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昨日はちょっと飲みすぎたかもしれない。

起きたらすっかり日が高くなっていた。

今日出発なのだが、まったく実感がない。

横浜駅まで十分歩いていける、立地のよいホテルだった。その割りに値段は高くない。

と言ってももう泊まることはないだろうが。


簡単に朝食を済ませてホテルをチェックアウトした。

どうせやることもないし、早く成田に着いておくことにした。

横浜駅まで二人で歩いて行き、成田行きの切符を買う。時間が読める分、電車が一番確実だ。

乗り込むと、バカでかいスーツケースを持った沢山の旅行者が居た。

せいぜい一週間程度の旅行であろうに、そんなに荷物があるものなのか。

俺のバックパックもでかい積もりでいたが、連中のスーツケースの方が全然大きかった。


成田に着くと、エスカレーターを乗り継いで空港へと上がって行く。

ちょっと早いかもしれないが、チェックインできるだろうか。

荷物を預けてしまえば身軽になる。

先に俺のチェックインを済ませてから、国内便のチェックインカウンターに向かった。

実は成田からは国内便も出ている。一日一本だが、俺たちの田舎行きの飛行機もあった。

先に羽田から愛美を見送ってということも覚悟していたが、成田便が取れてよかった。

愛美の便の方が少し出発は早いが、出国審査などもあるし、俺の方が先にゲートの中に入ることになるだろう。


とりあえず成田には滅多に来ることがなかったので、ぶらぶらしてみた。

お土産屋やら本屋やら結構店はあったが、どうにも分かりづらい空港だ。

「ちょっと待ってて。」

愛美がお土産屋みたいなところに入っていく。誰に土産を買うと言うんだ。

何軒か冷やかしながら、俺は本屋で雑誌を一冊と文庫本を二冊買った。飛行機の中で読むつもりだったが、どうせ寝てしまうだろう。向こうについて、日本語が恋しくなったら読めばいい。


物珍しくていろいろ歩いてみたものの、すぐに飽きた。

それほど腹も空いていなかったので、お茶しながら時間を潰すことにした。

しかしこの空港の店と言うのはどこに行っても何でも高い。

カフェテリア風の店に入り、コーヒーとケーキを注文した。

しばらくはタバコを吸いながら話をしていたが、どうにも話が弾まない。

時計ばかり何度も見てはタバコをふかす。

離れ離れになる時が刻々と近づいていた。


そのうちに俺はバッグからペンとノートを取り出して、愛美に手紙を書くことにした。

目の前に座っているけれど、口ではなかなか伝えられないこともあるし、何より手紙を残せば、愛美は何度でもそれを読む事が出来る。

愛美はテーブルの下で何やらごそごそやっている。


「これ、手紙書いた。」

「あ、あたしへの手紙だったの?何か作業してるのかと思ってた。」

へたくそな字で書いた手紙を愛美に渡した。

「じゃ、あたしからもこれ。」

愛美は小さな箱を出してきた。

開けてみると、小さな写真立てに俺達二人の写真が入っていた。

「さっきの店で買ったんだ。これ見て頑張って。」

写真立てごと上着の胸ポケットにしまった。

よくアメリカの映画なんかで、出先に行っても家族の写真を持って行ってベッドサイドに置いたりしているが、ああいうのを見ていたんだな。もちろん、大事に毎日見るさ。


そうこうしている間に出国審査の時間が迫っていた。

お互い口に出しては言わないが、それは二人が離れ離れになる時が迫っているということだった。



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