滅茶苦茶な男達の真剣勝負!
「それじゃあ二人とも準備はいいわね?」
あれからランさんに審判に入ってもらい仕切り直してもう一度。ティルフィングを構え直しグラウと向かいあうのだった。ランさんは俺とグラウを交互に見て準備が出来たのを確認して大きく息を吸った。そして手を上に挙げて
「はじめ!」
と、ランさんは勢いよく手を振り下ろした。その合図とともにグラウは全力で距離を詰めてきた。そして、両手に持つ剣はグラッグバーと戦った時と同じように冷気と熱気を纏っていた。いや、それを超えて赤い剣には炎が、青い剣のまわりには空気を凍らせて小さいが氷塊ができている。確実にあの試験試合の時よりも強くなっている。俺は条件反射で後ろに飛び退く。そこにグラウがクロスさせるようにして双剣でその場を切り裂く。切り裂かれた場所は、と言っても平原だが熱風と冷気で丸焦げと凍っていた。まるでその場だけ天変地異が起こったみたいな。グラウはその勢いのまま俺の方へと突っ込む。俺は次は迎え撃つことにした。右肩の重心を前方に下げて左足を後ろに下げる、初級兵や訓練兵が最初に習うよくある構えである。わからない人は剣道の最初の構えから左足だけを後ろに下げて、少し右肩を下げてる感じだと思って。しかし、これは万能の構えなのだ。突撃されればつばぜり合いにもっていける。あるいはそれをよんでのカウンター攻撃も可能。隙を見れば逃げることも可能なのだ。反撃の構えとしてはこれが一番なのだ。何事も基礎が一番大事ということだな。
そんな俺の構えに関係なく、グラウは迷いなく突っ込んでくる。
(本気と言ってもティルの力じゃなくて俺個人としての力のことを言ってたみたいだし、やりますか)
「うぉぉぉ!」
グラウが雄叫びを上げて炎剣で突きを放つ。その鋭さは凄まじいものを感じたが俺はティルフィングの腹で軌道を右にずらしそれを躱す。そして驚いた。グラウは瞬時にその場で横に回転して氷剣で斬りかかってきた。まさかの攻撃に俺はティルフィングを右斜め後ろに振るうようにして弾く。俺は弾いた勢いのまま前方にジャンプして一旦距離をとることにした。弾かれたグラウは動揺することなく前転したのち体勢を立て直した。いや、少し動揺はしてたな。今のが弾かれたことに驚いたのだろう。そりゃそうだ、普通の人は空中で一回転なんてまず普通に考えてできないからな。グラウにはそれをやってのけるほどの実力はある。俺も予想ではなく半ば条件反射で動いたようなもんだしな。
「今のはびっくりしたぞ、グラウ」
「まさか弾き返されるなんてな…」
お互いがお互いを褒め合う。それは人を成長させる大きな一歩になる。が、今のグラウには鋭さはあっても迷いがあるように見えた。しかし、俺はそれを聞かない。グラウが頼った時にはちゃんと協力する。ただ、それまで待つだけだ。グラウが何について迷ってるのかはわからないが、ここまでするってことはきっと大事なことだから。さっきまで悩んでいるように見えたグラウは頭の片隅にその悩みを追いやり、再度攻撃を仕掛けてきた。今度は地面を思い切り踏み抜き空高くジャンプする。そのまま空中で体を横にして回転をかける。空中回転斬り。俺は一瞬受け止めようとティルフィングを構えるが瞬時にやめてその場から飛び退き躱す。と同時にグラウの回転斬りは空を斬り地面を打つ。そして、遠心力による威力でできた風圧が烈風となり、しかも熱気と冷気を含んだカマイタチに似たそれは俺を襲う。あまりの熱さと寒さに一瞬感覚機能がやられる。普通の一般兵ならこれで剣を落としていてもおかしくないし、目をやられてもおかしくない。しかし、俺はそれを第六感で感知し即座に目を瞑ってカバー。熱風冷風は身を低くしてダメージを軽減した。だが、ここで致命的な隙ができてしまったのだ。グラウはそれを逃さず俺に一撃入れようとするが、俺は目を瞑ったまま気を感じた方向にティルフィングを振るう。ガキンッと音が鳴り俺はグラウの剣を弾いた。そして、ここでグラウにも隙ができた。俺は目を開けて距離を把握し
「極絶技 拉天!!」
俺自身をコマのように回転させグラウに斬り掛かる。当然、体勢を崩したグラウは、いや、本来ならそのまま崩れて決着は決まっはずなんだろうがそうはさせなかった。グラウは左足に重心をおいて一瞬で反撃体制を整えた。そのままグラウは迫り来るティルフィングを両方の剣で防ぐ、が。カキンカキンと響き渡るような音が鳴りグラウの愛剣は空を舞った。
「なっ!?」
あまりにもあっさりと弾き返されたあげく、しっかりと握っていたはずのグラウの愛剣は簡単にその拘束から抜け出し空へと舞ったのだ。
「極絶技、これはライガルからみっちりと叩き込まれた技だからな。驚いたろ?」
俺は勝ちを確信して後ろを振り返りグラウを見る。すると、剣を弾かれたにも関わらずグラウは素手でこちらに走ってきていた。「いい勝負だったぜ」とかそういうのをいうために来てるのではなく。
(まだ、勝負は終わってないってことか)
俺は再度、ティルフィングを構える。グラウは素手。武器もなしにグラウはどう立ち向かうのか、それは俺の想定外のものだった。グラウの左には見る見るうちに大きくなっていく火の玉ができつつあった。それがサッカーボールぐらいの大きさになった時、それを俺に投げつけた。俺は迫り来る火球をティルフィングで真っ二つに斬る。斬られた火球は爆発した。
「くっ!」
これには予想外で防御せざる得なかった。
(魔法戦ってことか)
俺は一度、後ろに下がって次の攻撃の防御体制をとろうとするが
(後ろか!)
さっきまで目の前で駆けていたはずの気配は一瞬にして消えた。魔法で消したのかとも思ったが違った。ほんの一瞬でグラウは俺の背後に回ったのだ。それも、俺が一瞬感知できなくなるぐらいの速さで。俺は感だけをたよりに半ば無茶な体制でティルフィングを振るう。
「うぉぉ!」
「らぁ!」
ガキン!と音が鳴る。その剣と剣がぶつかり生み出す衝撃波に煙が吹き飛ぶ。そこにはグラウがいた、のはいいがその手には氷でできた剣が握られていた。
(そんな、まさか…)
俺はその目を驚愕に見開き、つばぜり合いの中、グラウに問うた。
「その剣、生成…したのか?」
「お前もそんな驚き方するんだな」
答えは言わなかった、いや今のが答えなんだ。作ったんだグラウは。氷の魔法で剣を。
(造型魔法、もういまはなき失われた古の魔法。まさかこんな身じかに古来魔法が使える奴がいたなんてな)
俺は驚きと関心の意を込めてグラウを見る。その口は笑っていた。一発見返してやったぜみたいな顔で。自然と俺も口がにやけてしまう。本気だった。俺もグラウも。それだけが俺達をより熱くさせた。熱い、熱くなっていく。
「ていうかほんとに熱いわ!」
俺はグラウから距離をとる。グラウの氷の剣は燃えていたのだ。その熱波に耐えきれず俺はグラウから距離をとったのだ。
「どこまで驚かせば気が済むんですかね〜」
「ふっ、この前の貸しだ」
グラウはその燃える氷の剣を構える。氷の剣は燃えてるはずなのに一向に溶けたりなんかしない。むしろ、さっきよりも綺麗に輝いていて炎がそれをより強く光らせていた。その剣は完璧に幻想の産物としか思えなかった。完全に物理を超越している。それぐらいグラウの創り出した魔法はすごいものだった。
「造型魔法に融合魔法。どれだけ古来魔法を持ってるんだ?」
「生憎、この二つだけだ」
俺とグラウは激しく剣撃を交わす。それはとてつもなく、幻想的ですごいとしかいえないほどの光景だった。融合魔法も古来魔法の一つ。造型魔法も融合魔法も名前の通り創作、複合と考えれば簡単な魔法だ。しかし、そんな魔法がなぜ昔に消えてしまったのか。それは、簡単な話。その魔法を作成するのが難しい上にそれを教える魔法使いが皆いなくなってしまったから。じゃあなぜいなくなったか。それは女神と魔女の戦争に巻き込まれそれから逃れるために。彼らはこの地の遥か遠くへ去ってしまったから。恐らく、地図にも載ってない、そんなところにその魔法使い達はいるのだろう。いまはそんな伝説としてこの話は語り継がれてきていた。俺もこの国に来た時にライガルに一度聞かされたことがあった。その際に出てきた古来魔法のうち二つを目の前のグラウは持っていたのだ。
「二つだけって…、一つ持ってるだけでも驚きもんだっての!というか、グラウはあの伝説の魔法使い達の末裔なのか?」
「…わからん」
「わからないのか」
「あぁ、俺は母親の顔も父親の顔も知らないからな。なにせ、天から降ってきた子供だからな」
「それ初めて聞いたんだが…。まさか!神の子!?」
「アホ、そんなわけあるか」
俺とグラウはそんなツッコミとボケをしてる間にも戦闘は続いている。グラウはジリジリと左に、俺は右にずれていく。そして
「はぁぁあ!」
「ぉぉおお!」
お互いに距離を把握して同時に飛び出した。タイミングは完全に両者とも同じだった。キィィィンと甲高い音が当たりに鳴り響く。そして決着はついた。グラウの幻想剣は折られ、その破片は宙に舞いグラウは倒れた。しかし、俺も肩膝をつく。さっきの一瞬の剣撃の中、俺はうまく物理で幻想剣を破壊しそのままグラウを滅気斬で切り裂いた。グラウの精神を大幅に斬ることに成功したがそれでもグラウはその重い拳を一撃、俺の腹に入れてきたのだ。意識を刈ったにも関わらず。
「はぁ、はぁ…」
驚くことに息が切れていた。俺はそれほどまでにグラウの勝負に熱くなっていたらしい。後ろで倒れているグラウを首だけ回してみると倒れたまま起き上がらない。意識はあるみたいだが起き上がれないらしい。
「くそが…」
そうグラウは悪態をつくがなぜか悪い気分にはならなかった。なんというか、逆に清々しい気持ちがする。俺とグラウは仰向けになり空を眺める。こういう男の友情みたいなものも悪くない。
「さっきの一撃は痛かったぜ、慰謝料プリーズ」
男の友情どこいった。
「アホか、俺ももう立てる気がしねぇよ」
グラウはそれに律儀に突っ込んできてくれる。
「んで、なにかわかったか?」
「まぁ、な。ありがとな。付き合ってくれて」
「必要ならいつでも付き合うぜ」
「あぁ」
そうして俺達は倒れたままお互いの拳を打ち付け合う。
「なに、いまの…」
「え、え、あの人たち誰?」
と、それを見ていたランさんといつの間にか起きて観戦していたルナが戸惑ったようにそれぞれ反応する。
「あらあら〜、治療してこなくちゃね〜」
と、シェルさんはその白衣を翻しライ達の元へ走っていった。残された二人は愕然としていた。なにせ目の前でいくつもの、俗に言う神業を連発したあげく、グラウに関しては古来魔法を使っていたようにさえ見えた。いや、事実使っていたが。そんな、グラウとライの試合はいままで見たこともないほどの超常決闘だった。
「まさかこんなことになるなんてね…」
「ですね…」
ランさんとルナはお互いに顔を見合わせて笑い合う。
「ライ君は只者じゃないなって思ってたけどグラウ君も相当なやり手ね」
「私もびっくりですよ、まさか友達が二人共こんなに強かっただなんて。ライに限ってはその実力を隠してたし、グラウ君もいきなり古来魔法使うし。私はどうしたらいいんでしょうかね」、
「今のままで構わないと思うけど?確かに実力は途轍もなかったけどルナちゃんも相当な実力を持ってるでしょ?」
「あ、バレました?」
「私はこう見えて人を見る目はシェルよりも上なんだから当然よ。それにいくつか隠し事もしてるみたいだし」
「乙女に秘密はつきものですよ」
「それ、自分で言ったら意味無いじゃない」
「いいんですぅ〜」
「全く、どうしてこう異常な子達ばかりここに来るのかしらね」
ランさんは空を見てそんなことつぶやくが顔は満更でもない。ルナもランさんにつられて空を見る。そこにはとても、雲一つない綺麗な空が広がっていた。
「ん、お兄ちゃんは、つよ、い。だれにも、まけない」
「うむ!ライは私の専属執事だからな!」
「ふふ、やっぱりライは私の見込んだ人」
「ほんと、彼もモノ好きな子に好かれたものね」
と、こちらもまたいつの間にか起きていた妹達もそれぞれの感想を口にする。リーナのその瞳には揺れるものはなくただまっすぐとそれを見てきた。だからこそライが好きで絶対の信頼を置いている。アリシアも妹になったばかりとはいえライを見込んだ。その理由はただ単純に強いだけではなく他にも理由があったから。そして、それはずっと前に証明されたからこうして胸を張れる。ネアもまた新しく妹になったばかりだ。それゆえにリーナやアリシアのように胸を張って何かを言える訳では無いけれど、けれど、ライのことは昔から見てきたつもりだ。ティルはそんな彼女達の意見にやれやれと首をすくめるのだった。そうして、ライを見ているとシェルさんが治療にしに行くのが見えて。
「…」
「あ!」
「ふぇ!?」
「むっ」
シェルさんはその豊満な胸でライの顔を包み込んでいるのが見えた。本人は拒否してるように見えるが力ない否定に意味は無い。そのままライの顔はシェルさんの胸に吸い込まれていった。そして、それを見た妹たちは
「ん…」
リーナは無表情だが、かすかに、かすかにだが眉がつり上がっていた。そして、羨ましそうにそのライとシェルさんの光景を見ていた。
「むむむ」
一方、アリシアは自分の胸に手を置き難しい顔をする。そして、「あともうちょっと、あともうちょっと大人になれば!」と悔しがっていた。
「ふふ」
ネアはというと、それはもう勝ち誇ったような顔をしていた。なにせネアは巨乳。その体格に見合わないほどの大きな柔肉をもってるのだ。そのあまりの理不尽さにアリシアが突っかかる。
「むぅ、ずるいぞネア!私にも少しぐらいくれたっていいじゃないか!」
「そんなこと私に言われてもどうしようもできない」
「むーー!」
そしてリーナはついにいじけだしたのだった。その目にはかすかにだがほんのりと涙が…。そして、最後にティルだが
「…」
もはやティルフィングになって地面に刺さっていた。もう完全に拗ねている証である。そして、治療されて戻ってきたライが彼女達のアフターケアにいろいろと苦労したのは言うまでもないことだった。
ふははは!ちょっとはやいが久しぶりだな人間共!ということで、読んでくださってる皆様方ありがとうございます!
ということで人間共はGWはいかようにお過ごしか?われはグダグダライフを満喫しておるぞ。というかな、我、ゼロから始める異世界生活のEDがすごい気に入ってしまったぞ、なんかああいうかんじの音楽は好きだな我。それと、なろう!でおなじみの転生したらスライムだった件というのを友達に押されて見てみたのだが無茶苦茶面白かったぞ。オススメだから気になるやつは読んでみるんだな!書籍化もしてるらしいからな!オススメといえばありふれた職業で世界最強というのも我的におすすめ。ちなみにこれも書籍化していまは四巻?ぐらいまで出てたはずだ!内容的にはほぼチート能力てきなかんじなのだがな。なんだろうな、我個人的にはこう、ユニークスキルとかパラメーターとかこうRPG系の主人公チートの物語が好きなのだよ。特にありふれた職業で世界最強はドツボだったな。われもああいうのかいてみたいんだがな…。
ということで今回はこのへんにしておくぞ!ではまたな!人間共!




