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滅茶苦茶なシスコン剣士の妹件  作者: 魔王
女神と魔女を妹にする!
11/83

滅茶苦茶な魔女騎士騒動

紫色の霧が晴れていくと同時に魔女騎士の正体があらわになっていく。

「やっかいね、五体同時に動かせる魔女なんて…」

隣にいたティルがそう警告してくる。

魔女や女神にしか扱えないとされる神魔法。

だが神魔法といえどその魔力消費量は膨大。

普通の人の魔力では発動することさえできない故の神魔法なのだ。

女神は神聖魔法という、主に聖を主体とした魔法を得意とする。

アリシアのように回復魔法も聖魔法の派生の一つだ。

魔女はその逆で神闇魔法、闇魔法を主体とした魔法が得意だ。

そして目の前の魔女騎士は魔女が最も得意とする幻惑魔法の一つ、騎士/顕現操術メネフェストサーヴァント

幻惑で創り出した騎士を現世に顕現させ操る魔法。

操り人形とは違い、あの騎士達にはそれぞれの意思があり自ら行動をする理性がある。

到底、魔力で生み出された存在とは思えないだろう。

一体だけでも厄介だと言うのに、今目の前には五体もの騎士/顕現操術で呼び出された魔女騎士がいる。

元々、騎士/顕現操術メネフェストサーヴァントは一体に注ぎ込む魔力自体が莫大な上、それを操る精神力が必要になる。

それに似たような魔法がある。しかしそんな似せた魔法でさえできる人は少ない。例えどんなに魔法を極めた者だったとしても。

それに、この魔法は顕現させた騎士の力によって魔力の消費量が変動するらしい。

それでも最低値が通常の魔法の数倍高いため強力な事に変わりはない。

だからこそ五体同時の召喚は規格外と言ってもいいだろう。

これを召喚した魔女の力は計り知れない。


「ティル、やれそうか?」

「腕はどうなのよ」

俺の確認にティルはそっぽを向いてそう聞いてきた。

「これぐらい大丈夫だ、もう治りかけだしな」

俺は大丈夫アピールするために右腕を軽く振る。

それでもティルは俺を心配そうに見る。

というか、やっぱり見られてたんだな。

「それに、あれをほっとくわけにはいかねーしな」

「だとしても無理は禁物よ」

ティルは見かけによらず心配屋さんだ。

グラッグバーの攻撃受けた時も必死になって治療してくれたしな。

俺は近くまで来ていた魔女騎士に対して構えを取り始める。

あともう少し近くまで来れば無視できない間合いになる。

「ライ君〜これ〜」

そんな緊迫した空気の中でどこか気の抜けた、それでいて少し焦りを感じさせる柔らかな声に少しだけ警戒を強める。

「シェルさん!?危ないですから出てきたらダメじゃないですか」

声の主であるシェルさんは赤い宝石のようなものを握りしめて俺の元まで走ってきていたのだ。

「だって〜、ライ君の腕まだ完治してないから。せめて治療はしないと〜」

「いやいや!もうそこまできてますから!」

「すぐ終わるから〜」

そういってシェルさんは有無を言わさずに俺の右腕を手に取って魔法を唱える。

シェルさんはこの国の数少ない治癒魔法使いの一人なのだ。

しかも最高クラスの。

今更だがそんなシェルさんだからこそこの店、シェルランは成り立つのだろう。

「はいおわり〜。それとこれ〜」

シェルさんは治療が終わると手に持っていた赤い宝石もとい薬を俺に渡す。

「これは?」

「力の源、ブースターよ〜」

ブースター、それは薬師のなかでもエリート中のエリートにしか作れないという秘薬の一つだ。

ブースターは身体強化と知覚強化を主にしているもので普段の何十倍もの力を引き出してくれる、まさしく秘薬そのものだ。

その分、材料も貴重で手に入りにくいらしいが…。

「これ、もらえませんよさすがに」

「だーめ、遠慮しないでちゃんと受け取って。私にはこれぐらいしかできないから」

さすがにシェルさんもこの状況がわかっているのだろう。

いつものゆったり口調ではなく真剣な顔で答える。

「わ、わかりました、いざというときですよ?」

「うんうん、えらいえらい〜」

俺は折れてブースターを受け取ることにした。

それを見てシェルさんは俺の頭を撫でてくる。

それをティルは羨ましそうに見るのだった。

「くるわよ!」

ティルの言葉と共に一体の魔女騎士が弓を放った。

それも、俺ではなくシェルさんに向けて。

「ちっ!」

俺はポケットにブースターをしまった後、即座にシェルさんをお姫様抱っこしてその矢を躱す。

急にお姫様抱っこされたシェルさんは「きゃっ!?」などと可愛い悲鳴を上げてしがみついてくる。

まぁ、仕方ないことなのだが胸が無茶苦茶当たってる。

俺はシェルさんを安全な位置に降ろす。

「シェルさんはここで隠れていてください」

「うん、ありがとう〜ライくん。きをつけてね」

「はい」

俺はシェルさんを避難させたあとすぐにティルの元に戻る。

「ごめんごめん、待たせたな」

「ばか…」

あらー、これは相当拗ねてらっしゃる。

後でちゃんと埋め合わせしないとな。

今はそれを頭の片隅にやって、目の前にいる敵の戦力を把握する。

まず真ん中にいる魔女騎士が大剣を地に刺して構えているが、一番魔力をつぎ込んでいるのは間違いなくコイツだろう。

魔力の質が周りに比べて違いすぎる。

まぁ、だからといって周りの四体も油断できるような相手ではないが…。

大剣の魔女騎士を中心に扇状に陣形を組んでいる。

まず大剣の魔女騎士の右側には通常の盾よりも何倍も大きい盾、大盾を持った魔女騎士が構えている。

その反対側には真紅色の槍を持った魔女騎士がいる。

そしてその両サイドに双剣を構えて今にも襲いかかろうとしている魔女騎士が一体。

そして先程、弓矢を打ち込んできた魔女騎士が次の弓矢を構えていた。

一体一体が強力な上に陣形もバランスも整ってるときた。

どう考えてもライ一人で太刀打ちできる相手ではない。

「ティル」

「…ふん」

どうやらこんな危機的状況でもティルのへそは曲がったままだった。

だがそんなティルもまた愛おしく感じてしまう。

俺はティルに近づいてその顔を無理やり、それでいて優しく自分の方に向ける。

「…っ!」

そのまま有無を言わせない勢いでティルに優しく口付けをする。

キスされたティルは一瞬で茹でダコのように顔を赤くする。最初はむぐむぐと抵抗していたがライに抱きしめられ大人しくなる。

「ん…」

「はっ!あ、ぅ…」

その長い口付けも終わりティルは目をぐるぐるとさせていた。

「き、きき、きゅうにあにすんのよっ」

「今度は二人でちゃんとデートしような」

そんな慌てるティルも可愛くライはそう優しく微笑む。

普段はツンケンしているがティルはこういうことに凄く弱い。

だからこそ、たまに見せるティルの可愛い一面が見たくてついついからかってしまうのはライの悪い癖だ。

「…ばか」

ティルはそれだけ言ってライに全身を預ける。

そんなライ達に先程よりもより強い殺気が向けられた矢が飛んできた。

ライはティルを庇うようにその矢を避けようとする。

しかしそれはライ達の直前で爆発した。


爆破で土煙が漂う中、魔女騎士達はそれぞれの獲物を構え始める。

弓矢の魔女騎士も再度新しく矢を番い狙いを定める。

そうして土煙が薄くなっていくと徐々に一つの影が見え始める。

そこに容赦なく弓の魔女騎士が二射目を放つ。

今度は爆発することなく真っ直ぐに敵を射ようとする。

が、その矢は影に当たることなく弾かれる。


「『リンク』」


最愛の妹の一人であるティルとそう声を重ねて詠唱した。

その魔法は聖剣と魔剣の持つ最強の魔法。

ライは眼前に飛んできた音速の矢を軽々と手に持っていた剣で弾く。

それと同時に周りの土煙が剣を振った風圧で一気に霧散していく。

そしてそこに立っていたのは先程の執事服姿とは違う、禍々しく赤い線がところどころに走る黒いコートを着たライの姿があった。

その姿には誰しもが畏怖するものがあった。


久しぶりの感覚にライは目を閉じる。

その右手にはティルの魔剣の姿、ティルフィングが握られていた。

今のライはティルの力に包まれていた。

グレイツバルのような装甲化リンクと違い、ガチガチの鎧ではなく、至って普通の黒コートに包まれていた。

ただし普通のコートとは違い所々に赤い線が伸びている。しかもそれは脈を打ってるかのように明滅を繰り返していた。

ライは目を閉じたまま耳をすませる。

風の音や遠くから聞こえる動物たちの声、鳥のさえずり。

自分の脈打つ心臓の鼓動から筋肉の動き、その全てを感じとっていた。

ライが一呼吸を置いてゆっくりと目を開ける。

そこには既に双剣の魔女騎士が眼前に迫っており、その両手に持つ剣を同時に使い、クワガタのようにライを挟み斬ろうとしていた。

だが、今のライには双剣の魔女騎士はまるでゆっくり動いているかのように見えていた。

「遅いな」

ライはその双剣を余裕を持ってしゃがんで避ける。

しかし双剣の魔女騎士の判断は早く、避けられたのを瞬時に理解してその勢いのままライを蹴り飛ばそうとする。

が、それよりもライの動きの方が速かった。

ライは剣を持ってない空いた左手で双剣の魔女騎士の胴体に思いっきり拳を叩き込む。

その拳は重く、衝撃で双剣の魔女騎士ははるか後方へと吹き飛ばされる。

その際に双剣の魔女騎士は空中で体を捻り、手に持っていた剣をライに向かって投げつける。

それをライは悠々とティルフィングで弾く。


双剣の魔女騎士は少しでもライの隙を作るために自分の武器さえも投げつける。

そのおかげでほんの数秒だけライに隙ができる。

その隙を逃すとことなく弓矢の魔女騎士が矢を立て続けに連射する。

その矢には一発一発に魔力が秘められており、最初にライとティルに放った矢と同じく当たる直前にあるいはその周りで爆発する。

そんな爆弾矢を打ち続けると先程と同じように爆煙でライ達の姿が見えなくなる。

それこそが弓矢の魔女騎士の狙いでもある。

弾かれた双剣を取り戻した魔女騎士がその爆煙の中に単独で突っ込む。

なぜなら暗闇や視界の悪い場所は双剣の魔女騎士の得意とする分野だからだ。

最初にライに接近して来た時もそうだが、一切物音もたてず、気配さえも完璧に殺してライに肉薄したのだ。

もちろん、ライもその存在には気づいていなかった。

故にライはその場で反撃した。

ライにとってはそれぐらいの余裕はあったからだ。

けれど今回は違い、既にライ達は煙の中。いくら剣を振るった風圧で煙をかき消そうとすぐさま弓矢の魔女騎士がライに目掛けて爆弾矢を放つ。

そんな中で双剣の魔女騎士が容赦なくライを襲う。

ガキィンと何度も煙の中で剣を打ち合う音が響き渡る。

やがてその音は静かになり煙が散っていく。

そしてそこに残っていたのはライ一人だけだった。


「まずは一体だな」

『まずまずね』

俺のコメントにティルが返事する。

そんなティルの言葉は俺の頭の中に凛と響く。

俺が双剣の魔女騎士を倒したのをいち早く他の魔女騎士達は理解していた。

だからこそその後の行動は早く、的確だった。

槍の魔女騎士が大地を蹴りライに肉薄する。

その後ろから四つの矢が四方から放たれる。

左右に逃げ場はなく真正面から槍の魔女騎士と打ち合う。

そのまま槍の魔女騎士は容赦なく連撃を浴びせる。

その槍さばきは決して常人には繰り出せない威力と速さを兼ね備えていた。

そんな乱れづきさえもライは冷静に対処する。

それも最低限の無駄のない動きで。

お互いが引かずに高速の打ち合いをしている中、さっき横を通過したはずの矢がありえない曲がり方をしてライの背中を貫かんと差し迫っていた。

もちろん、ライは目の前の槍さばきを防ぐので手一杯。

この矢に気づくことはおろか、防ぐことさえままならない。

槍の魔女騎士もそれをわかった上であえて隙を与えず作らさず乱れ突き放ち続ける。

そして矢がライに当たる直前、槍の魔女騎士もここぞとばかりに自分の持てる最大で最速の突きをライにぶつける。

躱しようのないその両方の攻撃がライに触れた瞬間、まるでライは揺らめく陽炎のように消えた。

幻惑分身アバフェクション

いつの間にかライは槍の魔女騎士の背後に立っていた。

もちろん、槍の魔女騎士が放った一撃がライに当たることはない。

また、四本の矢は槍の魔女騎士を容易く穿いていた。

それでも槍の魔女騎士はライに一撃を浴びせようと振り向こうとするが…。

「二体目」

それよりも魔女騎士の首が空を舞うほうが早かった。

双剣に続き槍の魔女騎士もその場で力を失い霧散する。

ライは油断することなくその勢いを利用して弓矢の魔女騎士に肉薄する。

距離はそこそこあったがそれでもその距離を感じさせず詰め寄る。

一撃でとどめを刺そうとその首に目掛けてティルフィングを振り下ろすが大盾の魔女騎士が即座に弓矢の魔女騎士を庇うように目の前に現れる。

ガァァァンと鈍い音を立てて俺のティルフィングは弾かれる。

そんな隙を逃さず弓矢の魔女騎士が大盾から覗くようにライを射抜く。

ライはその矢をギリギリで体を捻り避けることに成功するが大盾の魔女騎士がそのままシールドバッシュでライの体を吹き飛ばす。

大盾に当たる瞬間ティルフィングを盾にして受け身をとったからそれほど大したダメージではないから魔女騎士達のいる所から離されてしまう。

弓矢の魔女騎士は距離を詰めさせないとその矢を連射する。

その矢をティルフィングで叩き落としたり避けたりしてやり過ごす。ただ、数が多くて上手いように距離を詰められない。

それに…。

『後ろからもくるわよ』

「厄介だなぁ」

ティルフィングで弾いた矢はそのまま地に落ちるが、避けたり躱した矢はまるでライを追うように滅茶苦茶な軌道を描いてライに帰ってくる。

だがそんな矢もライは容易く斬り捨てる。

このままではジリ貧だな、と思い始めた時。

矢の嵐が鎮まった。それと同時に弓矢の魔女騎士がこちらに狙いを定めて構えている。

ジリ貧だと思ってたのはあちらさんも一緒のようだ。

構えてる弓矢はさっきまで打っていたものと違って紫紺の光を放っていた。

その光は徐々にだが強さを増していく。

『あれは無理よ、確実に一撃貰うわ』

「んー、だと思った」

弓矢の魔女騎士が放とうとしている矢は割と危険なものなのだがそれでもライは余裕を崩さない。

ティルもそう忠告してくれているがどこか余裕さえ感じさせる。

まぁ、あれが危ないのは確かだが距離を詰めたところで撃たさせないようにするのも無理だろう。

あの大盾の魔女騎士、大剣の魔女騎士の次に強い。

あの大きい盾に他の魔女騎士よりも大きい図体をしてる癖に移動速度が他の奴らよりも速すぎる。

詰めたところで大盾に防がれて終わりだ。

ならばいっそ、ここで覚悟を決めた方が幾分かマシだな。

そう考えてライは右足を引き、ティルフィングを背に付けて構える。

狙う場所はもう既に把握してる。

なら後は、それをいかにして跳ね返すかだけだ。

矢の先端に紫紺の光が集束していく。

ただその一点だけ見据えてライは最大限の力を貯める。

「ティル、血を吸ってくれ」

『あなたの血はいくら食べても飽きないから好きよ』

ティルフィングを握る手にチクリとした痛みが走りそこから血が吸われていくのがわかる。

血が吸われるのと呼応するかのようにティルフィングもまた紅く光り始める。

「そういう素直のところも俺は好きだよ」

『うるさいバカ、来るわよ』

本心を言ったらティルに叱られてしまった。

なので俺は再度弓矢の魔女騎士の放つ矢に意識を集中させる。

弓矢の魔女騎士が放つ必中の矢を防ぐために。

紫紺の光がこちらからでもくっきりと分かるほど強く瞬いた。

一瞬の静寂、閃光の煌めき。

次の瞬間にそれは終わっていた。

「こんなものかな」

『滅茶苦茶よ』

俺は既にティルフィングを振りかぶった後、弓矢の魔女騎士も既に紫紺の矢を放ったあとだ。

狙いは必中、防ぎようのないその矢はライを穿つことなくどこに消えたのか?

それはすぐに分かることだった。

「グッ…ゴォ…」

その呻き声は弓矢の魔女騎士のすぐ横から聞こえたものだった。

そこには大盾の魔女騎士が立っている。

ただし大盾ごと紫紺の矢が魔女騎士ごと穿いていた。

そのまま大盾の魔女騎士は力を失ったのか霧散して消えた。

さすがにこれには動揺を隠せなかったのか弓矢の魔女騎士の反応が遅れた。

しかし戦いではそれが命取り。

「魔絶技 幻惑イリュージョン一撃ブロー

矢を番え次の一手をと行動しようとした時にはもう遅かった。

その矢をライに向けるよりも先に弓矢の魔女騎士の頭がポトリと地面に落ちた。

大盾と同様に弓矢の魔女騎士もそのまま力を失い霧散する。

「これで四体目、残りは一体」

『そうね、でもここからよ』

「あぁ」

最後に残ったのは今の今まで何もしてこなかった大剣の魔女騎士。

ただし、最初の時とは違い魔力の質は数倍に膨れ上がっている。

そりゃあそうだ、なにせ力を分散させていた周りの魔女騎士を全て倒したのだから。

操る精神力も注ぎ込む魔力も魔女は全てをこいつに使うだろう。

「さてと、やりますか」

俺は自分の血を更に与える。

『平気?もう結構貰ってるけど』

「これぐらいはなんも問題ない、ティルは俺の血を味わってくれればそれでいいんだよ」

『嬉しいことを言ってくれるのはいいけれど何も出ないわよ』

「ティルが喜ぶ、それでおけ」

『はいはい、くるわよ』

既に力を十分に溜め込んだのか魔女騎士がその大地に刺してある大剣を引き抜く。

ゾワッとするような魔力の圧に肌がピリピリと痺れるように伝わってくる。

「さぁ、さっさと終わらせて帰ろうか」

大剣の魔女騎士が大地を蹴ると共にその場が爆ぜた。

「ガァッ!」

おおよそ人のとは思えない怪物のような呻き声を上げながらライに肉薄した。二百メートルほど離れた距離は奴はたった一蹴りで縮めたのだ。

その勢いのままに自慢の大剣を振り下ろす。

ライは焦ることなくその大剣をティルで弾く。

が、弾かれたことにも関わらず無茶苦茶な体勢で魔女騎士は斬りこんでくる。そのままライに斬撃の嵐を浴びせる。

そんな滅茶苦茶な力で斬りかかってくる魔女騎士を相手に何とか防戦するが…。

刃を打ち合わせる度にライの足が地面に沈んでいく。

「ぐっ…」

「グルァァ」

魔女騎士は余裕なのか声質に余裕がある唸りをあげる。

このままではこの魔女騎士の怪力で押し潰されるだろう。

『どうする気?』

「どうしようかねぇ〜」

それでも余裕なのかそう気楽にライは答える。

そんな余裕が癪に障ったのか魔女騎士は撃ち込む大剣にさらに力を込めるように紫色のモヤのようなものを纏い始める。

その色は剣を打ち合うたびに段々と濃くなっていく。その度に威力が強まっているような気がする。

「お、ちょっちやばいな」

『やばいなんてものじゃないわよ』

途中からは弾くことすら困難になってきて今では大剣の剣脈にすり当てることでその軌道を逸らすので手一杯だ。

そんなことをしてるうちに紫色のモヤは大剣の本体が見えなくなるぐらいに濃くなっていた。

魔女騎士はそれを見計らったように大剣を天に掲げた。

「グルァァァ!!」

それと同時に足の竦むような咆哮をライに浴びせる。

痺れるような大気が体にビリビリと伝わってくる。

が、それをティルで一蹴してバックステップで回避を試みるが…。

「おっ!?」

斬撃自体は躱すことはできたもののその衝撃波で飛ばされる。

何度か地べたを転がり体制を整える。

「流石に今のは危なかったな」

『だから油断はするなって言ったのよ』

だいぶ魔女騎士と距離を離されたな。

魔女騎士の次への攻撃に対応するために即座に構える。

「って、あいつもあれ出来るのか」

『まぁ、元は一緒だものね』

魔女騎士は大剣をさっきと同じように空高く掲げていた。

違うのは紫色のモヤではなく紫紺の光が大剣全体に集束していってるということ。

弓矢の魔女騎士が放ったものと同じ。

「あれは無理だな」

『えぇ、あれこそどうしようもないってやつね』

弓矢の魔女騎士が放ったものとは違ってその圧力は大地が揺れるほどのものだ。

「だが、その前に…」

ライは魔女騎士と相対するようにティルフィングを腰に構える。いわえる居合切りの構えだ。

その状態のままティルにできる限りの大量の血を吸わせる。

『んー、おいしいー』

ティルが俺の血の味を気に入ってくれてるみたいだ。

ティルが喜んでくれてるならもういっそ全部くれてやりたいが、流石にそれをすると死んじゃうからな。

ティルは血を吸収した分だけその力を増す。

それと同時に紅く禍々しい光が強くなる。

「グルァァァ!!」

魔女騎士は力が充分に集まりきったのか、紫紺の光に埋め尽くされた大剣を振り下ろそうとしている。

ライとの距離がそこそこ離れているにもかかわらずにだ。

だが…。

「魔絶技 緋閃光ヒセンコウ

魔女騎士が大剣を振り下ろすよりも速く、ライはティルフィングを抜き放っていた。

その緋色の煌めきは見事に魔女騎士の首を跳ねていた。

「グア?」

首を跳ねられたことさえ気づかせない速度の斬撃に魔女騎士はそう間抜けな声しか出すことができなかった。

なぜなら頭が地面に落ちる頃には紫色の霧と化して霧散していたからだ。

ライはまだ周りに魔女騎士がいないかを確認して装甲化を解く。

「結構ハイスピードな戦いだったわね」

ティルフィングの姿から人の姿に変わったティルがそう感想を述べる。

「んー、ここまで本気出したのはあの時以来かな」

「はぁ、あいつらはあの子よりも弱いわよ」

「はは、手痛いな。平和ボケしすぎて体が訛っちゃったかもな」

「ふーん、まぁそれはそれで悪くはないかもしれないわね。そんなことより早く帰らないとあの子たちが待ってるんじゃないの?」

「いけね!早く戻んないとな」

「えぇ、そうね」

ライはいつの間にか一時間以上も過ぎていたことに気づき慌てる。

そんなライの姿をティルはちょっと残念そうにしていた。もちろん、そんな表情なんてせず素っ気なく返事した。

「でもその前に…」

ライは振り返って後ろにぴったりと付いてきていたティルにそっと優しく口付けをするのだった。

そんな優しいキスにティルは頬を赤く染めるもニヤリと微笑む。

「ふふ、久しぶりのリンクだったから忘れてるかと思ったわ」

「大事な妹との約束を忘れるわけないだろ」

「そうね、破れば私の剣があなたの心臓を刺し貫く契約だったものね」

「なんだか俺の知らないうちに末恐ろしい契約に変わってね?」

「些細な違いよ」

そのままティルは上機嫌なのかスキップを踏んだりしてライの横を通り過ぎる。

「ほらいくわよ、これ以上あの子達を待たせられないわ」

「そうだな」

振り返り際のティルの笑顔に別の意味で俺の心臓を刺し貫かれたのだった。

よぉ!待たせたな人間共!ということで、いつも読んでくださってる方ありがとうございます!さてさて、希望のお風呂シーンはいかがだったかな?あーあおわっちまったよーとか思ってたらまだ大丈夫だ!お風呂シーンはまだちゃんととっているからな!ふははは!ということでむっちゃ疲れた。まぁ、気合入れて書いたかいはあったがな!なんか、こっちにばっか気合入れすぎてオレケモが薄くなってるような気がするが…。まぁ、なんとなるであろう。さて、次回はいよいよな感じの発展にしていこうかなと我は思う。それよりも!この前の後書きで書いていたダークサイド系の新規小説だがなろう!にだすことにしたぞ!なので、読んでくれるとわれは嬉しく思う。タイトルはまだ決まってないができれば次週の後書きで書いおくぞ!興味がある方はぜひぜひ目を通してやってください!ということで!また次週の水曜日午後六時にな!人間共!

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