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滅茶苦茶なシスコン剣士の妹件  作者: 魔王
主人公だけが主人公かと思った?やってきたわがまま女神と過去の混沌
33/83

狂気の宴

第2章ラストスパート!

「ルナ!」

「レオ、アルガ」

グラウとフィナは一緒に動けなくなっていた三人の元へいく。三人ともライ達に救出された後で平たい地面の上で寝かされていた。そこにはアリシアが治癒魔法をかけてるのが見えた。近寄ってみるが三人とも目立った傷あとはない。三人とも生きてることにグラウはほっとする。

「この者達に癒しの風を、ウィールヒンド」

フィナもアリシアと同じように回復魔法を三人にかけていく。グラウはそれを見守ることしか出来ずに暇を持て余す。ふと周りを見て気づいた。

「アリシア様、ライは、ライはどこにいったんだ?」

「うむ、グラウもお兄ちゃんの親友、アリシアでよいぞ!」

「あ、あぁ」

「それと、お兄ちゃんは決着をつけると言っていたぞ?」

そうアリシアはいう。決着とは何のことなのかグラウにはわからなかった。

そして、後ろで倒れている混沌龍がピクリと動いたのにも気づく事は無かった。



「おやおやぁ〜?ここは私が消えて、はいハッピーエンドーでおわりじゃないんですかぁねぇ?」

「いやいやぁ、そういうわけにはいかないだろぉ?」

去りゆくレベンの言葉にそうライは口調を真似て返す。そんなライの隣にはネアがいた。

「普通はあそこで終わるノーがぁ、王道というものじゃなぁいでぇすかぁねぇ?」

「俺の親友を傷つけておいてただで逃がすとでも?」

「しつこい男は嫌われまぁすよぉ?」

「あいにく、ここで終わらすからそれも終わりだぜ?」

「そう」

「二対一とは卑怯じゃぁないですかね?」

レベンは余裕の佇まいでそんなことを抜かす。

「は、よく言うぜ。お前は一体何者なんだ?」

「イヤでぇすねぇ、ちょっとしがない道化師ですよぉ?」

「ただの道化師がドラゴンを呼び寄せれるはずがないだろ?」

「操っていたとはおもわないんですねぇ?」

「操ってたようには見えなかったからな」

「なかなかぁに感が鋭ぉいですね?」

「こういう感だけはよーくあたるんだよな」

「でもまぁ、あなたを見ていると滑稽ですよね?」

「なにがだ?」

「過去に深い傷をつけられ、最後の家族さえも奪われ、追いかけられ、もううんざりなんじゃないですか?ねぇ?」

レベンは最後のねぇ?の部分だけをネアに向かっていう。唐突にその目に睨まれ、言葉の意味に気づく。それは今までネアがしてきたことの罪状だったから。ネアの心が大きく揺らぐ。レベンはより一層、その笑みを深くする。が。

「ネア」

「!?」

ライは急にネアを抱きしめた。急に抱きしめられたネアはびっくりして心の揺らぎが傾く。

「過去の事は気にするなとは言わない。俺もお前を許すつもりは無い。けどな、今のお前はあの時のお前と絶対に違う。魔女の時のネアなんかじゃない。今のお前は、俺の妹のネアだ!」

ネアは震えていた。それは、可能性としてライにうんざりされているということ。こんなしつこく迫った私の事を彼はどう思っているのか。ネアはそれがひっかかりだった。しかし、今の言葉で全てその悩みが吹き飛んだ。

「あり、が、とう」

今日はいったい何回泣けばいいのだろうか。そう思うほどにネアは泣いた。けれど、きっともうこれで心を揺らぐ事はないだろう。そして、その罪はこれから愛する人と過ごして返していくのだから。この一生を持って。そう、ネアは真名を教えた時にライと誓ったのだから。

「おやおやぁ」

「ついには俺の妹にまで手を出したな、道化師」

「さてはてぇ、なんのことでしょうかねぇ?」

「これでお前を逃す理由はなくなったぞ」

「それは困りましたァねぇ」

レベンはそれでも余裕な態度を崩さない。ライにでさえレベンがどれだけの力の持ち主なのかわからない。しかし、ここで逃してはならないやつだということだけはわかった。だから、今日はほんの少しだけリミッターを外すことにした。覚醒とは違う、ライがほんとに誰かを殺すために編み出した心と剣を。本来ならネアを殺すためだけに編み出したものではあったのだが、いざネアと触れ合って使うことが出来なかったライの裏の力。

「おやおやぁ、さっきとは違うというわけですかねぇ?」

「そうだ、俺は今からお前を全力で殺す。いまここでお前を逃がしたらまた同じことが起こりそうだからな」

「では、もうしないと約束したら逃してはくれませんかねぇ?」

「道化師が約束を守ると思うか?」

「道化師は偽りの言葉しか吐きませんが?」

「なら、交渉決裂だな」

「はぁぁ、あれで終わらしておけば良かったものぉ」

「なんとでもいえ」

既にライの心変わりは始まっていた。それは、隣にいるネアでさえ背筋が震えるものを感じるくらいに。それぐらい、今のライは怖かった。恐ろしかった。けど、それは私の愛する彼だと、ネアは逆に惹かれていた。

「まぁいいでしょう、余興のついででぇす。その血泥にまみれた剣舞、受けて立ちましょうかぁ」

そう、レベンがどこからか短刀を取り出す。まるで、虚空から取り出したかのように。そして、ライの瞳は既に光がなくなっていた。ネアが剣を生成しライがそれを無言で受け取る。と、同時にそれは始まっていた。受け取ると同時にライはレベンに向かって駆け出した。その勢いのままに剣を振るう。レベンは焦ることなくそれを短刀で弾く。

「所詮は人の力ですかぁ、それでは私に勝てませんよぉ?」

ライは無言でそのまま剣戟をレベンに浴びせる。しかし、そのどれもを短刀で弾かれるか躱される。しかし、

「おや?」

レベンが一瞬だけ後ろに現れた気配に気を取られ防御を怠る。その瞬間を暗殺者となったライが逃すことなく、その頚動脈に躊躇うことなく剣を振るう。しかし、レベンは風に誘われるようにフワッと浮き上がりそれを避ける。それを容赦なくライは追撃する。そんなちょっとしたジャンプの滞空時間にも関わらず二人は百を超える剣戟を舞っていた。着地しても嵐のような剣戟には終わりが見えずその場だけ地面への切り傷がおかしい程に跡がついていた。

「これがあなたの究極というやつですかぁ?」

そんなレベンの声に答えることなくライは無言で人体の急所だけを狙い剣を振るい突く。このままでは拉致があかないような剣舞を踊っている二人の間に火球魔法が落ちた。二人の間でそれは爆散し二人共その爆発に巻き込まれる。しかし、そんな中でも二人が奏でる剣舞が止むことはなかった。火球魔法を放ったのはネアだ。それも微調整してライにダメージが入らないように完全に計算しつくした魔法だった。しかし、レベンにその魔法が効いた様子はなかった。

「横やりとはなかなかぁに無粋な真似をしますねぇ?」

レベンはいつの間にかネアの後ろにいた。剣戟は鳴り止んでいないはずなのに。レベンは迷うことなく構えていた短刀をネアの首めがけて振り下ろす。

クロック/ワーク/フリーズ

「お?」

レベンの短刀はネアの首を狩ることなくその場で停止する。正確に言うとレベンの時が止まった。全てが。そして、その後ろにいたライが容赦なくレベンの首を跳ねた。しかし、血しぶきどころか何もなくレベンはぼやけるように消えた。そして、気配が目の前に現れる。二つ。

「いやはやぁ」

「やってくれますねぇ〜」

なんと、レベンが二人に増えているのだ。それぞれ背中をくっつけてライとネアを見やる。ライは相変わらず無言のまま二人になったレベンを睨む。ネアはというと

「騎士/大罪七獣ギルティネスサーヴァント

七人の騎士を召喚した。それぞれ獲物を持った、莫大な魔力を含んだ魔女騎士が姿を現す。手にはそれぞれ、大剣、弓、双剣、槍、大盾に加えて杖と暗器という武器の種類の中で鉤爪と呼ばれる武器を持った魔女騎士が現れた。最初に上げた五人の魔女騎士はライが戦った相手たちだが、残りの二人はネアでさえあまり出したことのない魔女騎士達だった。特別な魔女騎士には意思がある。それも絶対忠誠の意思が。しかし、この魔女騎士の忠誠は召喚した主であるネアではなく、その主であるライにあった。それぞれがライのまわりで獲物を構える。まるでライを守るように。

「物量戦ですかぁ、いいでしょう、受けて立ちましょうかぁ」

「どれだけ私を狂気に染め上げてくれるかたのしみですねぇ」

もはや、レベンに余裕はなくあの独特な口調も少なくなってきた。否、それは余裕がなくなったのではなく。徐々に、レベンは狂気に満ちてきていたのだった。

「ふっ」

ライが剣を逆手に持ち構えを変える。それに合わせて魔女騎士たちが動く。弓の魔女騎士、嫉妬エンビィが矢をつがえレベンに向けて放つ。その弓矢はありえないほどの速さでレベンを貫こうとするが、片手でそれぞれ止められ矢をへし折られる。矢を放ってコンマ何秒という時間帯で。レベンの身体能力、動体視力、反射神経は魔物で例えるならレジェンドモンスターと同等か、それ以上の力を持つだろう。嫉妬エンビィは普通の攻撃では通じないことがわかり次の手段にでる。しかし、レベンはそんな隙を与えてくれるほど生易しい相手なんかじゃない。左側にいたレベンが急接近してくる。それをライが迎えうつ。ライは真正面に来るタイミングを測って体を捻じる。そのまま逆手に持った剣で斬るが、それをレベンは短刀で弾く。しかし、ライはそれだけで終わらずそのまま回し蹴りをレベン放つ。が、それも片腕で防御される。しかし次の瞬間、まるで時が止まったかのように感じられる速さで左右に槍の魔女騎士、強欲グリードと双剣の魔女騎士、傲慢ペリデが移動していたのだ。そして、そのまま鋭い突きと斬撃をレベンに浴びせるも、それはぎりぎりのところで回避された。しかし、その黒服にはきられた跡があった。つまり、少なからずダメージが通ったのだ。

「お気に入りのぉ、ふくなんですがぁ、よくもぉ、やってくれましたねぇ?」

レベンのその瞳は既に狂気に染まっていた。たったそれだけのことで、しかし、それだけのことで彼は狂気に染まれる化物なのだ。

「はぁやぁぁあ!」

レベンはその身に狂気を纏い奇妙な叫び声で突撃してくる。それを、大盾の魔女騎士、暴食グラトニーと大剣の魔女騎士、憤怒ワルスが狂気レベンの相手をする。そして、後ろにいる杖の魔女騎士、色欲ルストがそれをカバーするように攻撃魔法と治癒魔法をそれぞれかけていく。

「はぁ、やはり分身すると短気になってしまうのは否めませんねぇ」

そう、右レベンが呟いた。左レベンは三体一という状況にも関わらず優勢であった。魔女騎士達の連携は十二彗よりも上で個人での能力も確実に上だ。それでもレベンは引けを取らずに強かった。しかし、暴食グラトニー憤怒ワルスも押されてばかりではない。着実にだが、憤怒ワルスの剣はレベンをかする。その度にレベンは発狂するが。流石に二人では無理と感じたのかライは鉤爪の魔女騎士、怠惰ソロスをいかせた。ついでに、嫉妬エンビィが十の矢を一気につがえ放つ。その矢は綺麗な螺旋を描き左レベンと暴食グラトニー憤怒ワルスの元へ落ちる。と同時に色欲ルストが魔女騎士とライとネアに防御魔法をはる。次の瞬間、盛大な爆発が起こった。それも、右レベンがいたところまで巻き込むぐらいに。その爆発半径、なんと百メートル。威力としては核爆発の数倍。しかしそんな爆発、嫉妬エンビィが放てる威力ではない。なぜここまでもの威力が出たのか。それはネアだった。ネアは数ある爆発魔法の中でも最も強力なプロミネンスノヴァをヘルファイヤという獄炎魔法と同時に放ったのだ。それ故、爆発した後は身を焦がし尽くすほどの炎がレベンを襲ったはずだ。ネアは誰も到達しえなかった。魔女でさえも女神でさえも到達できなかった唯一の六重魔法ペンタグラムを使える魔女なのだ。しかも、その魔力量は普通の魔女の約千倍。つまり、半永久的に魔力が切れることが無いのだ。まさしく最強の魔女なのだ。それ故に、ネアには二つ名があった。永禍カラミティ魔女ウィッチ、それがネアの二つ名だった。ライ達は防御魔法の中で無事ではある、が。それぞれ違和感を感じていた。ネアに関してはそれがなんなのかわかっていた。しかしありえなかった。やがて爆煙がはれていく。辺り一帯を包んでいた爆煙は風に吹かれ消える。そして、その違和感が何だったのか、その正体がわかった。

「私を本気にさせた事、まずは褒めて差し上げましょうか」

そこには、黄色いオーラをまとった、不気味なニヤケ顔をした白黒の仮面を被った何かがいた。それに頭にはシルクハットを被っていた。否、それはレベンだった。片割れのレベンの気配はなく完全に一人だった。そして、もう一つ。

「うそ…」

ネアがそう呟いた。その原因は周りにあった。いないのだ。魔女騎士達が。どこにも姿が見えなければ魔力の跡もない。文字通り、跡形もなく魔女騎士が消えたのだ。しかも、ネアに察知されにくいやられ方で。それが奴の本気。魔法を超える奇術。それがレベンの最大の武器だった。

「いやぁ、いつ以来ですかね。この姿になったのは。あの方と初めて戦った時以来ですかね」

そう、レベンはシルクハットのツバを持って上げる。その身なりはまさしく紳士だった。しかし、纏う雰囲気は狂気者のそれと同じ。ネアはそんな変わり果てたレベンの姿にたじろぐ。そこで彼がどんな反応をしているのか気になりライを見るが…。

ライは完全に怯えていた。傍から見てわかるぐらいに。ネアはそんなライの姿にびっくりした。

(それほどまでに今のあいつは化物なの?)

ネアにはわからなかった。目の前のレベンは前の姿と出している覇気は同じで、目立つのは黄色いオーラだけしかなかった。確かに姿は変わったかもしれないが、別段強くなったとは思わないし感じられない。

ライはレベンの変わり果てた姿に冷や汗が止まらない。手の震えさえも。

(こんなの、予想外だ…)

いくら殺すための心を維持しているとはいえ冷静に物事を判断できるぐらいにはちゃんとコントロールできている。しかし、それ故に、いや、そうじゃなくてもわかっていたと思うぞ、これは。目の前のレベンは異常だ。もはや人間ではない。レベンのあの姿を見てわかった。

(到底、今の俺たちが勝てる相手じゃない)

そう、圧倒的に力がレベンの方が上なのだ。俺とネアを合わせても。しかし、そんな力の覇気を見抜けないほどライもわからないわけではない。隠していたのだ。ずっと。奇術師であるレベンにはそれができる。それに俺はいままで気づけなかったのだ。実力は圧倒的。なにせ、あの煙の中とはいえ魔女騎士はたった数秒で瞬殺したのだから。しかも、その前のネアの爆裂魔法には防御も何もせずに耐えているのだ。レベンは。圧倒的におかしいのだ。

「おや?そちらの魔女さんは気づいてないようですがあなたはわかってるみたいですね。ですが、まだ余興のついでは終わっていませんのであしからず」

レベンはライ達に一礼をした後、おもむろに短刀を虚空から取りだし投げつける。それはブーメランとかしライに迫る。ライは剣を構え迎撃の構えに入るが…。ブーメランと化した短刀が急に増えたのだ。まるで分身するかのようにその場で。急激に増えた短刀にライは焦るが冷静にそれらを弾く。それでも、動揺を隠しきれず脚に一発、腕にかすったとはいえ二発もらう。

「くっ…」

斬られた場所から血が流れ出す。恐らく、血管部分を切ったのだろう。ライは速攻で服を引きちぎり応急処置をする。

「おやおや、まだ本番は始まったばかりですよ?」

レベンはライの応急処置が終わるのを待っている。完全にレベンの方が何枚も上手だ。応急処置が終わりライも立ち上がる。再度、剣を構えるが腕が震えていた。今は心の中を支配しているのは恐怖だった。

しかし、それは偽りの恐怖だった。ネアはずっと不思議に思っていたがそれがようやくわかった。なぜ、ライが怯えているのか。あの黄色いオーラだ。あれがライに恐怖心を埋め込んでいるのだ。だが、ネアはそんな魔法を聞いたことがない。まさしく奇術としか言いようがなかった。ネアはそんな見たこともない魔法故に解除の方法がわからなかった。いや、一つだけあった。けれども、彼が私をそこまで受け入れてくれているかどうかが不安だった。それでも、ネアやることにした。誓ったから。大好きな彼に。ネアは決めたんだ。ライにかけられた奇術をいつわり私の魔法しんじつを彼に差し出すと。ネアは決意しライの元まで走る。

「ちっ…」

どうすればいい、どうすればやつを超えられる。今のライはおかしくなっていた。ただでさえ殺すための心に自分の理性を外しその上で恐怖を植え付けられた。知らぬうちに。そして、ライもそれを知る由はなかった。ただただ心の中が恐怖で埋まっていく。勝てる気がしない。そうしていつの間にか心が一人になっていた。ネアの存在を忘れて。もうそれぐらいにライの余裕は消えていた。そんなライの姿にレベンはにやりと笑った気がした。それを感じ取ってしまったライはなにかに縛られたみたいに動かなくなる。

これが、レベンの奇術。人の心をのっとり操る。それも、思うがままに。そんな魔法もこの世に存在しない。レベンが一体どうやってそんなことが出来ているのか、おそらく誰にも理解出来ないだろう。しかし、現にライの心はのっとりかけられている。そんな中、不意に後ろから気配を感じた。ライは焦ってその気配の方へ振り向く。と、同時に唇に不意に柔らかいものを感じた。目の前にはネアの顔が至近距離で…。

「っ!?」

急な出来事で頭が一瞬フリーズするが、キスされたのだ。ネアに。

「ぷはっ!ね、ネア!?」

「んっ」

ライは慌ててネアをみる。ネアは頬を上気させピンク色に染めている。しかし、その顔にはどこかほっとした感じがあって…。そこで初めて気づいた。いつもの自分に戻っていることに。心がそれどころではなかったことに。恐怖心さえも今ので吹き飛んでしまったくらいに。

「はあ、あともう少しだったんですがね」

そう、レベンはぼやく。そこでライは改めてレベンをみる。未だに実力は未知数だがさっきのような恐怖心はなくなっていた。という事はつまり、俺もあいつの奇術に引っかかりそうになったということか。それを、ネアは体を張って解いてくれたと。俺はネアの頭を撫でる。

「ありがとな、ネア」

そう、ネアに礼を言って頭をなでる。正直、今のはやばかったと

ライも思う。なにせ、あのままであれば恐怖心に溺れることになっていただろうから。

「大丈夫?」

「あぁ、もう大丈夫だ」

「ならもう一回」

そう、ネアは再度キスしてきた。そして、それがなんなのかライも自然とわかった。ライはネアを優しく抱きとめる。そして、二人を闇が包んだ。

「おや?」

そんな異常な現象にレベンは目を見張る。

黒い闇の中、ライはネアの体温や呼吸、そのすべてが感じられた。それほどまでにいまの二人は心も体も繋がっていた。


「「魔女装甲化マギ・リンク」」


途端に闇が爆発した。その中からライ達は姿を現した。ライの片腕にはネアが抱かれていた。そして、もう片方の手には闇よりも深い色をした剣が握られていた。真ん中の繋ぎの部分にはそれぞれ色の違う宝石が嵌められていた。どの宝石も黒ずんでいた、にも関わらずその輝きは神秘的だった。そして、ライの姿も変わっていた。アリシアとやった女神装甲化デア・リンクのような鎧はなかった。どちらかというとローブよりの軽装で鎧という鎧は見当たらない。代わりに漆黒のローブ、それも袴に近い部類の姿だった。ライはゆっくりとネア降ろす。

「ネア、今回はお前に助けられたな」

「今度デートしても、いい?」

「あぁ、もちろんだ。だから、少し待っていてくれ」

「ん、楽しみにしてる。ありがと…」

ネアは最後のありがとの部分だけぼそっとつぶやくようにして言ったのだった。もちろん、ライもそれを聞き逃すことは無かったが。ライはネアを降ろした後、レベンに向き直る。

「おや?もうよろしいですかな?もっとイチャラブしても私は構いませんよ?」

「それよりもお前を倒す方が先だからな」

「そうですか、では余興のフィナーレ。始めましょうか」

そうレベンは短刀を取り出し構える。ライも憎愛神闇剣を構える。今のライは全身ネアに包まれている感じだ。正確に言うとネアの魔力に。

ざりっ、とお互いが足で地面を擦れさせた後、二人の姿が一瞬にして消える。それと同時に、ありえないほどの轟音が辺り一帯に瞬く。まさしく、神速の戦闘だった。ネアにはもう完全に二人の姿が見えなかった。それほどまでにライは強くなりレベンは強かったのだ。そんな神速の戦闘の中、たったコンマ何秒の世界でいくつもの攻防を彼らは繰り広げていたのだ。

「いやぁ、楽しいですね。私も久しぶりに本気が出せて嬉しいですよ」

「そいつはよかったな。が、もうおまえの奇術にはひっかかってやらないからな」

「それはフラグというやつではありませんか?」

そうして、目の前のレベンが瞬間的に三人に増えた。何の詠唱もなしに。しかし、そんな奇術を不意に使われてもライは慌てる事はなかった。

幻惑分身アバフェクション

剣と剣がぶつかりあう瞬間、その音が三つ重なった。

「ほほう、なかなかやってくれますね」

ライの分身体が増えたレベンの相手をしたからだ。これで、三対三だ。しかし、どちらもその奇術と魔法を消す。

「あなたは奇術いつわり魔法しんじつが勝てると思ってるのですか?」

不意にレベンにそんなことわ言われた。しかし、ライは何の迷いもなく答える。

「俺の魔法が俺の愛する妹たちのであれば勝つのは魔法しんじつだ」

「言い切ってくれるところがまた清々しいですね」

「当たり前だろ」

「なら、勝ってくださいよ。いつわりに」

「あぁ、終わらせてやるよ。道化師」

そうして、ライはまた心のリミッター全力で解くのだった。つまり、完全に心を闇に喰らわしたのだ。それでも大丈夫だと確信はあった。なぜなら、闇はネアの世界だから。ライはにやりと口のはしをにやけさせる。

「いい顔しますね」

そうして、レベンの仮面もより一層笑みが深く見えた。

「レクイエムテンペスト!」

無詠唱の終焉魔法。これができるのもネアの力があるから。そしてそれは、魔法こそが彼らにとっての真実だから。急激に辺り一帯が闇に包まれる。

「これはこれは、流石の私も見たことがありませんね」

そんな中でも余裕のレベンに突如、光が襲う。レベンはそれを半身を翻して避ける。が、それだけではなくいくつもの光が瞬く。そうした時間が流れ、やがて闇が晴れた時。レベンは立っていた。しかし、左腕に電気が走っていた。

「いやはや、流石に全部は回避できませんでしたね。まぁ、片腕くらいくれてやりましゃう」

そういっておもむろに右手で持っていた短刀で左腕を切り裂いた。それでも血が飛び散ることは無かった。やはり、レベンは人間ではない。

「次は私の番ですね」

そうして短刀を構えるが、ライは急激に現れた後ろの気配に振り向くと同時に真一文字に斬り払う。すると、いつの間にか迫っていたレベンの胴体を真っ二つに切り裂いた。と、同時にライの体から数十もの斬られた跡ができ血が吹き出る。

「ぐっ!」

わからなかった。たった今の攻防で何が起きたのか。しかし、そんなことを考える余裕はなくライは次の行動に出る。

「ブラッドフロスト!」

急激に溢れ出していたライの血が霧状になりライを包む。そうして、血の霧にライは姿をくらました。それと同時に動く血に狙いを定めて編み出した技をを放つ。

「神絶技 神天穿!」

ライの体がぶれる。瞬速で放たれた剣は深々と何かに突き刺さっていた。それは姿を徐々に現した。そこには、透明化していたレベンがいたのだ。剣はレベンの脇腹に深く刺さり貫通していた。

「まさか、こんな手で私のインビジブルがバレるとは」

そういうレベンの声音には苦悶の声が混じっていた。

「思った以上に効きますね、これ…」

そういって、一旦その場から距離をとる。剣が抜かれその脇腹にはポッカリと剣の跡ができていた。しかし、やはり血などが吹き出ることは無かった。

「仕方ありません、これで終わりにしましょうか」

「そうだな、そろそろ終わりにしよう」

レベンは短刀を構えライも憎愛神闇剣を構える。最初に動いたのはレベンの方だった。短刀を投げつける。先ほどと同じように短刀はブーメランと化しライにせまる。しかし、それ早い段階で増えていった。さっき使った同じ手なのは間違いない。しけし、その増える量はさっきの数十倍はあった。しかし、ライはそれを全て弾く。今の彼にはその力がある。ライは左手を前に掲げて唱える。

リバース/エンド

ライの唱えた魔法がレベンの放った無数の短刀を無効化していく。威力を失った短刀はその場でボトボトと落ち地面に突き刺さる。そんな中、レベンの姿は見えなかった。短刀は囮だったのだ。ここでライは駆け引きに負けた。しかし、ライはそれを上回る。途端に三方向から気配が現れ一瞬にして近づかれる。その中の一つにだけライは集中し、ライが持つ最強の剣舞を舞う。

「神絶技 神喰螺旋しんくうらせん八連!!」

ライの動きが全てぶれるぐらいにその剣舞は速かった。もはや、残像が見えるくらいに。これには、集中して狙われたレベンは防御をしようとするが、追いつかなかった。神速の剣戟がレベンを斬り刻む。最後の一閃がレベンを貫き通す。しかし、ライは残りの二つの気配から背中を斬られる。が、それをなんとか耐える。なぜなら、それらは偽物だから。

「まさか、本物の私を当てられるとは思いませんでたよ。かはっ」

「これがお前の奇術を超える魔法だ」

「なる、ほど…、確かに見させていただきましたよ、あなたの魔法を」

レベンはそう、ライに告げると着込んでいた服ごと姿がチリヂリになりその姿を消していった。最後にはお面だけが残りカランと音を上げて地面に落ちる。ライはそれを拾い上げる。

「言ったろ、俺は妹たちがいる限り負けないってな」

俺はお面を空に放り投げ真っ二つに斬る。斬られたお面は白と黒が綺麗に分かれ粒子となり消えていった。

「これでほんとに終わりだ」

ライがそう宣言すると同時に装甲化が紫の粒子と化して消えていった。ふらっとライがよろめく。やがて、立っていられなくなったのか前のめりに倒れる。が、顔面から地面へのラブキッスすることはなかった。なぜならネアがライを受け止めたから。

「お疲れ様、ね」

「あぁ、正直もう体が動かないな」

「…」

「ネア?」

ネアは急にうつむき黙り込む。そんなネアに俺は顔を覗きみようとするが、その前にネアはその可愛い顔を俺に見せてくれた。

「守ってくれて、受け入れてくれてありがとう」

そう、満面の笑みでネアはライにお礼を言った。それも、純粋な気持ちで。今の彼女を見て『魔女』と呼ぶものはおそらく誰一人としていないだろう。それぐらい、彼女の笑顔は眩しかった。

「あぁ、どういたしまして」

そう、ライは微笑みネアの頭を撫でる。が、そこで披露が押し寄せてきたのだろう。ライの意識はそこで途切れた。そんな、ライの頭を今度はネアが優しく撫でるのだった。ライはボロボロなのにも関わらず穏やかに寝息を立てている。そんな姿にネアは不意にきゅんとくるのだった。

「やっぱり、私はあなたのことが…大好き」


こうしてレベンのいうところの、余興のフィナーレは終幕したのであった。

ふはははは!!お久しぶりだな人間共!

ということで、読んでくださってる皆様方、本当にありがとうございます!

いやぁ、戦闘おおいな…。書いてて思った。ということで次からはいよいよサービスパートにする予定だぞ!楽しみにしておくんだな!楽しみに出来るやつは!それとちょっと我的事情を話させておくれ。我、この夏休みちょっと分け合って一ヶ月弱ほど千葉の方へ行くことになってな!まぁ、我はそこで地獄を見るわけだよ…

ゆずソフト最新作千恋*万花楽しみにしてたのに!あ、ちなみにお察しエロゲーだからな!気になる奴は調べてみるんだな!我的におすすめ!それでだな、もしかしたらその事情で投稿日があやふやになるかもしれぬからそこは皆様方の寛大なお心で許して欲しいのだ!

とまぁ、我の報告はこのぐらいだな!ということで我はここらへんでさらばとしよう!またな!人間共!



ライ「死ぬかと思った」

レベン「私はぁ殺されまぁしたァけどねぇ」

ネア「死んで当然」

レベン「辛口ですねぇ(泣)」

ルナ「なんだかここも賑やかになったね」

ライ「そうだな」

アリシア「私の出番もっと多くしろって言ったのにぃ!」

フィナ「それ私の言葉!」

ライ・グラウ「よしよし」

アリシア・フィナ「ふにゅ〜」

レベン「なんですかねぇ〜、和みますねぇ〜」

シェル「みんなおつかれさま〜」

ラン「おつかれさま」

ライ「うぃ〜」

ルナ「なんかまだ3回ぐらいしかこの後書きストーリーやってないのに結構みんな馴染んでるよね」

レベン「そうですねぇ〜」

ルナ「レベンさん敵だよね?」

レベン「ココではそんな概念ないのデース」

???「そうじゃぞ!」

ライ・ルナ「だれ!?」

グラウ「その正体は次で明らかになる」

ルナ「グラウくんそういうキャラじゃないよね!?」


レベン「次回ぃぃぃ」

ライ・ネア「滅茶苦茶な少女現る!?」

グラウ「次も絶対に見ろよ」

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