滅茶苦茶なクラスメイト達
「おはよー」
俺はそう言って教室の扉をあける中に入る。
「おう、おはよー」
「おはよう」
「お、女神様もおはようございます」
いつものように、いつも通りに先に来ていたクラスメイト達が挨拶を返してくれる。そして、俺の腕に抱きついていた女神様はそんなクラスメイト達に返事を返す。
「うむ!皆おはようだ!」
こうしてまた新しい一日が始まるのだった。
そう、騒がしい一日の…。
現在、この学院はとある問題に直面していた。それは
「おらぁ!今日こそ闘えやぁ!」
時刻はまだ朝のSHRが始まるちょっと前、クラスのみんながほぼ揃ってるところに単身で教室の扉を勢いよく開けて突っ込んできた男子生徒が一人。彼はこの学院にいるけれどなんと、制服が自分たちと着ているとものと違うのだ。なぜなら彼はこの国の生徒ではないから。
「だるい」
「きつい」
「めんどくさい」
「と」
「いうことで」
「来年」
「無念」
「また来週〜」
そんな血の気のある生徒をうちの、アリシアクラスのメンバーはいつものメンバー含みなぜか魔法でも使ってるみたいに息が合う生徒達で追い返していた。おもむろにだるそうに。それをフィナクラスのメンバーが怒りだす。
「おまえらそれでも剣士かよ!?」
おもむろに悲しそうな顔で。
さて、今のこの学院の状況は大きく変わった。要するにまだ大人の事情を知らない生徒は大きくいって対立しているのである。カオスが現れてその1週間後、フィナの自国であるラフェルナ王国がなんと国ごと隣に引っ越してきたのだ。それからというもの、問題ありまくりの出まくりで両国の大臣がたはさぞ頭を悩ましたことであろう。主にグーデンとかは俺を怒る気力すらなくしてたし。そんなハプニングがあって更に1週間後、だいぶ落ち着いてきてはいたがここでまた新たな問題がでる。そう、それこそが今ここの問題である。フィナがせっかくだからと剣士の学院をくっつけてしまったのだ。両国の。もうわかると思うけどさっきの血の気のある男子生徒はラフェルナ王国の剣士学院に通う、通称フィナクラスの生徒だ。そして、俺たちはというとさっきも言った通りアリシアクラスに改変である。当のアリシアはすごくご満悦みたいだが。しかし、このクラスはつい先日、一人の生徒が転向したのだ。つまり、1人減ったのだ。だれが?それはもうお分かりであろう、うちの親友ですよ。
「いい加減グラウと戦いなさいよ!このヘタレ剣士!」
男子生徒の後ろ、そこに美少女がいた。正確には浮いていた。その翡翠色の髪をふわふわと揺らしながら。
「いやぁだぁぁぁ」
「なんでそんな全力で拒否るのよ!?」
俺のまさかの全力否定にさすがのフィナもビックリしていた。そんな茶番をやっていると後ろの扉が開く。
「ふぅ〜、間に合った!」
そうしてまた美少女がこの教室に入ってくる。セミロングの茶髪に綺麗なエメラルド色の瞳、星型のヘアピンがトレードマークのルナさんである。そんなルナさんはこっちをみるなりため息を吐く。
「はぁ、またやってるの?ライ、フィナちゃん」
「だってこいつグラウとたたかってくれないんだもん!」
ちなみにこの学院の中でフィナちゃんなどと気軽に呼べるのはルナだけであろう。俺はかろうじてフィナさんならオーケーらしい。俺に女神様とか呼ばれると鳥肌が立つらしい。
「俺はココ最近のごちゃごちゃでつかれてるんですぅ〜」
「何を言っとろうに、とっくに傷は完治したであろう」
俺がそんな言い訳をしているとそれを否定してくる人物がもう1人。いや、人というより龍?
「あ、カオスちゃんもおはよう」
「うむ、おはようじゃ雷娘」
「ルナってよんでくれないかな?」
雷娘ことルナはそんなカオスに引きつった笑顔をしていた。というか、いまだにあの落雷を根に持ってのことだろう。
「妾もお主がご主人と戦うところをみてみたいんじゃが?」
「そうよそうよ!グラウがあんたなんかに負けたなんて私はこの目で見ない限りは信じないんだから!」
と、はやし立てる2人に俺は
「ぐーzzz」
「「ねてる!?」」
「あはは…」
なんでこの騒音というか騒がしい中というか矛先が自分に向いてるにも関わらず寝られているのかあまりにも不思議すぎてびっくりした二人だった。そんなやりとりにルナも苦笑いだ。すると不意に廊下から誰かが走ってくる音がした。時間的にはもうSHRが始まってもおかしくない時間帯、考えられる人物は…。
「こら、フィナ、カオス、迷惑をかけるな」
「うぁ」
「うむぅ」
ポル先ではなくグラウだった。グラウに叱られて二人とも大人しくなる。
「だ、だってぇ」
「うむぅ〜」
そんなグラウにフィナとカオスは目で訴える。が、グラウは関係なく二人と一匹?を教室に連れ戻すのだった。
「迷惑かけたな」
「んや、大丈夫よ〜」
それだけ言ってグラウはずるずると二人を引きづって行くのだった。もう一人の男子生徒はその後ろを苦笑いでついて行くのだった。こうして朝のゴタゴタは終わり入れ違いで入ってきたポル先の朝のSHRを始めるのだった。
「明日からこの学院でイベントを主催することになった。毎年おなじみでも何でなく、たったさっき出来た新しい行事をすることになった」
「なんだそれ」
「めんどくさいのは抜きね〜」
「「そうだそうだ」」
いきなりのポル先の発言にみんなが抗議する。そんな自分のクラスのみんなを見てポル先は
「このクソガキ共が…」
頭を抱えるのだった。
「ええい!ごちゃごちゃ言わずにやれ!」
とまぁ、最終的には強制的にやらされるのだ。
「このブラック教員ーー!」
誰かがブーイングの中そう叫んだ。
「何か言い残すことはあるか?」
「この鬼畜教員ーー!」
ライは今、かつて誰かが受けたグリグリ攻撃の最初の部分に立たされていた。つまり、ライの頭はポル先の両拳でガッチリと挟まれた挙句、体がぶらーんと宙に浮かされているのであった。ポル先はつい先日どころかネアがこの学院を襲来した時や、試験試合の時にライの実力を知っている。しかし、そんな狂気的な力がある目の前の少年にもポル先は怯まないし怯えない。たぶん、ポル先はどれだけ生徒の方が力が強くてもちゃんと教員として怒ってくれるタイプの人間なのだ。そんな優しい教員だからこそこの学院でも人気があるのだ。ちなみにフィナクラスのメンバーからも人気だったりする。基本、ポル先はこの国の人じゃなかろうと平等に接してくれる。それ故にフィナクラスのメンバーもここに受け入れられている。しかし、それでも対立は生じるものがあった。とまぁ、ポル先のいい話は置いといて。
「これは隣国との決定事項だ、そう悪いもんじゃないから心配するな」
俺は既にグリグリ攻撃を受けた後で床でピクピクしていた。さすがにさっきの気迫にアリシアは何も出来ず見てるだけだった。今はピクピクしてるライに治癒魔法をかけてるとこだった。
「1週間後にまた、試験試合をする」
「「「えぇーー!!」」」
まさかの発言にみんなビックリする。しかし、ポル先は「まぁまて」とみんなを制す。
「というのは、ただの建前だ。本当はこの国の学院剣士、つまりお前達とつい最近ここの隣に引っ越してきた隣国の学院剣士、ラフェルナ王国の女神様がおられるクラスとこの国の女神様がいるクラス、こことの対立試合。要はクラッツセイント王国とラフェルナ王国の学院剣士の対決だ」
その言葉に全員が気だるげにする。明らかにやる気なしだ。
「ちなみに上位のヤツらにはそれぞれ報酬があるそうだ。学院長たちはこれをラフェルナ王国との最初の恒例行事にしたいそうだからせいぜい頑張れ」
「報酬ってなんですかー?」
ポル先の言葉を聞いて大半がやる気を出し始めた中、報酬が気になる生徒、眼鏡とモブキャラ的な感じがトレードマークのラックが質問する。
「そうだな、学食一年分だったり女神近衛騎士への推奨だったり、ほかにもラフェルナ王国のテーマパークの優待券なんかもあるとか言ってたな」
「よっしゃぁ!みんなやろうぜぇぇ!!」
「「「「うぉぉぉぉぉ!!!」」」」
報酬内容を聞いて一気にMAXまでボルテージをあげるクラスのメンツを見てポル先は額を抑える。なぜあまりにも、ここまで報酬がないとやる気を出さないクラスになってしまったのかと…。
そんなクラスみんなの変化にアリシアビビりまくっていた。
ちなみに同じ頃、フィナクラスにも同様の内容が伝えられていた。
「ということで皆さん、試験試合頑張ってくださいね」
スレンダーで美人さん教師がそうにこやかにフィナクラスのメンバーに試験試合のことを話し応援する。
「よっしゃぁ、これであいつらと闘えるな」
「そうだな、いっつも逃げられてたしな」
「私たちが負けることはないんじゃない?」
「かもな」
「よし、みんなで全勝を目指そうz…」
フィナクラスのメンバー達はみんな、今までのアリシアクラスのメンバーのやる気のなさを見て自分たちが完全に勝つと思っていた。そんな中、唐突に物凄い気迫を出していたアリシアクラスの団結した声がフィナクラスにまで駆け巡った。
「「「「うぉぉぉぉぉ!!!」」」」
「なにごと!?」
「なんだなんだ!?」
いきなりの大声にフィナクラスのメンバーは驚く。唐突にそれも突然に来たものだから。ただ、一人は呆れたように窓の外を見る、それがどこから来たものなのかが分かっていたから。
「相変わらず元気な奴らだ…」
グラウは窓際の席でそうぼやくのだった。
「そういえば、それって学年全体なんですか?」
ルナがそんな質問をポル先にする。
「喜べ、これはお前達だけ、つまり二学年だけの恒例行事だ」
「ふぇ?どうしてですか?」
「簡単なはなし、一年にはまだ剣に不慣れなやつもいるし基礎がそもそもなっていないからな。かといって、三年は郊外遠征や洞窟攻略やら外出が多いからな。今は何クラスかはここに戻ってきてるみたいだがみんな観戦すると言っていてるし疲労もある。そいつらに試験試合をやらせるのも酷だろ?」
「納得しました」
ルナは満足したのか席につく。ポル先もそれを合図に話を続ける。
「今回はジャッジとしてこちらの国から女神近衛騎士隊長のグレイツバルが、向こうからはレグナスさんが審判をしてくれるそうだからもしお目につければそのまま女神近衛騎士になれるかもしれないな」
「よっしゃぁ!」
「やったね!」
そんなお得情報を聞いてクラスメイト達はそれぞれ喜ぶ。そんなクラスメイト達の様子を見てアリシアがポカーンとする。
「み、みんなそんなに騎士になりたいのか?」
そんなアリシアの質問にみんなははにかむ。中には笑い出す者もいた。そんなクラスメイト達にアリシアは困惑する。そんな困惑するアリシアにクラスメイトたちは優しく、そして強く伝える。
「当たり前ですよ、女神様」
「俺はずっと生まれてからこの国が好きです」
「私も、この暖かい国が大好き」
「そしてこの国を作ってくれた歴代の女神様に今の、アリシア様にも感謝してるんです」
「ここに女神様が嫌いな奴なんて誰一人いないですよ」
「みんなこの国が好きなんです」
「そしてこの国を作ってくれた女神様たちが好きなんです」
「だからこそ、この国を自分たちの手で守りたい」
「今はもう戦争なんて荒事はないですけどね」
「そうだとしても、ほかにも魔物がいる。そんな外敵からこの国を守りたい」
「魔物だけじゃない、街中で困っている人がいるならそれを助けるのも騎士の仕事です」
「私たちがそうされてきたように、今度は私たちがそうしてあげたい。この国がしてくれたことを今度は私たちがしてあげる番」
「だからこそ剣士としての誇りはあるし立派な騎士になりたいんです」
「みんな、感謝してるんですよ。この国に、女神様に」
みんなの強い思いとこの国への感謝の気持ちを素直にぶつけられたアリシアは
「ぇ、ぁ…」
泣いていた。みんなの真っ直ぐで優しくて、それでいて愛情を感じるその一つ一つの言葉に。アリシアの瞳からは自然と涙が溢れていた。ここまで真っ直ぐに感謝されたことなどなかったから。いつも儀礼的なものが感謝の印だと思っていたから。こうしてクラスメイト達と触れ合って、近付いて、そうした中でこうも純粋に「好きだ」と言われたことが嬉しくて、幸せで。こうも私は、この国は愛されていたのだと実感出来て、でもどう答えたらいいのかわからなくて。ひたすらに嬉しさと愛情とで心の中が一杯になっていく。
そんなアリシアにクラスのみんなは暖かく微笑むのだった。ポル先も普段はだらしないクラスだがまさかみんながこんなことを真剣に思ってやっていたのだと思うと心のうちに来るものがあった。
「あ、ポル先もないてるー!」
「ば、ばか!泣いてなんかないからこっち見んな!」
「あ!ほんとだー!」
「まじか!?」
「まじだ!」
誰かがポル先というがさすがにポル先も怒る気とかそういうのになれてないというか余裕がなかった。そんなクラスにみんなが微笑む。暖かくて優しくて。なんだかとてもフワフワな気持ちで。そうしてみんなで笑いあっていた。
「ほんと、私たちのクラスは滅茶苦茶だね。普段はみんなやる気なさそうにしてるのに何かある時はみんな一つになってる。誰かが困ってたらみんなが助ける。暖かくて優しいところ。ここだけじゃなくて他のクラスのみんなも、街のみんなも、この国のみんなが」
ルナがそう、机にへばりついて笑いあってるみんなを見渡す。その目は優しくてどこか遠い目をしていた。それはまるで、昔を見ているような…。
「そうだな、こんな国はそうそうないだろうな。俺もこの国には感謝してるし」
「私も感謝してるよ?けど…」
「けど?」
「ううん、なんでもない。私はこの国の出身じゃないけど、それでもこの国に尽くしたいなって思う」
「それは初耳なんだけど?」
「あれ?そうだっけ?」
「てっきりここの出身かと思ってた」
「あはは、違うよ。私もライと同じで違うところから来たの」
「へぇ、どっから来たんだ?」
そんな俺の些細な質問にルナは俺から視線をそらす。その視線の先にはアリシアを囲んで慰めてるクラスメイトたちやポル先をからかってる奴らもいた。
「ここと同じようなところ、かな…」
優しくて、悲しそうな顔でルナはそう言った。
「なんだそれ」
俺はそんな曖昧な答えにちょっとだけ笑ってやる。
「むぅ、なにさー」
「お前にそんな顔を似合わんぜよ」
そう、気恥しいのはライは隠すように変な口調でいってルナの頭をポンポンと撫でてやるのだった。そのまま通り抜けてアリシアの元へ行くのだった。そんなライの後ろ姿をルナは見つめるのだった。
「ほんと、無茶苦茶なんだから、このクラスは…ふふ」
そんな哀愁さえも吹き飛ばすほどのこのクラスの優しさと幸せに、ルナはほんのちょっと、心の底から微笑むのだった。
遅れてすまぬーみなのものー!
ということで、いつも読んでくださってる皆様方、本当にありがとうございます!
いやぁ、土日月とバイト三連チャンフルコースで入ってた挙句、まさかの繁盛しまくりで忙しくって家帰ったら即睡眠。平日は追試のことやらいろいろとあったのだ!という、言い訳だけさせておくれ?今日明日とバイトが休みだからこうして急いで書き上げた所存なのでゆるしてたもう!!
けっこうしんどい1週間だったぞ、我は…。
今週は聲の形を見に行きたいと思ってる我だがな!ちょっときになるのだよ!
ほんと、遅れてすみませんでした。楽しみにしてくれた人がいれば申し訳ございません。
ま、このようなバイトと学校による事情で遅れるかもしれない事件は皆様の寛大なお心で許してくれると我嬉しいぞ!え、許さない?なら、代わりにネアのサービスシーンで(以下略
とりま!3章突入です!プロットをちょっと組み上げる時間も欲しいので今週の水曜ももしかしたら遅れるかもしれないのですみません!
では、我はこれにて!サラダバー!人間共!
ライ「いやぁ、ほんとうちのクラスはあれだな」
ルナ「だね、私もあそこにいるだけで優しい気持ちになっちゃうよ」
グラウ「俺はびっくりだがな」
アリシア「う、ひっぐ…」
ライ「おぉよしよし」
ルナ「ふふ、あれだけ素直に感謝されたら誰だって嬉しいよ」
ライ「だな」
フィナ「…」
グラウ「安心しろ、ラフェルナ王国のみんなもお前に感謝してる」
フィナ「ほんと?」
グラウ「あぁ」
フィナ「でも、私わがままばっかりで…」
グラウ「みんなわかってる」
フィナ「?」
グラウ「いずれわかる時が来る」
フィナ「ん」
ライ・グラウ「次回」
フィナ「ほら、今は耐えなさいって」
アリシア「ぐすっ、うん」
フィナ・アリシア「滅茶苦茶なクラス対抗戦」
ルナ「次も見てくれると嬉しいな」




