルトとファルシスが交差した瞬間、ファルシスが倒れた。アベルトも倒れそうになったが剣を支えに片膝をついて立っている。
「勝負、ありだ」
グラウがそう審判する。夜空に観客たちの歓声が響き渡る。
「勝者、アリシアクラス!」
ライも負けないようにそう大声で勝者のクラスを挙げるのだった。
全試合が終わり、堅苦しい挨拶を儀礼的にした後観客達は皆満面の笑顔で帰っていった。また、これを見ていた初級生のクラスは先輩達のあまりの凄さに圧倒され、より一層修練に励もうと意気込む者もいた。観客達が去った後、アリシアクラスとフィナクラス、それと女神近衛兵と女神様がフィールドに集まっていた。その中央には燃え盛る炎があった。みんなそれぞれその炎の周りに集まる。これは儀礼的なものというより一種の幕閉めみたいなものだ。炎の周りでは男女がペアになって踊っている。近衛兵の中には剣士系の武闘派の他にいろいろな系統がある。そんな中の一つで音楽系の女神近衛兵が手にそれぞれ楽器を持って演奏している。とても緩やかな曲でみんなそれを耳にまったりとしている。そして、このキャンプファイヤーとでも言うべき幕引きのさなか、学生達の触れ合い試合とはまた別に激しい争いが今まさに起こっていた。ちょっと離れたところでは簡素な作りをした屋台が並んでいた。それぞれ対立するように。そう、そここそがもう一つのもはや戦争ともいうべき場所に化していた。そこではクラッツセイント王国の腕利きのシェフとラフェルナ王国の一流料理人達がまた違った意味で炎を燃え上がらせていた。その周辺に集まっていた生徒達は試合のあとのご馳走とあって美味しく食べている。つまり、シェフたちにとっては料理の評価も聞けて作りたいほど作れるのだ。それも、それぞれの国で争って。より一層彼らの闘争心は燃えていた。
ちょっと周りを見てみると今日の試合がきっかけでアリシアクラスとフィナクラスが混じりあって話している。
最後の試合で大いに頑張ってくれたファルシスとアベルトはシェフたちが作った究極のジュースを片手に炎を見つめながら話している。
またルウスとハンゾウはみんなとは離れた場所でこっそりと宴会をしているのだった。ハンゾウはあまりこういうお祭りを表立ってでない。忍びたるもの影でなければいけないでござるとかいって自ら輪に離れたところでみんなを見守っている。が、今回はルウスも忍びの家系とあって二人で飲んでいる。
リラとクレスト、それとターティルとエルちゃんも輪になって和気あいあいと話していた。それも楽しそうに。めっちゃ仲良さそう。
アグナスはアグナスで一人で飲んでるしな。いつもの事だけど。と思ったら、アグナスをルウスと一緒にデュアルムまで追い詰めたエイラが小走りで近寄っていた。なんだかエイラは顔を赤くしながらアグナスと喋っている。アグナスもアグナスで戸惑っているぞ。楽しそうな予感。
モルーはフィールとラブラブしながら踊っていた。ちなみにだが彼らは付き合ってるのだ。フィールは普段は無口無表情だがモルーに手をとられて顔を真っ赤にしている。モルーもモルーでそんなフィールに顔を赤くしながらも笑いかけてる。さながら王子様とお姫様だな。
他にバカ特攻の四人組とテナとミリル、ザック。それとイグザも交ざって食事していた。馬鹿二人は早食い競走してるしイグザとザックもそれにのっかって対抗している。テナとミリルにサリアとナルハは四人で女子会していた。
試合で負けてクラスメイトからボコスカ言われていたラックはいつの間にかフィナクラスの女性陣に囲まれている。容姿だけでなく家柄もいいし、本人の性格もとても優しい性格だからかな。一人の女子生徒が最初にラックにダンスを申し込んだんだがラックはそれを丁寧に受けたのだった。それでそこからどんどんラックの人の良さに気づき始めたフィナクラスの女生徒達がラックを囲んでいくのだった。
花蓮は?というと当然グラウのところにいた。グラウのとこには他にも女生徒がいてフィナさんが吠えてらっしゃる。花蓮の他に二人女生徒がグラウのそばにいた。グラウはフィナを宥めるのに必死だな。
あとは、あ、あの三人組もいたな。というか、一人を除いてみんな息を潜めている。そこにはラルフ達と戦ったフィナクラスの三人組も一緒になっていた。ガウズ、エルザ、イグもラルフたちの後ろからエルドの姿を見守っている。そんなエルドはというと一人の先輩と面と向き合っていた。おや、これはまさかの…。ライはそんなエルドたちをニヤニヤしながら見守っていた。そんな時に急にほっぺに冷たいものを当てられる。
「ほわっつ!?」
「お兄ちゃん、ジュース持ってきたぞ?」
「おぉ、ありがとなアリシア」
そこには両手にジュースを持って片方を俺に渡してきてくれてた可愛いアリシアの姿があった。
「私たちはご飯、ね?」
「んっ、もって、きた」
その後ろにはいつの間にかリーナとネアも来ていた。
「悪いな、ありがとう」
「えへへ〜」
「…あぅ」
「んっ」
そんな可愛い妹たちの頭を撫でてあげる。アリシアとリーナは喜んでくれるがまだネアは慣れていないのか頬をピンクに染めて下に俯く。
「みんな揃ったし食べようか」
「うむ!お腹減ったぞ!」
「ん、おなか、ペコペコ」
「そう、ね」
ライ達は四人で簡素に備え付けられた四人用のテーブルに座ってリーナとネアが持ってきてくれたシェフの料理を並べる。どれもここで作ったとは思えないほど本格的で美味しそうだった。
「どれも美味しいぞ!」
「むぐむぐ…」
「ビックリするほど、とはこういうことなの、ね」
リーナ達はその色々なものに舌鼓をうつ。そんな食事中に横から椅子を持ってきた大男が。
「最近どうだ?」
ライガルがテーブルの縦の所に椅子を置いて座る。ライガルも今日は店を閉めて最初からこの試合を見にきていたのだ。
「なんともないよ。強いて言うならクラスメイトたちが全体的に強くなったこと以外は」
「はっはっは、違いねぇな。少なくとも俺の頃にはあんなに強いヤツらそうそういなかったしな」
「いやいや、それはライガルが強かっただけでしょ」
「んや、いい勝負するぞ。あいつらは」
「むりむり、モンスターとの戦闘経験はないから」
「誰がモンスターだこら」
ライガルはそんなライのおふざけにおでこをデコピンするのだった。
「にしても、まさかラフェルナ王国とこんなことが出来る日が来ようとは思ってもみなかったな」
「ま、誰もが予想出来なかったであろう事だからな」
「それもあるんだがな」
「ん?昔になんかやったのか」
「ま、ちょこっとな。ちょこっとだけだ」
「へぇ〜」
ライは軽く流すのだった。ライガルはそんなライに、ライの元気な姿を見て笑うのだった。そして次に女神と魔女、そして妹に笑いかける。
「リーナ、元気してたか?」
「ん、らい、がるは?」
「俺も見ての通りピンピンしてんよ」
「らい、がる、つよい、へいき」
「わかってるじゃねぇか」
ライガルはそうリーナの頭を荒々しいが彼なりに優しく撫でるのだった。リーナもそれがわかってるから拒んだりしない。
「女神様や魔女様もお元気ですかい?」
「うむ!」
「普通、ね」
「元気そうで何よりです」
ライガルも加えて五人で楽しく食事をするのだった。その途中、ライはみんなの輪から離れて一人この場から外れていく女生徒が視界に入る。
「ライガル、ちょっとリーナたちのこと見ててくれないか?」
「それは構わねぇが、どこかいくのか?」
「すぐ戻る、大人しく待てるな?」
「当たり前だぞ!」
「平気」
「んっ、らい、がる、もいる、から」
「うむ、みんな賢くて兄ちゃんは嬉しいぞ」
最後に1人ずつ頭を撫でてやりライもその場をあとにするのだった。
闘技場の街から反対側になってる出入口の方向は湖が見れる場所がある。湖といってもたいしてそんなに大きいわけではない。そんな場所にそいつはいた。人気がない静かなその場所に。湖に反射して映る満月を見ていた。
「ルナ、こんなところでなにしてるんだ?」
そっとルナは振り返る。そこにはライが立っていた。当然一人で。
「ふふ、ライならきっと来てくれると思ってたよ」
「お?それは私はあなたを信じてた、好き結婚して!みたいなことを遠まわしに言ってるのかな?」
ライは変わらずふざけてルナにそう返す。
「ん〜、あってるにはあってるけど実は真逆だったりするかもね」
「??」
そんなルナの意味深な返答にライは頭にハテナを浮かべる。月が雲に隠れる。
「ねぇ、ライ」
「なんだ?」
今のルナはどこか、影がさしている。まるで、色々なものが彼女にのっかってるみたいに。ライはそんなルナに優しく返す。
「私はグラウ君みたいにはなれないみたい」
「そりゃそうだ、ルナはルナだからな」
「だから、ね…」
ルナは少し沈黙する。隠れていた月が姿を現し彼女を照らしあげる。
「な…」
再び月に照らされたルナは違っていた。どこかで見覚えのあるようなないような。ルナのチャームポイントであるヘアピンがティアラに姿を変え夕日に当たれば黄金色に見えなかった彼女の茶髪はいまやゴールドブランド色の綺麗な髪の色になっていた。学生服はいつの間にか純白のドレスに身を包んでいた。所々には防具がつけられている実用的な動きやすいドレス。そして、その腰にはシュレディンガーがつけられていた。反応する頃には遅れていた。ルナはシュレディンガーを抜き放ちライとの距離を一瞬で縮め押し倒す。押し倒されたライは何も出来ずそのままルナに馬乗りにされる。首にはシュレディンガーが突き立てられる。
「まさか、こんなところで会えるなんて思ってもいなかったよ」
「ルナ…」
ほんの数秒、あたりが静寂を包む。そんな中、ライは唇を震わせてなんとか言葉を絞り出す。
「え、まって、急すぎて追いつけないんだが…」
「誤魔化して無駄だよ、魔王」
「ほわっつ!?」
案の定遅れてしまってすみません!
ということで、いつも読んでくださってる皆様方、ありがとうございます!
もう、いつが投稿日なのかわからなぬな。これじゃあ、ちゃんとしなきゃ!
頑張るから!ほかの奴もがんばるから!(2回目)
ということで人間共!今日はここら辺でさらばだ!
グラウ「急展開だな」
フィナ「次が楽しみね」
ライガル「まさかあんな隠し事があったとはな」
シェル「ねぇ〜驚きよね〜」
ラン「ま、なんとなく何かは隠してるなとは思ってたけど」
シェル「次回が楽しみね〜」
ラン「てゆうか!私たち久しぶりの登場なんだけど!?」
グレイ「次回」
レグナス「二人の滅茶苦茶で悲しくない争い」
ライ・ルナ「次回も見てね!」




