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ヤマさんは人間的には滅茶苦茶な人だった。

昼間平気で店から居なくなるし、忙しくなければ俺一人キッチンに残して表でしゃべっているし、夜、店の金を持ったまま飲みに行ったりしていた。金が足りなければそこから払ったりした。

もうすぐ40歳になろうとしているのに結婚もせず、若い子たちを連れて遊びに行くなどしょっちゅうだった。

ただ面倒見だけはよかった。

俺もシフトの関係で車で30分ほど離れた支店に行かされることがあったが、その時は嫌な顔一つせずに送ってくれた。もちろん帰りも乗せてくれた。

自分が本店勤務の時でも俺を送って、帰りの足はきっちりと他の人間に頼んでくれた。

休みの日にわざわざ呼び出されて、何事かと思って行ってみたらメシに連れて行ってくれたこともある。

けして人間的には尊敬できる人物ではないが、何故か親しみが持てた。言うなれば子供みたいなもので、裏表がまったくなくて、思ったままに行動するのだ。


そんなヤマさんだが、腕だけは抜群にいい。

例えばラーメンを作る時、タレを決まったレードルで入れて、スープを決まったお玉で入れる。それぞれ量が決まっているので誰が作っても同じように出来そうに思うが、何度作ってもヤマさんにはかなわなかった。同じにやっているはずなのに、どうしてこんなに違うものかと思ったものだ。

相変わらず俺は毎日怒鳴られ殴られの毎日だったが、少し仕事も覚えてきてできることも増えてきた。忙しくない時はラーメンも作らせてもらったり、ギョーザの巻き方を教えてもらったりしていた。


休憩時間にウェイトレスの一人と一緒に賄いを食べていて、こんな話になった。

「ジョージさんが入ってきた時、何日くらい持つだろうかねぇって、皆で賭けてたんだよ。」

賭けてたって・・・。

「あのいじめ方見てたら、何日も持たないだろうねって皆言ってた。」

俺はいじめられてたのか?

気づかない俺も俺だが、そんなことをする店も店だ。

まあいいか。俺はこうして生き残っている。それに、こういう話をするということは、何とか俺も店の一員として認められたということだろう。腕はまだまだだったが毎日仕事に来て、まがりなりにもこなしているんだからな。そりゃそうだ、ここでダメなら他はない、日本に帰らなきゃならないと思って必死にしがみついてきたんだから。


そんなある日、ヤマさんが声をかけてきた。


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