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滅茶苦茶なシスコン剣士の妹件  作者: 魔王
メインヒロインだったはずの勇者の末裔
45/83

滅茶苦茶なクラス対抗戦 フィナーレ

めちゃくちゃ遅くなってすみませんでしたぁ!

両者、ともに動き出した。

有利かと思えていたフィナクラスは一転してアリシアクラスの逆襲に会う。

「ふふふ、その程度じゃ私のスピードにはついてこれないよ?」

「ちっ!」

「左!じゃない右!」

「どっち!?」

エルちゃんはたった一人で三人も相手をしてるのにも関わらず劣った様子がない。明らかにエルちゃんのスピードにフィナクラスのミリル、ザック、テナは翻弄されている。

「こっちは片付いたぞ」

アグナスの目の前にはクレストとリラが倒れていた。つまり、そういう事なのだろう。

「流石だなアグナス、エルちゃんのサポートを頼む」

「指示されるのは嫌いなんだがな」

「あくまでも頼んでるだけさ」

「なら、頼まれてやる」

アグナスは自身に風魔法をかけてエルちゃんのとこまで加速する。

「フィール、モルーとエルちゃんにだけ集中してプロテクトしてくれ」

「…わかった」

フィールはアベルトの指示通り分散していた守護魔法をモルーとエルちゃんに集中させる。

「いいのか?自分は守護魔法受けなくて」

「その分お前が俺を守ればいいだけだろ?」

「相変わらず無茶を言う奴だな」

モルーは苦笑いでそうアベルトに答えたが俄然やる気が出ているのは明らかだ。

「さてと、こっちも終わっちゃった」

そんなことをしてるうちにエルちゃんは相手をしていた三人ともをダウンさせていた。

これでフィナクラスは五人ダウンしたことになる。数でもアリシアクラスが勝ってしまった。

「くっ」

ファルシスは最初とは打って変わったアリシアクラスの変貌に混乱する。周りについてきてくれている仲間も混乱状態だ。指揮官であるファルシスがしっかりしなければならないのに。

「終わったな」

「ふっふっふ〜」

「出番なしな感じ?」

「…」

「さぁ、どうする?」

そんなフィナクラスにそれぞれアリシアクラスは感想をぶつけるのだった。ファルシスは下を俯く。まるで諦めたかのように。その行動に周りで行動していた仲間達が不安になる、が。それは一転、ファルシスの指示により打ち消される。

ファルシスが垂れていた頭を上げ前方を睨む。

「全員、後ろのやつの相手をしろ。指揮はルウス、できるな?」

「了解した」

ファルシスは人が変わったように目の前を見据える。傍にいた信頼できる友人にファルシスは指揮を任せた。ルウスもその意図を汲み取って了承する。そんなフィナクラスの変化をアベルトは見逃すことなどなく。

「アグナス!リミッターを外せ!」

「あ?」

アベルトが叫ぶと同時に動いていた。ファルシスがアベルト達に向かって一人で突っ込んできたのだ。

「まじかよ!」

モルーがアベルトの前に立ちファルシスの進行を邪魔する。フィールは急な戦闘になったが慌てずモルーに守護魔法を集中させる。残りのフィナクラスたちはエルちゃんとアグナスに向かって対峙する。そして、それぞれの指揮をルウスが指示する。ここで二つにクラスが別れてしまった。



アグナスはアベルトの声が聞こえたのと同時にそれを実行した。

アグナスはクラスでは最強のデュアルムだが普段は魔法なんて使わない。今回はたまたま使っているだけなのだ。しかし、それでも自身にリミッターをかけた状態。要はデュアルムである二重魔法を行使していない状態なのだ。けれど、アベルトの叫び声でそれは解除された。振り返りざまに烈風魔法で背後から襲いかかってきたフィナクラスの生徒を吹き飛ばし同時に火炎魔法でこちらに走ってきたフィナクラスを牽制する。吹き飛ばされたフィナクラスの生徒はそのまま壁にぶつかりダウンした。これでフィナクラスは残り四人。しかし、一人はバカ特攻のヤツらみたいに一人で最強戦力の三人の元へ突っ込んでいった。だからといって、こっちに来た三人もとい、四人も弱いわけじゃない。背後の一撃はエルちゃんでさえ反応出来ないほどのものだった。それをアグナスは感だけで防いだ。アグナスはリミッター解除したのを見てエルちゃんも冷や汗を流す。

「ちょっとやばい感じ?」

「そうかもな」

エルちゃんの言葉にそっけなくアグナスは答えるが正直詰んだとさえ感じている。


ルウスは最初に隠密行動に長けていたイグザを先行させた。あわよくばこれで一人をダウンさせてもう一人を囲い込む作戦だったのだ。その際に、恐らく手こずるであろう魔法剣士のほうを倒しに行かせた。しかしそれが逆に悪かった。相手のリーダーが叫んだから何かあるのかと思い行かせたが。まさかデュアルムとは思っていなかった。ルウスはそう、目の前の地面から現れた炎の壁をみて作戦を練り直す。イグザには悪いことをしたと思い頭の回転を切り替え次の作戦を練る。正直、今の不意打ちで倒せなかったのはだいぶ痛かったが…。

そんなルウスの隣にはフィナクラス随一の剣術を持つエイラ・ルーカスと疾風の異名を持つターティル・ベルフェネードがいる。

これ以上の策が通用するような相手ではないのもさっきの交戦でわかった。なら、出せる指示も自然と限られている。後は、己の力と仲間を信じるのみ。最後の作戦を伝えてそれぞれに指示を出す。

「エイラは俺とデュアルムの相手だ。ターティル、あの速いやつを任せたぞ」

「了解!」

「クレストとリラとはまた違った速さだが任された、疾風の力を見せてやるよ」



「いけ!俺がサポートする!」

「りょうーかい!」

アグナスの言葉とともにエルちゃんが脱兎のごとく走り出す。それはさながら風に乗ってるようで…。というか、アグナスが風魔法でエルちゃんを押しているのだ。

反対に向こう側からも一人でてきた。そいつも、さっき突っ走てきた二人組より断然速かった。同じスピードタイプなのだろう。それでもまだエルちゃんの方が速度は早かった。しかし、そいつの速さは移動の速さじゃなかった。

「はぁぁぁ!」

エルちゃんがターティルと接戦する際にアグナスはそれを見た。剣戟でエルちゃんの速度が劣ったのを。

「なっ!?」

エルちゃんはその嵐のような剣戟を防ぐも自分のスピードを落としてしまう。そのまま回避が間に合わず何発かダメージを負う。なんとかその剣戟を掻い潜りアグナスの風魔法に体をのせてその場から一度離脱する。

「うひゃー、ちょっと厳しいかな」

「なるほど、疾風怒涛ときたか」

アグナスはターティルを冷静に分析しようとするがそうは上手くいかない。

「やぁぁ!」

「はぁぁ!」

「ちっ!」

横から二人、同時に攻撃を仕掛けてきた2人だがアグナスはそれをバックステップで避ける。ついでとばかりに氷結魔法を放つ。しかし、相手に被弾することなく躱される。アグナスはさすがに危ないと感じたのかエルちゃんに向かって叫ぶ。

「おい!数分だけ耐えろ!」

「きついことをおっしゃいますなぁー」

「それまで自力でなんとかしろ!」

「あいあいさー!」

エルちゃんはしばらくアグナスのサポートなしでターティルと戦うことになり冷や汗をかく。なにせ、さっきのアグナスのサポートアリであれだっのだから。


エルちゃんはターティルを見据えて構える。対してターティルは余裕の構え。

「さてと、どうするかねー」

「手加減はしないぞ?」

「もちろん!」

返す言葉にのせてエルちゃんはターティルに突進する。ターティルは受けの構えでエルちゃんの突進を待つ。けれど、予想に反し目の前でエルちゃんの軌道が変わった。エルちゃんは一度地面を強く踏み右足に力をこめて蹴る。そのまま左に旋回する。真正面から来ると思っていたターティルは不意をつかれるがエルちゃんの速度に合わせて剣を振るう。それは惜しくもエルちゃんに届かず逃げられる。エルちゃんはそのままターティルの周りを走り出す。まるで囲い込むように。

(これは体力消費が激しいから使いたくなかったんだけどねぇ、今回は特別だよ!)

エルちゃんの旋回する速度はターティルの周りを走るごとに加速していく。普通なら落ちる速度をエルちゃんはどんどん加速していく。


「ちっ、どっから来るんだ…」

ターティルは初段を躱されそのまま周りを走るエルちゃんに焦りはじめた。自分の目でも捉えることが出来ないほど速くなっていったからだ。これじゃあ予測することも読むこともできない。感知しようにも風の音がそれを邪魔する。そんな中、ターティルはそっと目を閉じた。


(目を閉じた!?)

エルちゃんはターティルの周りを旋回しながら相手の様子を伺っていたが思いがけない行動に動揺する。なにせ、敵の目の前で目を閉じ視覚を自ら遮断するのは自殺行為にも等しい。それこそ、本物の剣豪かなんかでもない限りは…。ましてや、エルちゃんのスピードはどんどん加速していくばかり。それを予知して防ぐのは至難の技だ。

(残念だけどここで決めさせてもらうよ!)

エルちゃんは急加速をしたまま方向を変えターティルに直進する。

瞬間的な一撃。その一瞬だけ音の速さを超えたとさえ錯覚するような一撃はターティルを貫いた。

「かはっ!」

ターティルはそのまま倒れふした。

「ふふ、これで私のか、ち…?」

エルちゃんは勝ったと思いターティルに振り返ろうとするがその場に膝から崩れ落ちた。

「あ、はは。まさか、見破られるなんて、ねぇ…」

瞬間的な交差の直前、ターティルはエルちゃんと刃を交えたのだ。それも、諸刃の剣で。カウンターは見事エルちゃんにヒットしていたのだ。エルちゃんが分からないほどの速さの一撃をターティルは与えたのだ。それ故に少し、カウンターが当たったのを気づくのにエルちゃんは遅れた。エルちゃん、ターティルは相打ちで共にダウンした。



「くそ、手数が足りねぇ!」

バランスよく攻めてくるルウスとエイラにアグナスは遅れをとっていた。隙を上手くついてくるあたり相当の手練だと思っていたがここまでとは思わずアグナスは防戦一方だ。魔法で牽制すればルウスがそれを無効化する。まるで魔法の中心が分かってるようにピンポイントで魔法を弾くのだ。そんな神業をアグナスは見たことなかった。無論、そんな芸当できるやつなど早々いないだろう。

「エイラ、このまま」

「了解!」

相変わらず左右交互に入れ替わりながら攻撃してくる二人にアグナスは苦戦する。

(エルちゃんは一人やってくれたみたいだがサポートが間に合わなかったか…。こっからどうすっかなぁ)

正直、このまま防戦だけだとジリ貧にしかならない。いい加減、ここでアクションを起こしておかないと。救援は来ないと考え、アグナスは自分をフルブーストさせる。

「エイラ離れろ!」

異変に気づいたルウスが叫ぶ。

「急に動きが!?」

アグナスはエイラが前に出た瞬間、足にだけ風魔法をかけて加速させる。エイラの袈裟斬りを身をかがめてギリギリで避ける。そのまエイラの懐に潜り込む。エイラはなんとかアグナスに向けて刃を反転させ振ろうとするがそれは遅かった。アグナスは二重に風魔法を剣を振るう力にブーストさせた。瞬速の一撃がエイラを斬り裂いた。

「っ!」

「くそっ!」

ルウスは一度下がり体制を整える。アグナスも一人やれて少し肩の荷が軽くなる。

「奥の手を使わせるたぁ、流石だな。正直やばかったぜ。お前のその魔法を打ち消す芸当には驚かされたがな。どうやってんだ?それ」

「簡単なことだよ、魔法にはそれぞれ核がある。そこを突けば魔法は簡単に原型を失い霧散する」

「簡単なことかよ、俺でさえ魔法の核の場所は知らないってのに」

「そういうものだよ。けど、こっちもビックリさせられたね。魔法にそんな使い方があったとは」

「だからあんま使いたくはなかったんだけどな」

「そこまで君を追い詰めたこと、誇っても?」

「構わねぇよ、なにせ本気を出すのはお前で二人目だからな」

「光栄だね」

お互い、構えを取りつつ左へ右へとずれていく。先に動いたのはアグナスだった。

「うらぁぁ!」

体全体に風魔法をブーストして瞬速でルウスに近づく。そのまま剣に炎魔法を付加させて振るう。炎の斬撃がルウスを襲う。

「はぁ!」

しかし、そんな攻撃さえもルウスは打ち消す。奮った勢いとともにアグナスに急接近する。

「ちっ!これも打ち消すのかよ!」

アグナスは近づいてくるルウスから距離を開けるように下がる。もちろん、風魔法のブーストを使って。

「くっ、追いつかないか」

魔法がなければあんな回避の方法は使えないだろう。しかし、今相手にしてるのはデュアルムだ。ルウスは悪態をつきながらも攻めの手を緩めない。アグナスも魔法を打ち消す能力に近づかれればブーストが厳しくなると思い、ある一定の距離を保ちながら隙あれば攻撃をしている。お互い譲らない戦いだ。このまま消耗戦に持ち込まれるかと思いきや先に音を挙げたのはアグナスだった。

「はぁ、はぁ…」

「それだけ魔法を行使していれば魔力が先に尽きるだろう」

「これも、おまえの、策って、わけか?」

「結果的にはそうなんだろうけど、君との試合でそこまで頭が回らなかったよ」

「へっ、食えない男だな」

「君の名前を聞いても?」

「アグナス、アグナス・ベルフォードだ」

「俺はルウス、ルウス・アーカディアだ」

「しっかりと刻んだぜ、ルウス」

「俺もだよ、アグナス」

お互いに名前を呼び合い、自分をいかに追い詰めた相手であるかを確認する。

「そろそろ決めさせてもらうぜ」

「そうだな、俺もあまり余力がないからな」

「はっ、嘘がお上手だな」

「これ以上は消耗できないんだよ」

愚痴りながらもアグナスは構えていく。それに合わせてルウスも構える。

「なら、これで終わらせてやる!」

初段からの二重加速ダブルブースト、アグナスはエルちゃんと同等の速さでルウスに接近した。ルウスもそれを読んでいたのか剣を振るう。しかも、大振りに。

「もらったぁ!」

アグナスがそれを見逃すはずなどなくルウスを余すことなくもう一度二重加速させて斬った。だが、アグナスには斬った手応えがなかった。

夢現ムゲン

アグナスが斬ったルウスは最初からそこにいなかったかのように消えた。

「なっ…」

驚く暇もなくアグナスはどこからともなく現れたルウスの大振りな剣に斬られるのだった。

アグナスはそのまま倒れ動かなくなった。アリシアクラスのアグナスはダウン。これでアリシアクラス対フィナクラスは3対2になった。



「くそ!なんだこいつのバカ力は!」

「気ぃ抜くなよ」

モルーとアベルトは一人突っ込んできたファルシスの相手をしていた。しかし、ファルシスのその剣舞は荒く強い。守護魔法を全力で注がれてるモルーでさえ危ないくらいに。剣はすべて弾かれ、弾かれた隙を容赦なく突いてくる剣舞の速さ。アベルトもファルシスの変わった攻撃に苦戦する。

「あわせろ!」

「んな無茶な!」

アベルトは四連撃の斬撃を放ったがその全てを弾かれる。そんなアベルトのできた隙をモルーがカバーするように交代で入りファルシスを牽制する。ファルシスも負けじとただ力だけを振るうようにしてモルーを押し返していく。だがそこは、アリシアクラスの中でもトップのモルー。荒削りなファルシスの剣舞をうまい具合に逸らす。

「くそ、力量差がありすぎる!」

ただ単純な力技だけならモルーは負けてるだろう、しかしそこは実力者モルーだ。そんな力技だけでは倒されない。アベルトはファルシスの攻撃にどう反撃するか悩む。そんな束の間、ファルシスが狙いを変えた。モルーを一撃で吹き飛ばす。

「くっ!」

それをガードしたモルーはダメージを最小に抑えられたがその場から吹き飛ばされる。ファルシスは最初に後方支援をつぶすために狙いをフィールに変えたのだ。

「はっ!」

ファルシスの一振りが容赦なくフィールを狙う。フィールは急な接近と剣を出していなかったのも相まって不意を取られた。それでもフィールはすっと左手をファルシスに掲げた。次の瞬間、振り下ろされたファルシスの剣は見えない障壁にぶつかり弾かれた。

「なに!?」

「…」

もちろん、フィールの守護魔法だ。いくら馬鹿力を発揮してるファルシスでさえフィールの守護魔法までには遠く及ばない。弾かれた隙を狙ってモルーが斬り込む。が、ファルシスは弾かれた反動で後ろに下がり避けられる。

「なるほど、そういうことか」

「…」

ファルシスは再度狙いをフィールに向ける。モルーがそうはさせまいとフィールとファルシスの直線上に立つ。

ファルシスは構わずそのまま突撃する。モルーも相反するように走り出す。二人が交わる瞬間、モルーに障壁が張られる。ファルシスは勢いに乗ったままモルーと剣舞を舞う。まるで障壁を気にしないかのように。モルーもなるべくファルシスの攻撃を避けながら剣舞を舞う。どちらも激しい消耗戦を続ける。しかし、流石は指揮官に選ばれただけはある。ファルシスが僅かだが有利にことを運んでいた。モルーはそんなファルシスの攻撃を掻い潜るもミスが生じる。その隙を逃すこと無くファルシスが畳み掛ける。一撃は障壁が弾いてくれたがニ撃めを障壁が弾けずモルーは剣でガードするが、またもや吹き飛ばされる。ファルシスはそのままさっきよりも速くフィールに突撃した。フィールは守護魔法を集中させる。

「らぁぁぁ!」

「…っ!」

全力で張った守護障壁はファルシスの刺突で突き破られてしまった。

「なんでっ!?」

フィールは柄にもなく焦る。それはそうだ、今まで破られたことのない守護魔法を突破されたのだから。慌てて剣に手を伸ばすが…。

「おそい!」

ファルシスは容赦なくそのままフィールを斬り裂いた。

「ぁっ...!」

フィールはファルシスに斬り裂かれそのまま地面に突っ伏した。これでアリシアクラスは残り三人。

「くそっ!」

モルーは最大の防衛が撃破されて焦る。今までファルシスとの剣を重ねてる時、守護魔法の存在は大きかった。何度それに助けられたか。数えて三回ぐらいだよ。

「どうするんだ?アベルト」

「モルー、俺のために死んでくれ?」

「ちょっとまてやおらぁ!」

アベルトはいい笑顔をしていた。

「結構全力で頑張ってるんですけど!?」

「冗談に決まってるだろ」

「いや結構ガチだったろ!?」

そんな言い争いをしてる間にもファルシスは近づいてくる。空気を読んでかゆっくりとだが。

「んで、どうすんの」

「左側面を徹底的に攻めろ」

そんなアベルトの指示にモルーは何故なのか不思議がる。

「…了解」

意味はわからないが何かあるのだろう。アベルトの指示はいつだって正解だったから。それをモルーは知ってる。なにせ、小さい頃から張り合ってたライバルだから。むしろ、アベルトのおかげでモルーはここまで上り詰めれたのかもしれない。

そうと決まればモルーは動き出す。それを見てファルシスが構える。モルーは指示通りに左側面を徹底的に攻め始める。その攻撃にファルシスも少しばかりだが不思議に思っている。モルーが戦闘を開始してから数十秒。周りをぐるぐると回るように剣舞を舞っていた二人の間にアベルトが入る。しかも不意に。

「っ!」

ファルシスはモルーの剣を弾く力に乗せて後ろから襲いかかってきたアベルトの剣を弾く。モルーが左側面を徹底的に突いてくるのに対してアベルトはランダムな方向から仕掛けてくる。それに…。

「ぐっ!?」

アベルトがいる逆方向から衝撃を受けてファルシスはよろめく。まるで拳をくらったかのように。その方向へ剣を振るうが誰もいない。アベルトではなくモルーの不意打ちかと思えばそうじゃない。反応が遅れてギリギリでモルーの攻撃を弾くがアベルトの剣戟は防御できず後ろに飛ぶ。しかし、アベルトがそんな隙を逃すはずがなく追撃する。その剣戟をファルシスは馬鹿力で剣を振って弾きとばす。そうして、圧倒的な大きな隙を作ってしまう。アベルトの読み通りに。

「やれ!モルー!!」

「おうよ!」

その隙はさっきまで左側面をばかりを突いてきたモルーが狙う。全て掌の上だったのか。ファルシスは踊らされていたことに気づく。だがそれも気づくのに遅すぎた。モルーの容赦ない斬撃が迫り来る。が、その刃がファルシスに届くことは無かった。

「かはっ!?」

「ふぅ、危ない危ない。なんとか間に合ったな」

アベルトからはモルーと重なって見えなかったが。そこには、ルウスがいた。モルーはルウスの突きを喰らいその場に倒れる。ルウスは一瞬でモルーの意識を飛ばしたのだ。これでアリシアクラスは残り二人。フィナクラスと並ぶ。

「助かった、ルウス」

「いやいや、俺の方こそ遅れてごめん。すごく強かったから、あの人たち」

「くっ、あともう少しだったんだがな」

ルウスの救援と予想だにしなかった相手の増援にアベルトは苦難顔になる。

「残るはお前一人だけだな」

ファルシスとルウスは余裕の表情でアベルトを囲う。

「手詰まりってわけか」

「どうみても、な」

モルーの不意打ちにルウスの救援は予想外だった。アベルト自身、アグナスやエルちゃんが負けるはずがないとおもっていたが少々甘く見すぎていたのかもしれない。それでも、アベルトの表情は始まった時と同じ、余裕のある表情だった。そんなアベルトの様子にファルシス達は警戒する。けれど、どうみてもアベルトは確実に追い詰められてるはずなのだ。それなのにどこか引っかかりがあるのだ。

「ま、ここまでやられるとは流石に思っていなかった。さすがだな」

「そいつはどうも」

「だが、一つだけ忘れてるな」

「なにがだ」

「残り二人だ」

アベルトの言葉に合わすようにアベルトの背後から、その影から一人、姿を現した。

「なっ!?」

「馬鹿な!?」

「相変わらず影が薄いやつだな」

「それがし、元は忍者の部類でござる故致し方ないことでござる」

そこには全身黒装束を身にまとったまんま忍者が現れたのだ。ちょっと涙目の。

「ま、今回はそれが幸をなしたということだな」

「作戦通りでござるな」

ファルシスは改めてアリシアクラスの人数を数えるのだった。

「確かに…一人足りてなかったな…」

「あれ、そういえば俺の握手交わした相手って…」

「もう忘れ去られてるぞ」

「それがし、忍者でござるから!」

もう涙目じゃなくて泣いてるよ。

「ま、これでwin-winだな」

「やられたな」

それぞれ剣を構える。忍者もといハンゾウはみんなが持つ剣よりも少し小ぶりな刀、忍者刀を取り出す。

「それじゃあ、やろうか」

アベルトがニヤリと笑いファルシスと向き合う。

「あぁ、そうだな」

ファルシスも同じように向き合う。

「いざ、尋常に」

「参るでござる!」

こちらも同じようにしてハンゾウとルウスが向き合い走り出す。



ハンゾウは走り出すと同時に分身した。

「くっ、やっぱり忍術は魔法とは違うのか」

ルウスは魔法の核を探ろうと集中して三人に増えたハンゾウを見据えるが、そのどれもにも魔法の核は見当たらなかった。

「忍術は魔法などのような超常現象ではござらんよ!」

「くっ!」

ハンゾウの多重攻撃にルウスは感覚を頼りに防ぐがあまりの速さと分身の術で惑わされて肩と脚に何発かもらう。

「拙者の忍術は体術と自然環境によって編み出される術でござる」

そう、自慢げにハンゾウが答える。そんな姿をファルシスと戦っていたアペルトが愚痴を漏らす。

「あのばか、言いやがったな」

ルウスはそんなハンゾウの言葉にしばし考える。

「自然環境…。ふむ、なるほどな。授業を真面目にやっててよかったよ」

「ちょっとした、拙者からの助言は役に立ったでござるか?」

「相手に塩を贈るとは大したやつだな」

「この勝負は公平なもの。忍術とは剣士でいうなら邪道の技でござるからな」

「なるほど、律儀な忍者もいたものだな」

「では改めて、参る!」

ハンゾウは走り出すと同時に手裏剣を投げる。それをルウスは何個かは剣で弾くが動きを最小限に躱していく。ハンゾウはさっきと同じように分身する。これ以上長引けば不利になると思いルウスは大振りになる。アグナスと戦っ時のように大きな隙を自ら作る。ハンゾウもそんな隙を見逃すはずなくこれを機に攻める。

「貰ったでござる!」

ハンゾウの放つ鋭い一撃がルウスを刈り取ろうとするも、ルウスはその場から消える。

夢幻ムゲン

「!?」

アグナスの時と同じようにどこからともなく現れたルウスはその場で固まっていた黒装束を着込んだ原木を斬った。

「その技、貴殿も忍者とお見受けするでござる」

ルウスの後ろから声がして振り返ると、そこにはハンゾウが立っていた。

「正確には剣術を組み合わせたものだ」

「ふむ、やはり忍びの家系でござったか」

ルウスはそう自分の招待を明かす。というか、いきなりのことといいあまりのキャラの濃さだったり秘密にしてたことがいろいろとべらべら喋ってバラしていくせいで観客が途中からついていけてなかった。

「俺の家系はもともとは風の忍びであったらしい。いまとなっては術もそんなに残ってないし忍びの訓練も受けちゃいないけどな」

「世代が変わるのは世の常でござる。拙者もそうではござったがやるべき事のため、守るべきもののために自ら忍法に進んだでござる」

「強いんだな、お前は」

「拙者はまだまだ弱いでござるよ」

「いいや、つよいよ。俺とは違ってその道を選んだんだから」

「捨てるのもまた一つの強さでござる。恥じることではござらん」

「名を聞いてもいいか?」

ルウスは本日これで2度目だなと肩をすかして目の前の、強き忍者に問うた。

「拙者、ハンゾウと申す」

「ハンゾウ…。しかとこの胸に焼き付けた。律儀で優しき忍者」

「褒めすぎでござるよ」

そういってハンゾウは照れくさそうに頭をかく。

「拙者も貴殿の名を聞いてもござらんか?貴殿とは拙者、気が合いそうでござる」

「俺もそう思ってた。俺はルウス、ルウス・アーカディアだ」

「ルウス殿、拙者もしかとこの胸に刻んだでござるよ。忍びの人情、感謝するでござる」

「俺もだ」

お互い、獲物を構える。動くのは一瞬。

「っ!」

「はぁっ!」

瞬間的な交差。お互いが認めあった次の時には二人は倒れていた。観客には一体何が起こったのかわからなかった。


「やばっ、ハンゾウあんなに強かったけ?」

「少なくとも俺とは互角の戦いをしてたな」

そんな忍者の一瞬の戦闘にライとグラウは普通に感想を述べる。ちなみにだがレグナスとグレイツバルのおっさん達は。

「「………」」

ギリギリで見えてなかったご様子。

いまの剣士学生はここまで強くなっているのかとひたすらにおどろくばかりである。


むっちゃ遅れてすみませんでしたァァ!!

ということで、いつも読んでくださってる皆様方、本当に、本当にありがとうございます!こんなもう、終わったんじゃね?作者死んだ?みたいな程に更新がクッソ遅い我のラノベ?を読んでくれて心の底から感謝感激です!

もう、それだけの心の頼りで。

というか、現在スランプ中で、ある程度の回想は思いついて入るのだが、それまでの繋というか、我の日本語のポキャブラリー?のなさが

(´;ω;`)

これだけは頑張って出そうと思ってたのにいよいよここでつまづいた。

ほかの奴も頑張って出さなきゃなのに...。

リアルではバイトやらコンクールやらで休みがそんなにある!はず!

なのにかけないぃぃぃ(´;ω;`)

ま、そんなわけでまた遅れる可能性大!すまぬ!本当にすまぬ!正月や冬休みはところどころ休みがあるから!頑張って書くから!読者の皆様方、こんな長い後書きを果たして読んでる人がいるのかもう怪しいけれど!これからも、暖かい心で見守ってくれる嬉しいぞ!

ということで、サラダバー!人間ども!




アベルト「つか、キャラ出しすぎの間違いだろ?」

ファルシス「まぁ、そうだろう」

ルウス「ほぼほぼ皆口調が同じだからわかりずらいよな」

アグナス「んなん、わかりやすいのはハンゾウぐらいだろ」

フィール「...(こくこく)」

ハンゾウ「拙者でござるか!?」

エルちゃん「口調だけ濃いもんね」

モルー「確かにな、こいつだけは分かるだろうな」

ハンゾウ「貶されてるのか褒められてるのか分からないでござるな」

エルちゃん「そういえば、出たのはいいけど私達の出番ってこれだけで終わりそうだよね?(フラグ)」

モルー「あ、」

アベルト「おい」

ルウス「はい俺達の出番終了ー!」



エルちゃん「次回!」

アグナス「勇者の末裔の過去」

アベルト・ファルシス「次回も見てくれよな」

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