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空港にはもっといろんな人種がいるかと思っていたが、意外と日本人っぽい人が多い。
フライトが皆同じような時間帯に着くからか、それとも、迎えに来るなんてのは日本人だけなのか。
まあいい、どっちにしても俺には関係のないことだ。
ごちゃごちゃと集まっている人の群れの間を抜け、外へと足を踏み出した。
とりあえずの行き先は決まっている。ダウンタウンのリトル東京だ。
そこでなら仕事が見つかりやすいだろうと思ったからだ。
今みたいにインターネットなんてなかった時代だったから、電話と手紙とファックスで寝るところは確保しておいた。一ヶ月400ドルのアパートメントホテルだからどんなところかは大体想像がつくが、しばらくはそこで暮らすことになる。雨露がしのげて、シャワーさえ浴びられれば何とかなるだろう。
何しろ、知り合いも居なければ金も無い、何のあてもなくやってきたのだから贅沢は言っていられない。
アメリカって国は本当に合理的な国で、いろいろと便利なものがある。
乗り合いシャトルバスもその一つだ。
同じ方向に行くもの同士がバンに相乗りして空港から目的地に向かう。
料金は基本的に頭割りだから、人数が多ければ多いほど一人当たりは安くなる。
だから、俺たちが乗ったままバンが客を探して空港をグルグル何回も回っても誰も文句を言わない。
ドライバーも、多く乗せればちょっと収入が増えるのだろう、結構辛抱強く回っている。
何しろロサンゼルスは広い。一度どこかに行こうとしたら、1〜2時間は簡単にたってしまう。
一回のトランスファーで少しでも多く稼ごうということだろう。
俺たちにしても一人でも増えれば少しは安くなるのでその方が都合がよかった。
結局俺を入れて8人の客を乗せてバンはダウンタウンに向かって走り出した。
ロサンゼルス国際空港を出ると、車はほどなくフリーウェイ405号線に乗り、すぐにフリーウェイ10号線に乗り換える。
高架になっているので結構遠くまで見える。
ここから見る景色は整然として、ところどころに高いやしの木があったりしてとても開放的に、きれいな街並みに見える。
でもそのやしの木の下に行ってみるととんでもない所であることも俺は知っている。
遠くに高層ビル街が見えてきた。あれがダウンタウンだ。
ビルの天辺の方はスモッグで空気が黒く濁っているのがここから見ても分かる。
今日からあそこで勝負するんだ。